第37話 選ぶ人、残す人
夜は、深かった。
風はある。
音もある。
だが、
すべてが遠い。
私は庭に立つ。
外側に。
だが、
いつでも中心に届く位置。
――選びます。そして、残します。
自分の言葉が残っている。
それが、
今の形。
「……来ると思っていました」
声がする。
振り返る。
レオンだ。
足音は変わらない。
迷いがない。
彼は円の内側へ入る。
自然に。
躊躇なく。
それが、
彼の位置だ。
「話があります」
彼が言う。
短く。
無駄がない。
私は頷く。
「ええ」
彼は中心の近くに立つ。
私は外側に立つ。
距離がある。
だが、
遠くはない。
「あなたの方法は」
彼が言う。
「安定しません」
即断。
迷いがない。
私は答える。
「はい」
否定しない。
「状況によって変わる」
「判断基準が揺れる」
「再現性がない」
すべて事実だ。
私は頷く。
「その通りです」
彼は続ける。
「私の方法は違います」
一歩、
中心へ。
完全に。
「最適化された判断」
「再現可能」
「最短で結果を出す」
強い。
揺れない。
それが、
彼の正しさだ。
「どちらが優れているか」
彼は言う。
問いではない。
確認でもない。
「明白です」
私は、
少しだけ考える。
長くはない。
だが、
軽くもない。
「はい」
と答える。
そのまま。
否定しない。
彼の正しさは、
完成している。
だが、
それだけではない。
「では」
彼が言う。
「なぜ、それを選ばないのですか」
核心。
逃げ場はない。
私は、
空席を見る。
そして、
言う。
「残らないものがあるからです」
沈黙。
風が止まる。
彼はすぐに返す。
「不要です」
即答。
迷いがない。
「結果に影響しないものに価値はない」
合理。
完全。
私は頷く。
「はい」
否定しない。
「それでも」
続ける。
「残ります」
彼がわずかに目を細める。
「何が残るのですか」
私は言う。
「選ばれなかった側です」
一拍。
「守れなかったものです」
沈黙。
長い。
だが、
逃げない。
「それは」
彼が言う。
少しだけ低く。
「ただの感情です」
私は首を振る。
「違います」
はっきりと。
「結果には残らないものです」
訂正。
否定ではない。
視点の違い。
「では」
彼が言う。
「それをどうするのですか」
私は、
少しだけ考える。
そして、
答える。
「引き受けます」
短い。
だが、
重い。
彼が止まる。
ほんの一瞬。
だが、
確かに。
「引き受ける?」
「はい」
私は続ける。
「選ぶときに」
一拍。
「それを含めて選びます」
沈黙。
風が戻る。
葉が揺れる。
音が生まれる。
「非効率です」
彼が言う。
だが、
先ほどよりも、
わずかに遅い。
私は頷く。
「はい」
「ですが」
続ける。
「それでも選びます」
譲らない。
彼も譲らない。
沈黙がぶつかる。
長い。
だが、
崩れない。
やがて、
彼が言う。
「あなたは」
一拍。
「選ぶ人ではありません」
私は少しだけ目を細める。
「そうかもしれません」
否定しない。
彼は続ける。
「あなたは」
もう一歩。
中心へ。
「残す人です」
言い切る。
私は、
その言葉を受け取る。
そして、
少しだけ笑う。
「ええ」
認める。
はっきりと。
「あなたは選ぶ人です」
対になる言葉。
彼は頷く。
「はい」
迷いがない。
それでいい。
それが、
この形だ。
夜風が通る。
庭が揺れる。
だが、
崩れない。
私は言う。
「どちらも必要です」
彼は答える。
「どちらかで十分です」
対立。
完全な。
だが、
破綻しない。
「では」
私は言う。
「次で分かります」
一拍。
「どちらが残るのか」
彼はわずかに目を細める。
「ええ」
短く。
それだけ。
そして、
彼は去る。
足音が遠ざかる。
迷いがない。
私は、
その場に立つ。
外側に。
だが、
逃げていない。
そして、
分かっている。
次で、
決まる。
どちらが正しいかではない。
どちらが、
残るかだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに「選ぶ人」と「残す人」が明確に分かれました。
次は、そのどちらが“続くのか”が問われます。
いよいよクライマックスです。
続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価をいただけると嬉しいです。
最後までお付き合いください。




