再開
ヴァイオレットを通して双子との距離が縮まった気がする。
兄の方は明るく社交的だが、とても感情的。
妹の方は慎重で頭も良いようだが、心配性が過ぎる。
妹のリンは兄のソルが暴走しないかが心配らしい。
二人がこの城に来た経緯は分からないが、過去に何かがあったのだろう。
ヴァイオレットがこの城に来てから約五年が経った頃。
いつも通り、ダイヤとクロム様、アリス様の夕食の準備をしている時だった。
その日は酷い嵐で、城内の音が雨の音であまりよく聞こえなかった。
しかし、城の正面玄関がノックされる音を聞きつけた。
弱い叩く音が何度も聞こえ、オルターさんに夕食の準備を任せ、正面玄関に向かった。
僕が玄関に着いた頃に、ちょうどダイヤも来ていた。
空間魔法で誰かが来たことがわかったのだろう。
でも、こんな嵐の日に一体誰が尋ねてくるのだろうと、不思議に思いながらゆっくり扉を開けた。
扉の先にいたのは青髪の小さな少年。
その少し先に、血にまみれた人が倒れている。
ダイヤは倒れている人の元に駆け寄る。
「ジンだ。 ニーニャ医務室に運んでくれ。 お前も城に入れ。」
ダイヤは小さな少年を城に入れ、僕はジンと呼ばれた人を医務室まで運んだ。
全身びしょ濡れで、魔法で撃たれた跡や、剣で斬りつけられた跡が全身に残っている。
翼はビリビリに破かれ、右目はもしかしたら潰れているかもしれない。
僕がジンをベッドに寝かせると、ダイヤが治療を始めた。
その様子を玄関をノックしていた少年が心配そうに眺めていた。
僕はダイヤの手伝いをする。
こんな嵐の日は船も車も出ていないはず。
ジンはここまで、少年を抱えて自分の翼で飛んできたというのだろうか。
治療をしている途中でジンが目を覚ました。
「ジン、すまん。 魔剣で切られた傷は俺の魔法じゃ治すことができないんだ。 止血して縫うが、完全には塞がらないかもしれないし、跡が残ってしまうがいいか。」
ダイヤの言葉にジンは頷く。
ダイヤでも直せない傷があるということを初めて知った。
ジンの治療を一通り終えたところで、小さな少年にダイヤが話しかけた。
「お前、名前は?」
「マナ。」
「ジンがどうしてこうなったか分かるか?」
「わかんない、」
「そうか…。」
「ダイヤ、魔剣でできた傷はどうして直せないの?」
「魔剣は三大神が作った剣だ。 対として聖剣というものもある。 魔剣や聖剣には特殊な魔力が込められていて、天人である俺には魔剣に込められている魔力をどうこうすることはできないんだ。 その逆も同じことが言える。
今回のこの傷は、魔剣の中でも体力や魔力を吸収する剣で切られたようだな。 他の剣にも特殊な力があるらしいから注意が必要だな。」
「三大神って他の神と何か違うの?」
「三大神は禁止魔法の使用が許可されている。
死者蘇生の魔法が許されている生命神ミサキ。
時間操作の魔法が許されている時神アウン。
天気操作の魔法が許されている天神テル。
三大神と五大神は仲が悪いらしくてな。 ゼルアークもミサキと仲が信じられないほど悪いんだよ。」
「神様にも色々いるんだね。」
「そうだな。」
僕たちの会話で起こしてしまったのだろうか、寝ていたジンが目を覚ました。
「ダイヤさん。」
「ジン、何があったんだ?」
ジンは目に涙を浮かべながら話す。
「ベルリアルが秘龍の国を燃やしました。
国も民も残っていません。 赤の魔導書も奪われてしまいました。 弟を連れて逃げてきたんです。 どうか、弟だけでいいので保護してくれませんか。」
「それはいいが…、ソラやセンリはどうしたんだ?」
「父は殺されてしまいました。 センリさんとレンシン、リュウセイの行方は分かりません。」
「わかった。 クロムに報告してくる。
ニーニャ、ジンのこと見ておいてくれ。 すぐ戻る。」
ダイヤは足早にクロム様のところに向かった。
僕はジンの手をギュッと握った。
「久しぶりの再会がこんなんじゃ悲しいな。」
「だね。 でも君はよく耐えた。 マナには一つも傷はないよ。」
「良かった…。」
マナもジンに近づく。
ジンのことを心配しているようだ。
少しすると、ダイヤがクロム様を連れて医務室に戻ってきた。
「初めまして、僕はクロム。 この国の王だ。」
「俺はジン、こっちは弟のマナ。 こんな状態ですみません。」
「気にしないで。 君たちの保護には同意する。
けれど、君たちもこの国に力を貸して欲しい。」
「もちろん。」
「最近、西の国の様子がおかしい。 ジンには西の国に潜入して調査をして欲しいんだ。
もちろん、今すぐにとは言わない。 傷が治り始めたら、心の準備をしておいて欲しい。」
「分かりました。」
こうして、ジンとマナが東の国にやってきた。
数ヶ月すると、ジンの傷はほとんど塞がった。
マナも城になれたようで、双子やヴァイオレットとよく遊んでいる。
最近リリィさんがとったという弟子もマナとよく遊んでくれている。
けれど、ジンが東の国を出て、西の国に言ってしまう日が来た。
ダイヤとクロム様、マナ、僕はジンを国境付近まで見送った。
「連絡を待ってる。」
「うん、少しでも役に立てるよう頑張るよ。
ダイヤさん、お願いがあるんだけど。」
「なんだ?」
「マナから俺や秘龍の国の記憶を消して欲しい。
新しいものに塗り替えておいてくれないかな。」
「断る。」
「頼むよ、もう悲しい思いをさせたくないんだ。」
ダイヤとジンは見つめ合う。
「わかった。」
どうやらダイヤの方が折れたようだ。
ダイヤはマナの頭にポンと手を置き、軽く撫でる。
「取ったものは戻せないぞ。」
「わかっているよ。 マナ、兄ちゃん行ってくるな。」
ジンはしゃがみ、マナに目線を合わせる。
マナは静かに目を閉じた。
ダイヤはマナを抱える。
「じゃあ。」
ジンは西の国の人混みの中に姿を消した。




