34 ファムファタルとの恋を、きらめく銀の牢の中で
三位一体…この物語では身体と脳と魔核が揃うこと。またはその状態。
鎮魂…この物語では、生命を器(身体や魔核)に封じる行為。
無視されまくりソーマは遅れて激怒した。必ず、かの…かの…誰だっけ?
とにかく、目の前にいる男の色気ェな覇者の! 気を! 惹かねばならぬ! と! そう決意した!
…気がしたのだが、ふかふかソファベッドが目に入った瞬間に、どーでもよくなった。
今のソーマには、全てがなんのこっちゃか分からぬ。ソーマは人間である。…はず。多分。
もはや己が誰なのか何なのか分からぬ。かろうじて「ソーマ」という名だったのだけは覚え、…あれ? 「ソーマ」はさっきのヘドロだっけ?
ソーマはちょっと考えた。そうだっけ? そうかも。どうかな。忘れた。まぁいっか、座ろ。
繰り返し毒を呷ったソーマの能力値は、目まぐるしくバグり続けていた。
危険薬物により汚染された心的外傷は膨張し、壁を挟んだ向こう側で響く己の歌声は微かにも聞きとれない。「だれかそばにいて」と訴える声すら、もはや他人事だった。
溶けた魔核は次元の破片を欲するも、思い出せない。脳は知っているのだが、情報をひきだせない状態だ。
自宅玄関を開けるつもりで会社のロッカーの鍵を取り出し、最寄りコンビニの什器に鍵穴を探す酔客がごとく、魔核は脳に絡んだ。
これまでの関係ではありえない、常軌を逸した絡み方でもって、脳に対し「情報を寄越せ」と指令を出した。
脳は応えない。
「「魔核、なにしてんだろ?」」
同時に、魔核は身体にも絡んでいた。
「…わぁ(語尾ハート)」
両眼でもってソファを凝視し、魔核は全身に訴えた。
「ねぇあのソファ、イケてるじゃーん。ちょい声かけよーぜ、ねーねー!」
身体は黙って従った。
「わぁ…(語尾ハート)」
辿り着いたソファは輝いてみえた。「ようこそ、いっぱい休んでいってね」と言われた気がした。
魔核の訴えに、左脳は「…物品だが?」と分析した。右脳は「深いね」と答えた。その上で、どちらの脳も同じように判断した。
「「これは座るべき」」
身体は従った。部分的な損傷はあれど座る動作に支障はない。
ソーマはソファに身を埋めた。
至福。確信をもって断言した。
「見つけた! 僕の運命の女!」
脳は、ほんの一瞬だけ思考した。
「ソレ恐らく原核生物界やぞ?」
「暗喩アリじゃん?」
間を取り持ったのは芸術という概念だ。
((魔核が担当する分野だな))
すみやかに思考は落ち着いた。
一方、現実世界の三位一体は全身脱力。
「…わぁ(語尾ハート)」
うっとり大空を眺め、ため息をもらす。
毒は、膨張させた心的外傷の中身までをも溶かしていた。内包した真空は、とうとう音楽を失わせた。
カイザルのことも、ヘドロのことも、原点である魔道具をも忘れ、ソーマはただ目先の安寧の虜となっていた。
(現実が遠い。快適ぃ…。指が痛いのだけイヤだなぁ)
遠ざかる爆音、それは危機が去る音。
近づく足音、それは危険が迫る音。
しかし、全て他人事。今のソーマにとっては意味も価値もない雑音にすぎない。
カイザルは腑抜けた表情をさらす戦利品を見下ろし、ちらりと隣の座面を流し見た。
なにもない。
ソーマへ視線を戻し、告げた。
「選べ」
威厳ただよう重低音。
ソーマは音の心地よさに「わぁ…(語尾ハート)」と鳴いた。顔が綻ぶ。
カイザルは無言で手を差し伸べた。
魔核はソファに夢中だ。応える気などない。
だが、脳と身体は違う。
苦楽をともにした己の魔核から「来い」と命じられたからだ。
脳は応え、身体は従った。
身体がソファから立ち上がると同時に、溶けた魔核がこぼれ落ちる。
瞳から光が消える。
全身の力が抜ける寸前、カイザルは静かに一歩を踏み出した。
空の身体に、呪いの魔核が嵌る。
三位一体が成立する。
崩れ落ちていく身体が、地面スレスレでピタリと止まった。動画の一時停止のように。
筋力のみで不自然な姿勢を維持した身体が、ゆっくりと逆再生をはじめる。
うつむいていた顔が、まっすぐ前を向く。
鋭い目つきの奥には知性が、眼光には揺るがぬ意志が宿っている。
口もとが邪悪な笑みを浮かべた。
堂々たる姿勢が発するは老獪なる威圧感。そして、彼を彼たらしめる紫色の覇気をまとう。
その隙のない佇まいに、もはやソーマの面影はかけらも存在しなかった。
戦利品を勝ち取った魔核は、弟の筋書きに沿い、悠然と退場してゆく。
一方、ソファにこぼれた魔核は、吐息語尾ハート、だ。
何に見放されたのか、何を失ったのか、今がどういう状況か、ひとつも気づいていない。
気づけないほどに、毒は彼を蝕んでいた。
(わぁい。指が痛くなくなったぁ)
通常、魔核は目に見えない。しかし変質した魔核は肉眼で確認できた。
次元の破片の成分が、魔核の表面に膜を張っていた。黒の濃淡でマーブル模様を描く膜は、水の中の油のごとくゆっくりと濃度や厚みを変え流動している。
奥にうっすら透ける魔力光は痛々しい。黒光りする膜から貪食されるがまま、どんどん色褪せてゆく。
「諦めた後で、叶うと…思い知るよな」
ぽつり、静かな呟きが場に響く。
「渇望の深さを。価値の重さを。叶ったなら、もう2度と手放せない。そうだろ。なにもかもを忘れたとしても…終わりが近いとしても。
生きる理由なんだから」
(…わぁ)
いつの間にか隣に少年が座っている。いなくなる前と同じ姿勢でくつろぎ、独り言ちている。
「絶対封印は裁量権の魔法だ。権威は誰にも侵せない。どんな呪物だろうと、誰の特殊魔法だろうと」
少年の声は低く、あどけない。声変わりの最中にある今だけの声だ。
年齢にそぐわぬ落ち着きをもって語られる。
ソーマは語りかけを安眠音楽だと感じた。
「無責任な自由自在だ。どう差し障るか知れない。未来に尻拭いさせるクソ技だよ。
俺は…弱い。価値が揺るぎないから堕ちずにすんでいるだけだ。
だからこそ、使いこなしてみせる。理想郷を守るために。そう決めた。
これはそういう話だ。だから、その餞別は俺の都合だ」
スペルモルはゴーグルを外した。
美しい一対の虹眼が、溶けた魔核を静かに見下ろす。
(…わぁ。三天子だぁ…)
「すぅ」と桜色の唇がすぼむ。吸われた息がメロディを奏でた。
スペルモル専用にアレンジされた分離の呪文が、魔力を高純度で圧縮する。
それは唐突に起きた。
ソファを中心に、半径6メートルほどの円を描くようにいくつもの柱が出現したのだ。
硬質かつなめらかな鈍色、ツヤ消しの金属に似た質感。天高く伸びゆく柱はゆるやかな弧を描き、ドームとなって互いに絡み合う。まるで背の高い鳥カゴのように。
完成は一瞬だった。
灰色の大地に、巨大な牢がそびえたっていた。
スペルモルはゴーグルをつけ直し、立ち上がる。背を向けたまま歩きだす。
ソーマは捕獲を考えたが、すぐに諦めた。
(国も救いもいらない。ソファにいたい)
少年の足取りに迷いはない。
牢は自らくねり、出口を生み出した。通り過ぎる少年をうやうやしく見送り、すぐさま道を閉ざす。
スペルモルは兄の隣で足を止めた。
髪色が違う。造形も異なる。しかし印象がよく似た兄弟が、横並びで牢を眺める。
「夢見心地だな? 今のうちに退魔すれば互いに楽だろう」
スペルモルは首を振った。
「モドキじゃない、まだ人だ。看取るよ。俺は看守だから」
「そうか」
スペルモルの前髪がふわりと後ろに流された。
手櫛で弟を愛でた後、カイザルは、踵を地に打ち付けた。椅子とクッションが現れる。
「好きにしろ。処置が終われば多少マシになるだろう。
レディ・アウローラの覚悟次第だな?」
「大丈夫だよ。レルムが一緒だから」
カイザルは「ははっ」と笑った。
末弟を見下ろす長兄の目はひどく優しい。それ以上は何も言わず、ただ合図を送った。
カイザルが消える。代わりに人影が現れた。
スペルモルは目を見張った。
「リン? どうした?」
わざわざ視野妨害魔法をかけてまで姉を寄越したアウローラの意図が読めない。
人影が、両手をパチンと打ち鳴らした。魔力がうねり、スペルモルのウェットスーツの上に服が足される。
(! 物質化魔法。出来るようになったのか。さすが姉さま)
さらにシースナイフを手渡される。
「わたくしたちは一緒よ。いつだって。そうでしょう、スペルモル」
一張羅、愛用の御守、久々に聴けた片割れの声。
スペルモルの気分はたちまち上がった。口元がモニョモニョ動き、慌てて引き締める。
女帝の弟たるもの、矜持は絶対重要。
格好つけて唇を吊り上げ、手をのばせば、同じようにのばされる。
転移のように、双子は互いを抱きしめた。
身長も体格も変わった。
けれど絆は変わらない。
互いの魔核に2色の魔力を巡らせて、片割れに託していた色を返しあう。
黄色みを帯びた白は、たちまち豪奢な金へ。
灰色がかったくすんだ白は、きらめく銀へ。
双子は本当の魔力色を取り戻す。
額を重ねあわせれば、銀色の光につつまれたリンがスッと消えた。
「…」
ひとり残ったスペルモルは、慎重に胸を撫で下ろす。
鎮魂は快いが、わずかに不安がつきまとう。すぐに威勢の良い歓声を感じ、スペルモルはホッと息をついた。
(転移以来か。久々の発動だもんな。…はしゃいでるな。かわいい)
憂うつが見る間に和らいでいく。
スペルモルは兄の心遣いを腹に抱え椅子に座った。
牢を観察する。
静かだ。まだ。
しばらくして、その時が訪れた。
溶けた魔核が跳ねあがった。
ソファから転がり落ち、のたうち回る。
ビクビクと蠢き、千切れそうなほど大口を開け、声なき悲鳴をあげる。
チカチカと褪せかけた緑の魔力光が奥で点滅し、がむしゃらに攻撃魔法が打ち出された。
そのひとつが、たまたまソファに当たり、砕けた。
残骸からは焦げた匂いが広がる。
溶けた魔核は気付かない。
違うひとつが柱をすり抜け、スペルモルに迫った。
すぐに金の魔力が蹴散らした。
パチパチと弾ける金色の粒子を浴びながら、護られる銀の魔力は特殊魔法を制御し続ける。
暴れる溶けた魔核が、もんどりうって牢の柱にぶつかった。
とたん、鎮まる。滑るようにズルズルと落ち、そのままぐったりと地に伏し、動かなくなった。
見つめるスペルモルの琥珀に、じわじわと緑色が混ざりだす。
まばたきをすればもどる。美しい澄んだ琥珀へ。
溶けた魔核は修復の魔法を使った。
ズルズルと這い、直したばかりのソファによじ登ったとたんまた暴れ狂いだした。
攻撃魔法。破壊されるソファ。
牢の外へ飛び出せば金で打ち消される。
柱に当たれば搾取される。
つど、スペルモルの瞳の色は変わる。
黒ずみ褪せた緑色の魔力が封印され、嚥下のリズムで銀色へ融合されてゆく。
魔核はのたうった。やみくもな攻撃魔法を発しながら柱にぶつかり、鎮まる。
修復の魔法。直されるソファ。
這いずり、身を伏せ、安らぐ間もなく暴れだす。
壮絶なる暴挙と一瞬の蜜月が繰り返される。
◆
2人の護衛を従えた淑女が、扉が連なる長廊下を歩む。
辿りついた目的の扉には、なにもなかった。
かつて、扉に刻まれていたのは「呪う裸婦像」。意匠は、自他の境界とともに溶け崩れていた。
新世界の主が触れただけで扉は倒れ、ソーマの精神世界が露わになった。
なにもない空間に、ソファベッドがあった。
「きれいにしてあげようね。生命に、敬意と弔意を」
師匠から穏やかに声をかけられ、我に返ったアウローラは速やかに身を引いた。
ふたりの護衛も動きに倣う。
◆
ソーマは地獄にいた。
生きながら地獄に堕ちたと知った。
ついさっきまでは、そうではなかった。
「さぁ座って」「どうぞ横になって」「ゆっくりしていってね」
ソーマは産まれて初めて心から歓迎されていた。
居心地の良い座面に埋もれ、焼き菓子のほのかな香りを嗅ぎ、味わったことのない幸福のなかにいた。
自分は孤独ではない。大いなる存在に守られている。
かけがえのない存在として、大切に慈しまれている。
「どうか休んで。私はそのために生まれた」
魅力的な誘惑と歓待にソーマは酔いしれていた。
(うん。そうする。
あぁ…これだ。僕はこれを求めていた。ずっと、ずっと…こうされたかった。こうしてもらいたかった。こうなりたかったんだよ…ずっと)
座面に身をすりよせる。拒絶されない。
ソーマがしたいことをしたのに、ソファは本当の無抵抗だった。
心から受け入れられた。悟り、安堵と恍惚感がこみあげる。
(居場所だ。君だけだ。君こそが、僕の唯一だ…)
ソーマは運命の恋を知った。
なのに。
薬効の消失、そうとしか言いようのない唐突さで、ソーマは脅迫的な飢餓感に襲われた。
様々な負の感情や嫌な記憶がいっせいに襲い掛かってくる。
汚泥から伸びる大量の手がソーマに絡みついた。深淵の水底に沈む。どうにもならない。
無力感。拘束感。圧迫感。焦燥感。
息をすることすら難しい、生きたいだの死にたくないだのといった思想や理性が通じない、まさに「それどころじゃない」衝動に駆られ、苦しい、つらい、もうなにもかもがどーーーーでもいい。
逃れたくて、救われたくて、必死にあがいた。
あがいて、もがいて、のたうちまわっているうちに柱にぶつかった。
強烈な痺れと衝撃。まるで「目を覚ませ」と平手打ちでも食らったかのようだ。
硬直する魔核から、痺れとともに魔力が抜けていく。いいようのない虚脱感にゾッとし柱から離れると、痺れはあっさり軽くなった。
気力は尽きていた。深淵の浅瀬に打ち上げられるも、それがはたして良いことなのかどうかすら分からず、途方にくれる。
救いと癒しを求めて彼女の姿を探し…ソーマは驚愕した。
壊れていた。
やっと会えたソーマの運命の女が、無残にも破壊されていた。
ソーマは魔力をかき集め、彼女を直した。
すると、新品同然の彼女が微笑んだ…気がした。
「さぁどうぞいらして。休んでちょうだい。好きなだけ」
ソーマは常に歓迎されていた。
幾度も我を失い、彼女を壊した。
我に返って直し、また壊し、直す。
幾度くりかえそうと彼女はソーマを受け入れる。
治れば、何事もなかったかのようにソーマにその膝を差し出してくれる。フカフカで饗してくれる。
ありのままのソーマを受け入れてくれる。
彼女のささやきが聴こえた。
「直してくれるのね。壊れたのに必要としてくれるのね。
嬉しいわ。私、ともにいれて幸せだわ!」
(…!)
ソーマは両想いの幸福を得た。
しかし、次の瞬間には彼女を叩き壊していた。
衝動が抑えられない。やりたくない、しかし気付けばやっている。馴染んだ暴力が先行する。後悔に至る余裕もない。ただただ、ままならない。
(運命との恋を…はじめたいのに…っ!)
いつしかソーマは自ら柱に飛びこむよう努めていた。
痺れる間は無力でいられる。
愛しい彼女を傷つけずにすむ。
恋と衝動の狭間で、愛する物のために、自らと戦いはじめたのだ。
(君さえ無事なら…僕は)
やがて、救いが訪れた。虹髪による敬意と弔意だ。
溶けた魔核は不死性から解放された。
ただし、毒を食らった事実は、なかったことにはならない。
恋を得られたとて、…もはや。
全てが終わった時には夜が明けていた。
満天の星は黎明に隠され、燦々と差し込む朝陽が牢を照らし出す。
「…」
スペルモルは牢に歩み寄った。
柱に玉璽を捺して停止を命じる。
すると、やはり今回もタイムラグが起きた。
触れた者を行動不能にする牢は時間とともに弱体化する。しかし、魔力搾取を完全にやめるのはいつなのか、それはスペルモルにも分からない。
手にした不本意を見下す。
忌々しげに吐き捨てた。
「俺はならない。新世界に王などいらない」
迷いなく「絶対封印」を解除した。
かつてソーマだった者は、異界の片隅で新たな次元の矛盾と成り果てた。
新品同然に美しいソファの座面を内包したその最期は、己の運命の女を庇うかのように、縋るかのように。
スペルモルはソファに声をかけた。
「おつかれ。舘に帰るぞ」
しかし、ソファは「否」と答えた。
「まだ王が休んでいるわ。
あんなに壊れて砕けたのに修理してくれたの。治すくらい必要とされているの。幸せだわ。物品冥利に尽きるわ。声があったらきっと高笑いしたわ。
ねぇ我らが神王。私、王の私物でいたいわ! 許してくれる?」
スペルモルの顔はしょっぱくなった。
「なんっで物品いつも俺だけ妙な造語…シンオーってなんなんだ。
主だの王だの、人によって呼び分ける意味が分からん。兄上やアレインはともかく、レルムもヴィルヘルミナも王じゃないっつってんだろ。
だが…そうか。お前がそれでいいなら…?」
なんとか言葉を絞り出す。
真理の五感は問答無用だ。
無垢なる付喪神が「スペルモルから応援された」と判断したことも「だって私ソファだもん!」と決意を新たにしたことも、分かってしまう。
スペルモルはモヤつく感情を飲み込んだ。そして、飲み込みきれなかった迷いを、改めて咀嚼してみた。
(兄上だったら、きっと心に刻む。次に活かすために。
姉さまは…さっさと忘れようとするんじゃないかな。手中の宝をおろそかにしないために)
自分ならばどうするのか。
…答えは出ない。
(ブッコロからすると俺がどう考えようがどうでもいいんだろうがな。
俺らしさって…どういうことだろうな)
いくら咀嚼しようが飲み込めそうになかった看守は、やむなく吐き出すことにした。
ソファの座面と一体化した「だったもの」に声をかけた。
「もうこっちに来んなよ。次また欲だしやがったら今度こそ容赦しない」
眉を顰める。吐き出しきるために、しぶしぶ付け足した。
「…叶って良かったな。お疲れ」
タイトル回収。
スペルモルは看守でありたい…王になりたくない。
少年にとって「王」とは、憎む父王のような厄災であり、兄を狂わせた忌まわしき鎖であり、親友を貶めておいて生贄であることを強いた唾棄すべき役割なので。
王に堕ちたくない、姉や宝が幸せに暮らす神域投影を見守り、囚人を名乗る兄の幸せを祈る存在(看守)でいたいという願いと決意の主張。
※ソーマは魔核を至高とする世界「神域投影」の創造主です。
彼の脳が、付喪神(物品が進化を遂げ命が宿った状態)を原核生物と考えた理由は、「女神の民と同じく新種の魔法生命体でありながら魔核がない」ため。
「下等生物に恋なんざ不毛だろが?!」と己を侮蔑しました。




