親子
如意棒を構えて、勢いよくベルリアルに向けて振ると、バリアで弾かれた。
そのバリアはダイヤのものだった。
仮面の隙間から見える瞳に光はなかった。
ベルリアルの魔法で洗脳されているのだろう。
僕とベルリアルの間にダイヤが立ちふさがる。
ダイヤを傷つけずにベルリアルに攻撃したい。
僕は力魔法でふわりとダイヤを跳び越え、ベルリアルに向けて如意棒を振り下ろす。
すると、如意棒を振り切る前に僕の目の前に扉が現れた。
扉の向こうは、ベルリアルの背中側。
すぐに振り返ったが、僕の目の前でダイヤが氷で生成した剣が振られていた。
僕は目を閉じた。
その時僕をテオが押し、傘で剣を受け止める。
ベルリアルとテオがその時に何かを話しているが、パニック状態の僕の脳には何も情報が入らない。
ダイヤはテオの傘を蹴り上げ、氷魔法を放つ。
テオは素早く後ろに下がり、魔法を避ける。
僕は落ちてきた傘をテオに向かって投げ、ベルリアルの方へまた進む。
ベルリアルの前にダイヤが立ち、左手を前に出して魔法陣を出す。
すると、床からツタが出てきて、僕が進むのを邪魔する。
それに気づいたテオは、床に手をつく。
僕の足元のツタが燃え、ベルリアルに迫る。
僕が振った如意棒をダイヤが剣で受け止める。
ベルリアルは、その隙にシャンデリアの上にひょいと飛び乗った。
ベルリアルは何かをつぶやいたようだが、いつもの聴力が発揮しない。
急に大きな魔法陣が現れ、その魔法陣の範囲の床がくり抜かれてしまった。
足場を無くし、僕とテオはバランスを崩す。
ダイヤは空を蹴り、僕に近づく。
ダイヤが剣を振りかぶっていたから、防がないとと思い僕も如意棒を宙で構えた。
テオは僕より先に、地に足がつき、ダイヤの攻撃を防ごうと僕の方に走る。
ダイヤは僕の如意棒を片手で掴み、もう片方の手で剣を思いっきり振ってきた。
僕は目を閉じかけたが、それをやめた。
僕に向かって振られた氷の剣が、僕の首元で止まった。
ダイヤはベルリアルの支配を抑えようと、歯を食いしばっていた。
僕はその隙に月の仮面に爪をかけ、ダイヤから無理やり剥がした。
月の仮面は宙を舞い、ダイヤの少し後ろにカランと音を立てて落ちた。
ダイヤの顔に、僕の爪の傷が付いてしまった。
僕は尻もちをつき、顔から血を流すダイヤを見つめる。
「ニーニャ! 仮面!」
テオの声にハッとした。
僕は仮面に向かって走るが、すぐにダイヤが仮面を手に取ってしまっていた。
洗脳が解けていなければ、最初からやり直し。
でも、もし洗脳が解けていたら…。
僕は最悪の場合に備えて、如意棒を構える。
「よく見たら、お前ら二人とも魔導書を持っているじゃないか。 それを渡してくれれば、今回は見逃してやるよ。」
「お前が魔導書を集めたい理由がわからん。」
「理由? そんなの、一つしかないだろ。
シルファーを完全復活させて、ゼルアークを消す。」
「あの人にそんなことはできませんよ。」
「できるさ。」
ダイヤにゼルアークを倒すことはできない。
クロム様と契約している限り、ダイヤの魔力はゼルアークに勝てるような量じゃない。
ダイヤは空色の魔導書を取り出し、開く。
魔力を右手にため、魔法を打つ準備をする。
右耳につけていた魔力抑制効果の魔法石が弾ける。
テオはニーニャの前に立ち、傘を開いてバリアを張る。
ダイヤの洗脳は解けていなかったようだ。
「これで防げたらええんやけど、」
「僕が落とせるものは落とします。」
ダイヤが準備をしているのは、氷魔法だ。
僕の重力操作で何とかなるものもあるはず…。
けれど、魔法石がないダイヤの魔法を僕なんかの魔法で操作できるのだろうか。
月の仮面で魔力は増幅されているはず。
避けようとしても、僕たちを追跡するように魔法が追ってくるだろう。
魔法を受けない方法をいくつも考えたが、うまくいく未来が見えない。
テオの背中を軽くたたく。
テオから緊張の音がしたからだ。
できるできないを考えるよりも、やってみないと分からない。
僕には魔法陣が出せるほど魔力はないけれど、テオの緊張を少しくみ取ることはできる。
ダイヤの魔法の準備が整ったようだ。
ダイヤは僕たちの方に魔法を撃ってきた。
僕の頬に汗が流れる。
魔法が僕たちに届く前に僕たちの前に扉が現れた。
白のベースに金の装飾。 見慣れたダイヤの魔法の扉だ。
扉は開き、ダイヤの魔法を吸い込む。
扉の先はベルリアルの背後。
さすがのベルリアルも驚いたようで、ダイヤの魔法を避けきることはできなかった。
ベルリアルを貫通した魔法は、ダイヤの方向に飛んでくる。
ダイヤは振り返り、バリアを張る。
しかし、魔法の威力が強く、ダイヤはバリアごと押されてしまう。
そのまま、舞踏室の壁を破り、ダイヤは廊下の壁に当たったところで気絶してしまったようだ。
シャンデリアの割れた音とダイヤのバリアが割れた音が舞踏室に響いた。
僕はダイヤの方を振り返る。
ダイヤは頭から血を流して気絶している。
ダイヤの治療をしなければと思い、ダイヤに近づこうとするが僕の前に一本の剣が投げられた。




