約束
ワゴンを片付けた後、ファイルを持ってダイヤのもとに向かう。
ダイヤの呼吸の音をたどって、彼のもとにたどり着く。
聴力が年々上がっている気がする。
「ダイヤ。」
「ジンが言っていた内通者はあいつか?」
「僕もそう思ったんだけど…。」
「ライトかカレン…。 どっちも怪しいな。」
「僕が二人を監視しておくよ。」
「テオにも頼んでおく。 一度様子見だな。
ライトはベルリアルに近い魔力反応があるが、あいつ自身は魔力を持っていないんだよな。」
「花精霊の槍を持たせてみようと思う。」
「そうだな。 違和感があれば、すぐ呼べ。」
僕はダイヤのもとを離れ、隊員寮に向かう。
ライトの部屋の扉をノックし、試験の説明のために食堂に連れてきた。
各隊と隊長の簡単な紹介、力魔法の説明を軽くしてから花精霊の槍をもたせる。
花精霊の槍の前にどこから持ってきたかわからないような武器をみせたからか、スッと受け取ってくれた。
ライトに花精霊の槍を渡したが、特に違和感はない。
ベルリアルの手下ならば、そのまま僕を攻撃して逃げるはず。
流石にここでは尻尾を出さないかと、訓練場にライトを連れ出した。
ぼんやりとついてくるライトがますます怪しく思えた。
もしかして、これが花精霊の槍と気づいていないのではと思い、魔法石が埋め込まれていることを言ったり、実際に使わせたりした。
しかし、特に何も起こらない。
そのまま練習させ、魔法の説明をしながら二次試験の日になった。
不合格になるのが一番手間が省けるのだが、クロム様はそんなことはしないだろう。
今年はマナとリリィさんの弟子のメグもこの試験を受ける。
そういえば、マナはウィルという名前で入隊するんだったかな。
トヤヘリノ風の名前のほうが馴染むだろうと、みんなで考えた。
メグはもう入隊しているが、ライトの監視役で受けさせられているんだろうな。
あとは審査員として、ライトを監視しなければ…。
会議の後にダイヤがこっそり助言したとおりに、エルリックを会場から退出させる。
エルリックがスパイだということは、ジンから情報が来ていた。
試験が始まって少しすると、大量の魔人が現れ、ダイヤが城の方に戻っていった。
最近魔人の目撃情報が多く回ってくる。
ジンの情報によると、西の国が関係しているらしい。
カクーダなどが主にトヤヘリノで活動しているのだろう。
魔人と戦う受験生をテントの下から眺める。
ウィルは合格だろう。
ダイヤが心配して、ウィルを前線に立たせないかもしれないが。
僕はライトがただの人間でないことをほのめかす。
ほとんどの魔人をウィルとメグが倒し、魔人を討伐した。
全員合格になってしまったが、ダイヤは納得するだろうか。
後日、入隊式が行われた。
感知ができる優秀な隊員達はライトの違和感に気づいたのだろう。
こそこそと話し声が聞こえる。
花精霊の槍では動かない。
ということは、魔導書を見せれば変わるかもと、ダイヤと相談してライトを魔導書探しのチームに加えた。
現地にはテオが行き、僕は城でカレンを監視する。
お互い変わったところは無いようだが、謎の銀髪の青年が現れたらしい。
次から次に人や魔導書が現れる。
魔導書が現れるのは、リリィさんがダイヤの昇格を急かしているかのようだった。
ベルリアルをどうにかできるリミットが近い。
入隊式が終わってから、テオと僕はダイヤに呼ばれた。
入隊式で無理やり椅子に座らせたことを、まだ怒っているのだろうか。
「ここからが本当の勝負になってきそうだ。」
ダイヤは椅子に座り、白の魔導書を眺めながら話す。
白と黒の魔導書は二つで一つ。
光があるから闇があり、闇があるから光がある。
正直、難しくてよくわからないが、ダイヤが言うからきっとそうだ。
「俺と約束してほしいことがあるんだ。」
「どんな約束?」
「優先順位の約束だ。 俺はクロムとの契約もあって、優先順位が固定されている。
一番にクロムとアリス。 次にこの城。 その次にこの国だ。 家族や仲間の順位が下がってしまっている。
でも、お前たちはそうじゃない。 お前たちの一番優先度が高いものは、お前たち自身だ。 その次に、兄妹。 次に東の国の仲間だ。
この優先順位を守ってほしい。」
「ダイヤは? ダイヤはどこに入るの?」
「俺の順位は一番最後だ。 俺は死なない。」
僕はモヤッとした。
ダイヤの前では言えないが、この約束は守れない。
僕には自分よりも大切なものがある。
テオは気軽に何でも話せる。
ライトのことも、この約束が守れないということも伝えよう。
何日も過ぎ、ライトが来てからいろいろなことが起こる。
魔法学校に魔人が迫り、ダイヤは銀髪に誘拐された。
その銀髪のザックという青年のおかげで、南の国のデイヴィッド様は見つかったようだが。
いろいろあったが、なんとか最終戦になってきた。
僕の中ではライトとカレンは同じくらい怪しい。
どちらもなかなか尻尾を出さない。
この不安から逃れるために、いっそ二人とも殺してしまおうかと考えたが、ダイヤはそれを望んでいないだろう。




