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返せるもの

ダイヤはジンの前に立ち、バリアを張る。

バリアはベルリアルとダイヤの間に七枚。

ダイヤの魔力はもうほとんど残っていない。

ベルリアルは最初の二枚を剣で切り裂き、三枚目のバリアに向かって魔法を打った。

魔法が撃たれた瞬間、俺たちがいるここら辺一体の気温がぐんと上がった。

溶けてしまいそうなほど暑い。

熱でダイヤのバリアは溶かされてしまっている。

ダイヤは自分を犠牲にして僕達を逃がそうとしてくれているようだ。

ジンはその意思を読み取ったのか、僕とテオを抱えメグの方に走る。

しかし、また妖精に邪魔されてしまう。

横から出された柱がジンに向かって飛んでくる。

ジンは僕達を前に投げ、守ってくれた。

ウィル、リリィ、ソレイユがジンの方に向かったのが見えた。

ヴァイオレットとクロム様が僕の方に近づこうと、舞踏室の中に入ろうとする。



「戻ってください。」



僕の真剣な顔で状況の悪さを察知したのか、二人は舞踏室に入れた体を引っ込めた。

すると、どこかでまたパチンと音が鳴った。

その瞬間違和感が合った方の足が弾ける。

驚きと痛みで、うずくまってしまう。

どこかで床がくり抜かれた音がした。

ふらつきながら、テオが僕を抱える。

それに気づいたのか、ベルリアルの魔法が僕たちの方に向かってくる。


テオの走り方に違和感を感じる。

どこかの骨を痛めてしまったのだろう。

テオにベルリアルの魔法が届く前に、白く大きな天使が現れた。

足からの出血もあって、視界が霞む。

ベルリアルは少しの間天使と戦い、天使を切り裂いた。

そのまま僕たちの方に近づき、ベルリアルはテオを蹴り飛ばした。

テオは、ベルリアルに飛ばされる瞬間、僕を優しく降ろしていた。

僕に向かって魔剣が振られる。


その時、僕とベルリアルの間にダイヤが入った。

ダイヤはバリアを三枚張り、最初のバリアで魔剣を受け止めた。

ダイヤの手とバリアはカタカタと震えている。

ベルリアルもかなり強く剣を振ったのか、バリアに当たる剣に力が入っている。

ダイヤにとって僕がどういう存在なのかがはっきりしていない。

けれど、僕がこの戦いで命を落とすのは確定している。

そんな一匹の黒猫を守る価値はあるのだろうか。

どういう手段を使っても良いのならば、ダイヤがベルリアルを倒すことは簡単だろう。

けれど、いろいろなものがダイヤの力を制限している。


バリアで剣が通らないと分かったベルリアルは、クロム様の方に目を向ける。

それとほぼ同時にベルリアルの魔法が飛んでいった。

その魔法がクロム様に当たる前に、二枚のバリアが張られた。

それはダイヤのバリアだったが、新しく張ったものではなく、先ほど張った三枚の内の二枚をクロム様の前に移動させたのだ。

正しい判断だ。

僕は、少しでもクロム様からベルリアルを遠ざけるために、後ろにある窓の方へ這う。

ベルリアルが僕をゆっくり追いかけ、剣を振る。

ダイヤが全て受け止めてくれているのだろう。

パラパラとバリアが割れる音がした。

振り返ると、ダイヤの腹に魔剣が刺さっている。

ダイヤの体を貫通した魔剣は怪しく光っている。



「お前の魔力を全部吸っちまう。 離せ。」

「いや…だね、…お前に、、…使われる…くらいなら、、、剣に、吸われたほうが、…マシだ。」

「そうか、…残念だな。」



ベルリアルがそう言った時、ジンがベルリアルに後ろから飛びかかり、魔導書を二冊くすねたのが見えた。

ジンは魔導書を持ったまま吹き飛ばされてしまった。

ベルリアルは剣に刺さったダイヤを蹴り、剣から抜く。

ダイヤは壁に衝突し、煙が舞う。



「よく頑張ったよ、ニーニャ。」

「僕を褒めても…、何も無いですよ。」



ベルリアルは静かに剣を構えた。



「俺の計画にお前が必要なんだが。」

「残念ながら、…僕はそのようなものでは、ないです…。

ただの猫なので。」

「いや、お前はただの猫じゃないぞ。 神もが欲しがる、あの魔法使いの原動力はお前にある。」

「いえ、彼には”こころ”があります。 自分で考え、感じることで行動しています。

こんな、出身もよくわからない猫に左右されるような魔法使いを、あの光神が欲しがるでしょうか?」



ベルリアルは少し考えているようだ。



「たしかにな…。 でも、その”こころ”をなくすことで、更にあいつの力を引き出せる。」

「それがあなたの選択ならば、その選択に責任を持つことですね。」



ベルリアルは魔剣を振りかざす。

ベルリアルは僕を殺すことで、ダイヤの力を最大限まで引き出そうとしているのだろう。

そんなことではダイヤの力を引き出せない。

ダイヤのこころを壊せば、ただの抜け殻のようになってしまうだろう。


いつの間にか僕とベルリアルの間にライガーさんが現れ、切り裂かれてしまった。

ライガーさんが切り裂かれると、強い光が放たれた。

僕は、最後の魔力を使って、ライガーさんを直した。

この先もライガーさんは必ず必要になる。

僕がライガーさんを直すと、僕の右肩に魔剣が当たる。

肺や胃が切られる感覚がある。

あまりの激痛からか、もう恐怖や不安はなかった。

真っ青な顔をしたダイヤが、僕の方に近づいてくる。

きれいな宝石のような瞳が潤んでいる。

ダイヤはこんな猫でも助けようとしてくれるのか。

そんな優しい父に僕は何を残せただろう。

僕は回復魔法を使うダイヤの手を優しく退かした。



「もう…、いい、、。」



僕は針を持つダイヤの手を握った。



「とっても…、たのしかった…。

愛を、…名前を、生きる…意味を、教えてくれてありがとう…。 あなたは、…一番の魔法使いであり、…一番の優しい…、僕の父です…。

テオ…あとは……頼んだよ。」



どこまで言えただろうか。

肺に血が流れて、上手く言えなかったような気もする。

僕の意識が遠のくときにガラスが割れるような音が聞こえた。

テオが持っていた、ダイヤの魔力抑制魔法石だろうか。

それとも、ダイヤのこころだろうか。

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