35 一難去らぬうちにまた一難
護衛のエスコート…高貴な淑女が単独で参加する社交に用いられる(侍女は連れてる)。
専属護衛として付き従うため直立。基本は2名。身長差によっては、淑女の腕が後ろに高く広がる肩甲骨ストレッチ状態になるが、むしろそうなる方が格式が高いとみなされる。
※恵体の護衛はステータスシンボル。
愛し子…生贄のこと
スペルモルがソーマを看取る間、魔核は夫婦の魔核とともに、にじかみの大回廊に顕現していた。
凪を呼べない魔核には、カイザルが儀仗服を手配した。
ふと思いつき、己も神聖王国時代の儀仗服へ衣装替えをする。
(最高司令官の制服は正装なのに着替えるの?)と不思議そうな顔をしたレルムに、「今のオレは護衛だな?」と告げた。
それで納得したらしく、心おきなく妻を鑑賞しはじめた。
優しくも熱を帯びた視線に気付いたアウローラが、夫を見上げて嬉しそうに微笑んだ。
夫婦を繋ぐ「比翼連理の魔法」は、互いへの信頼により十分な余裕を保っている。
アウローラの比翼連理は夫の正鵠を得て、レルムの比翼連理は、妻の強理勁直に依存して離れない。
当然と寄り添う比翼の姿は、今のカイザルにとっては堪える光景だった。
(後悔なんざ役に立たねぇ。償いの足しにもならんクソだ。…そのはずだ。はずだが、…)
まばたきで気を取り直し、カイザルは貴婦人の正装をしたアウローラに手を差し出した。
淑女から目礼され、その所作から娘を連想して和む。
すると、レルムから牽制を食らった。
カイザルはさらに和んだ。
(婿と同じ反応だな。
こうしているとまるで娘夫婦といるかのようだ。…懐かしい)
この場を正確に認知できるのは虹髪のみ。
道しるべを担う虹髪が先頭、軍人ふたりが一歩ひいた位置に並び、護衛のエスコートで3人は移動を始めた。
カイザルは、それとなく辺りを探ってみた。
やはり誰もいない。
何も見えない。
かろうじて、ほんの僅かな既視感を捕らえた。
(もしや、ここは…さきほど師匠といた空間か?)
気付き、ふと推理がよぎる。
(あの時も、オレに見えなかっただけで誰かいたのか? 確かに、次々と声がけをされた気がした。
師匠が口にした「落ち着け、分かるけど」というのは…まさか、その者らに向けて言ったのか?
待て。ということは)
見栄っ張りカイザル様は即座に名推理をかなぐり捨てた。気持ちを切り替える。
しばらくして、アウローラが立ち止まった。優雅な動きで美しいカーツィをし、正面にいるらしい誰かに真名を告げながら取次を願った。
次の瞬間には扉が連なる長廊下にいた。
カイザルは驚きを隠し、横目でレルムの様子をうかがった。
レルムの反応はない。あいかわらず妻しか見ていない。
淑女はまた楚々と歩き出し、カイザルも護衛のエスコートで応える。
延々と続く直線の廊下だ。
左右に並ぶ数多の扉は黒壇製。しかし、意匠はそれぞれ違っていた。
カイザルはそれらを横目で鑑賞していく。
(まるで飾り本棚のようだな。凝った装丁の表紙が、どれも物語を彷彿とさせる)
なにげなく奥へ視線をやる。ギョッと目を見開いた。
すぐさま平静に努め、そのまま歩み続ける。
突き当たりの扉から、さりげなく目をそらす。
(…意匠は暗喩か)
傍目にはなにも変わらぬ余裕ある表情、鋭い眼差し。
しかし、その内心はというと、冷や汗ダラダラ、心臓バクバグだった。
自分の扉なだけに、ひと目で分かったのだ。
(娘夫婦。軍馬。野鳥。息子らは羽付軍馬、納得だ。
天使は、そうだな。確かに好ましい。認めよう。
花々に関しては腑に落ちた。相手が異性だったから恋だろうと思いきや…盲点だった。
感情の枠に種類があるとはな。道理でな。
それより…あの専用香水と美女らは…アレはどういうつもりでオレは…っ!?)
意匠が、自認する趣味嗜好とかけ離れていた。直視できないレベルで。
新たな側面や考察の余地だけでなく、「どの年代の妻も凄く大好き」が全面に押し出された、甘ったるくイロ呆けた精神世界を目の当たりにしたカイザルは、それはもう動揺していた。
(内省しよう。後でな。それよりおとぼけ娘だ。例えアトリビュートを察したとしても、扉がオレだとはバレない、はずだ…!)
良い格好していたい女好きは悪あがきに走った。
もっともアウローラが帰り道を変えることはない。
かつて張り付いていた影響で、己の精神世界が「神域投影」へ繋がる小道になっている、なんてこと、この時点の彼では知る由もない。
辿りついた目的の扉は、異様だった。彫刻刀で抉られ、紙やすりで削られたような痛々しい意匠だった。
(毒の影響か。確か、かつては酒をあびる妊婦の意匠があった…と…)
カイザルは博識だ。意匠の意味に気付いた。連想された己の生い立ちから、とある概念に辿りつく。
よみがえる戦慄。
総毛立つ。
カイザルは湧き上がる負の感情をねじ伏せた。
(レディ・アウローラが消滅させた概念はコレか…!
何故オレは思い出せた? …そうか、今は新世界の外。消滅効果はレディが所有する界のみってわけか。
理想郷だけの綺麗事、生命体全体の管理としては必要悪だとでも? …胸糞悪ぃ)
レルムがちらりと視線を寄越す。
カイザルは、何食わぬ顔で殺気を消した。
淑女が「え…」とかすかに声を発した。
見れば、朽ちた扉が室内へゆっくりと倒れ込んでいく。アウローラは茫然と扉を見つめていたが、カイザルは隙間から室内に視線を走らせた。
かいま見えた壁は、血にまみれていた。
天井は傷だらけ、床には穴、そこここでボロボロと崩れ、破片となって闇に堕ちていく。
悲鳴と嘆き、絶望を語るソーマの本音が室内から漏れ出てくる。
既視感がなくもない惨憺たる有様だった。
扉が床に倒れ込むと、脆い室内は全てが闇に堕ちた。
残ったのは、ひとつの家具。
真新しいソファベッド。
(スペルモルの慈悲は届いたようだな)
同じく意味を理解したのだろうアウローラが呼気を荒げた。目は見開かれ、唇が戦慄く。
(レディのほうは諦めていたか)
妻の変化に、すぐさまレルムが動いた。肩を抱く所作にためらいはない。
真摯に己を捧げる姿は、比翼としても、にじかみの護衛としても、この上なくふさわしいあり方のようにカイザルは感じた。
ふと感覚がなにかを捕らえた。
声なき声に似た、誰かの呼びかけ。
とたん、淑女の空気が変わった。シャキッと背筋が伸び、素早く「整列」の手信号を送ってくる。
見えない誰かに道を譲り、美しいカーツィで待機する淑女にならい、カイザルも背後で直立する。
室内が、美しい虹色に満たされはじめた。
(これで呪物モドキは除去される。ソーマの件は決着がついたな)
幻想的な光景を眺めながら、この6日間を思い返していた。
◆
かつてない充足感。どうやら自分はたっぷりと眠れたらしい。
強制睡眠魔法から目を覚まして、カイザルが最初に思ったことは(しめしめ、やっと好きに遊びだしたか)だった。
構いたがりの長兄は、弟妹からのちょっかいが大好物だった。
ほぼ唯一、素直に無邪気に愛らしく懐いてくれる末弟から「してやられた」カイザルは、それはもうおおいに喜んでいた。
(さて、どう返礼するか)
ワクワクしだしたものの、すぐに疑問を抱いた。
ソファに座っていた。拍子抜けする。
(てっきりベッドで寝かしたいのかと…違ったのか。じゃあ、なにが狙いだ?
やたらと節々が痛むな。まるで成長痛の)
はたと気付く。
(! これは…スペルモルの身体だ。憑依している。どういうことだ)
とっさに周囲のけはいを探る。
いるのは談話スペースのソファだ。隣に抜け殻が座っている。
対面するソファにはアウローラがいた。
目を開けて観察すると、淑女は一心不乱に何かを書き写していた。隙だらけだ。
念のため迷彩結界魔法を探るも異常はない。
舘のなかの空気感も普段どおりの穏やかさだ。
カイザルはとりあえず声をかけてみた。無難に「おはよう」と一言。
手を止めたアウローラは顔を上げ、少年に笑顔を向けた。
「おはようございます、カイザルさま。まずはお水をいかがですか?」
(…なるほど?)
共謀を悟り、愛想笑いした。
悪戯っ子を眺め、(嬢ちゃんへの返礼はレルムに任すか)などと悪だくみしていると、アウローラは枕もと用の小型冠水瓶に手をのばしながら喋り出した。
「ええと、これには事情がありまして。あ、そうだわ。起きた時の第一声を指示されていたんだった。
カイザルさま、スペルモルからの伝言です。「俺の特殊魔法は絶対封印だよ」、です」
カイザルは愛想笑いのまま固まった。初耳だった。
アウローラから水を汲んだ器を差し出され、反射的に受け取る。チビリと舐める。
御猪口っぽい見た目につられ、うっかり度数の高い酒のような飲み方をしてしまった。水なのに。
(…謎が解けた。
スペルモルが呪物モドキと対話を繰り返しても己を保っていた理由。呪物を灰にした湯たんぽちゃんが無事ですんだ理由。オレの「憑依」が次元を超えて残留した理由。
三天子ならば説明がつく…!)
ぽやぽや淑女はカイザルの動揺に気付かなかった。賢い少年の指示に応えるべく、のほほんとカイザルに報告してきた。
「ええと、「次は手紙を渡せ」と指示を受けています。でも、これ…どうなのかしら?」
困り顔で差し出された手紙を受け取り、眺め、カイザルは密かに唖然とした。
まったく読めない。
「わたくしの速記用の略字や記号を覚えてしまって、やたら使いたがるのです。どうやら思考にエネルギーを全振りしてい(略)」
冗長お母さんは、言葉を飾りつつ、お兄ちゃんに打ち明けた。
字が拙いのに練習を面倒がること。思いつくまま走り書くため文法がめちゃくちゃであること。他人に読んでもらう前提の手紙ですらお構いなしなこと。
マズいの分かるけど見ないフリしてくれないかな、そんな気まずい顔をするのが凄くかわいいこと。ついでに姉の論理破綻弁護もかわいくて、とにかく双子はかわい(略)。
「というわけで、わたくし清書いたしました。
あ。スペルモルのおねだりリストも預かっています。どうぞ」
脳内とっちらかり淑女が差し出す書類を無言で受け取る。
カイザルは、発覚した致命的すぎる短所に困惑していたが、顔には出さない。
なんてことない顔で、読みはじめる。
次第に目を見はり、ちらりと隣にある身体を流し見た。
魔核が抜けた虚ろな身体をジロジロ眺める。
ゆっくりと唇が吊り上がる。やがて高笑いに至った。
「ははは! 退魔ついでに救済、さらに身体! 二兎どころか三兎喰らうか!
いいぞぉ、スペルモル! どんどんやれ! やりたいようにやれ!
今のオレは、そうさせるためにいる!」
ご機嫌カイザル(スペルモルのすがた)は高笑った。
変声期中に無理な発声を強いられた喉は裏返り、声枯れを招いた。
さっきからお母さんが「喉に悪いから」と必死にたしなめているのだが、カイザルには聴こえていない。
「はははは! 悪い仲間と縁を切らせ、容赦なく更生させ、トドメが釈放、これぞ看守の鑑だな! はーっはっはっはっはっは!」
時刻は夕方。
外は酷い嵐で轟音が鳴り響いていたが、豪快な高笑いは4階に届いたようだ。
かすかなベルの音に応え、カイザルは
迎賓室の扉を開いてやった。
女神たちがぞろぞろ姿を見せる。
愛妻を姫抱っこした男性体がふわりと降り立った。風魔法だ。
おどおどする愛妻の頭をひと撫で、アナンはひとり少年に突撃するや、作り笑いした。
「おはよう。カイザルさん。僕、言いたいこといっぱい。
けど、僕の奥さんが弟くんと組んで、カイザルさんを強引に寝かしつけたって聞いたよ?
だから今回は相殺ってことに…聞いてないな」
カイザル(スペルモルのすがた)は相変わらずだ。ソファにふんぞり返って高笑い。声量。
アナンはジト目になった。
「慣れた手口か。さてはカイザルさん、奥さんの苦情や交渉も笑い飛ばしで打ち消してきたな?」
「怒ってないみたい。良かったぁ」
アナンの背後でヒュプシュが胸をなでおろす。
お怒り燻ぶるアナンは厨房へ去り、ヒュプシュはヴィルヘルミナと共に安産祈願をはじめた。
リンは、ハリィに冠水瓶の水を与えていた。
ハリィは起きていたが、まだ眠そうな顔をしていた。
与えられるがままに、ちいちゃなおくちでんくんくと飲む。
飲み終わった頃、カイザルの高笑いがようやくおさまった。幼子を眺め、柔らかく目を細め、指で「よこせ」と合図をおくる。
びっくり眼のハリィがふわりと運ばれ、スペルモルのショートコートの中にスポンと入った。
幼子を持っていかれたリンは無反応だ。
またウトウトしだしたハリィごと、弟の身体をただ観察する。
アウローラはというと、せっせと残りを書き写していた。終わらせ、軽く見直し、よしと頷く。
「カイザルさま。こちらが作戦の起案書となります。黙読でお願いします」
素直に黙読したカイザルは、しかし、すぐに派手な高笑いで弟を絶賛しはじめた。
アウローラは頭を抱えた。
憑依が目覚めたのは夕方だ。その日は、午前中からずっと大荒れの天気だった。
異界からの余波だ。
凄まじい豪雨と唐突な日照り、乾燥と激流、寒暖差も激しく、脈絡がない。
まるで混沌が紛れ込んだかのように分単位で季節が速送りされ、そのめまぐるしい変化は一晩中続いた。
翌朝には混沌は去った。
今はもう予定通りに穏やかな晴天を取り戻している。
事前に師匠から聞いていたとおりに。
現在の神域投影は、新世界が成立した余韻の中にある。
嵐がおさまったとて、すぐさま例年と同じ環境に戻るわけではない。
つまり、次の季節を呼ぶ凪はいまだ訪れず。
そうした異常気象を、森に住まう女神の民たちがどう捉えたかというと…。
嵐が過ぎた翌日の昼すぎ、アウローラとリンは予定にない客人に困惑していた。
女神が住まう舘を訪ねてきた者らの代表は、震える声で訴えた。
「こたびの天罰を踏まえ、民の総意により贖いに参りまちた。どうかお怒りをお鎮めくりゃちゃ…くださいまちぇ…せ」
((噛みまくり。凄いビブラート))
玄関ポーチにずらりと並ぶ女神の民。ちまっとした整列は愛らしくも壮観だ。
応対したアウローラとリンは顔を見合わせ、とりあえず賢王を呼ぶことにした。
リンがテテテと走り、アウローラはしゃがみこんで代表者に語り掛ける。
「善良なる隣人のみなさま、ようこそお越しくださいました。私は涙の女神。
賢王さまと盟約を交わし共存を謳う者。みなさまに害意を持ちません。どうか、お心を安らかに」
代表者は微振動をピタッと止め、恐る恐るアウローラを見上げた。垂れ下がったツノが、力なく揺れる。
そこへ賢王を抱えたリンが帰ってきた。
「我が番! 我が同胞! これは一体なにごとか!?」
リンは代表者の近くに賢王を添えてみた。すると2匹はピッタリくっついた。震えるツノも、同じく。
「あぁ、あぁ、我が番…我らが賢王…やはり生きていた…っ」
代表者の哀しげな声に、賢王はうろたえた。
「生きているとも! 女神の慈悲により救われた、そう口伝したであろう!? 見失いし幼体も保護されていると、ともに無事である、そう伝えたではないか!?」
「ええ、ええ、信じていました。でも天罰のためか口伝は途切れがち…皆は恐怖に耐えられず…かくなるうえは、…と…」
そのまま賢王の番はくったり力を失った。アウローラも含め、皆の動揺が深まる。
「どうやら何か誤解がありそうね?」
てんやわんやを眺めるリンがポツリと呟いた。
少年の許可を得て、玄関ホールの小上がりは即席の救護室となった。
湯殿から持ち運んだ地下水で禊をしてもらい、リンが極弱い熱風で温めると、賢王の番は気力をとりもどしたようだった。
幼体らも震えが止まり、2本のツノはピョッコリツヤツヤ。若さ。
事情を聞けば、やはり誤解があった。
最近の異常気象が「女神の民への天罰」だと勘違いされていた。
賢王の番は語った。
民らが、賢王が発する口伝を、特に賢王から発信される神託を軽んじていること。
幼体を諸悪の根源と考えていること。
賢王は実はとっくに身を捧げ、女神はさらなる生贄を望んでいる…そう決めつけてかかっていること。
「私は訴えた。此度の件も賢王は神託を事前に周知していた、と。
…確かに嵐は恐ろしかった。知っていてすら…しかし、おかげで全ての民が視覚と聴覚を得た。
ならばこれは恩恵を賜るための試練だったのだと、その証に誰も死ななかっただろう、と。
…幼体は関係ないのだと、私は、何度も!
しかし…私の言葉など誰にも届かず…むしろ…」
番が言いよどむと、すぐさま幼体の1匹が訴えた。
「番さまはぼくらを守ろうとしてくれたんだ。
そうしたら、王の番ならば率先して責を負うべしって。
殖やさぬ我儘を貫いた身なのだから、せめて女神の怒りを鎮めるのが筋、愛し子になれ、逃げてもムダ、もう口伝を許さないって…!」
別の幼体が悲痛な泣き声をあげた。互いを庇いあうように一塊が出来る。
「…なんてことだ…なんてことを…」
賢王は言葉を失い、ポテとその場に倒れ伏した。
番が寄り添う。
リンは2匹をひょいと抱き上げ、膝に乗せた。まとめてヨシヨシ撫でる。
番とともにヨシヨシされる賢王は、やがて力なく独り言ちはじめた。
「我儘…? 産むなと…王を名乗るならば子でなく国を育てろと…そう強いたのは…
あぁ勇者王…偉大なる我らが長よ…我では…やはり…」
力なき声は、だんだんと昏く抑揚を失くしていく。
ふらりと立ち上がった賢王が口伝を放った。
「女神の民よ。かつての同胞よ。我が名は賢王。勇者王の指名を真に受け、後継であるなどと思い込んだ愚かな一ぽるぽる。我も認めよう、賢王は王の器に非ず」
番はひしと賢王にしがみついた。庇うように。震える声で「私は常にそばに」と訴えた。
「…。されども守るべき同胞は手中にあり。我も群れの離脱を望む。もはや口伝は不要」
幼体の集団がビクリと跳ねた。
「我らは一介の親である。幼体と在るべく、これより…ぽるぽるの権利を行使する!」
スペルモル(12)記述とっちらかり男児と判明。脳内とっちらかり淑女を心配しているが、人のこと言えなかった。
彼の字を正確に読み取れるのは母枠と親友のみ。
姉は「わたくしには読めない」と決めつけているため、手紙を渡されても読まずに本人に突撃して朗読を要求する。
※3話で、レルムが「愛の証!」と比翼連理の魔法(赤い糸)を自慢したときにカイザルが爆笑した理由…「おっ前、妻に格好つけまくってるけど、本性を見破られてるからな?! その上で急所に執着されてたから、さすがに息苦しかろうと気遣ってやったのに、分かりきった愛情証明をドヤ顔で見せびらかすってお前も大概だな!?」です。自己紹介。
比翼連理の魔法を開発した張本人なので、可視化してたら一目で力関係がバレちゃう。うっかりホッコリしたせいで隙が生まれた。
賢王…同胞への失望と無力感が極まり、とうとう心が折れた。それでも家族(番と保護する幼体)だけは守らねば。やるしかない!
ぽるぽるの「権利」…民の情報網である口伝(安全に生活するための重要なやりとり)を絶つこと。本来の名称は「ぽるぽるの義務」という刑罰。
かつてぽるぽるの民(賢王と番の種族)は棄民で、産まれながらに孤独を強いられていた。現在は恥ずべき迫害行為として廃止されている。




