2-9 忠誠
俺の「最後の仕上げ」と言う言葉に、意味が分からず、皆が困惑顔をする。
それが少し可笑しくて、笑いながら俺は説明をした。
「取り敢えずは、君達の【隷属紋】だけど、それを今から取り除く。それで、好きな所で、好きなように生きればいい。生活面に関しても、心配しなくていいよ。金になりそうなのは、たんまりあるからね」
俺は、手に持った【収納鞄】を掲げてみせた。
アフター・ケアも忘れません!
「あ、その前に、悪いけど先に【契約書】(〈魔法契約〉が施された紙)にサインだけしといてもらえるかな?別に怪しいものじゃないから安心して。ただ、俺の名前とか能力を、誰にも話さないって言うだけの契約だからさ。それじゃ、早速……」
「ちょっ!待て待て待てーい!!」
俺が、【隷属紋】の解除をしようとした矢先、ディータから「待て」が掛かった。
…………俺は犬か。
「うん?どうかした?」
「「どうかした?」じゃねぇーよ!お、俺達、このまま死ぬんじゃ……」
「あれ?ディータさんは死にたいの?それだったら……」
「ち、違う!違うけども……」
「なら、【隷属紋】解除しても大丈夫だよね?」
「へ?え?そりゃ、出来るんならそうしてくれると…………え?マジで?」
ディータの混乱がピークに達する。
半信半疑ながらも、本当に生き残れるのか?、だとか。
俺達の決死の覚悟は?、だとか。
頭を抱えながら、何やらブツブツと言い出した。
良く見ると、他の人達も口をポカーンと空けて、呆けていた。
「………………何故、そこまでしてくれるんだ?」
「……え?」
そんな中、武士然としたイケメンが、唐突に俺にそう聞いてきた。
「俺達は、君に返せる物が何も無い。だと言うのに、君は無償で我々を助けようと言うのか?そこに、君に一体どんなメリットがある?君は、ヴァレン国の人間だろ?偏見をするつもりではないが、私はあの国にはあまり良い印象を持っていない。君みたいなタイプは、あそこでは生きにくいだろうに。君は、あまりにも優し過ぎる」
「………………別に、僕は優しいんじゃないよ?」
メリットは確かにない。
強いて言うなら、彼らが昔の俺に似てるから、と言う所か。
但し、それは別に感傷に浸ってると言う事でもなく……。
「なら、何故だ?」
イケメンが、更に問う。
皆もそれが気になるのか、俺に注目する。
俺は苦笑しながら、ゆっくりと口を開け、自分の考えを語った。
「…………昔、ある人が言ってたんだ。「世界は、とても理不尽だ。幸せな人がいれば、当然不幸せな人もいる。けど、幸せか不幸せかを決定するのは他人じゃないし、ましてやそれを他人が強制して良いものでもない。結局の所、幸せになるか不幸せになるかは、『自分自身』だけだ」と……」
『……………………』
例えば、長距離走をしたとしよう。
当然、一位の人が居れば、最下位の人も居る。
そんな最下位に、貴方なら何て声を掛ける?
良く頑張ったと褒める?
もっと頑張れと罵る?
それを、他人が何故軽々しく言えるのか?
自分が、一生懸命力の限り走って、この結果で満足するなら、それは幸せな事だ。
逆に、もっと死ぬ気でやれば、もしかしたら、もう少しマシな結果になったのではないかと後悔するなら、それは不幸せな事だ。
他人は所詮他人でしかない。
自分以外の者は、皆他人だ。
頑張ったのか、そうじゃないのか、それを見極めるのは、他人には容易ではない筈。
だから人は、自分の物差しで人を見る。
自分ならこうする。自分ならああする、とーー。
人は無責任だ。
口先でなら幾らでも言えるが、結局、相手の事を本気で理解出来てる者など、そうは居ないのだから……。
それを本気で思ってる者が居たら、それはただの勘違いだ。
思い上がりも甚だしい。
だから、結局決めるのは『自分自身』。
自分以外に、それらを決める権限は、誰にもない。
例えそれが、神であろうとも……。
俺の言葉に、誰も口を開かなかった。
皆にも、色々思う所もあるだろう。
だから、俺は最後にこう付け加えた。
「貴方達が奴隷に落ちたのは、『他人に強制された、理不尽な事』だ。僕は、それが気に入らない。だからこそ、【隷属紋】を破棄する。僕は優しいんじゃない。結局は、自分の為なんだよ。その後、貴方達が何処で野たれ死のうと、僕の知った事じゃないしね」
そんな、俺の突き放すような言葉に、
「………………なるほど。理解した」
武士然としたイケメンが、そう言った。
何処か嬉しそうに。
「やはり君は優しいよ」
「だから、僕は……」
俺は、イケメンの言葉に言い返そうとして…………口を閉ざす。
イケメンが、徐に二本の刀を地面に置き、片膝を折って頭を垂れたからだ。
「…………え?」
「……【隷属紋】を破棄出来ると言っていたが、逆に、【隷属紋】を刻む事は?」
「は?え?ま、まあ、一応出来るけど……」
唐突な質問に、戸惑いながらも、俺は取り敢えず素直に答えた。
「ならば……」
イケメンは、垂れていた頭を上げると、閉じていた瞼を開けた。
「ッ?!」
俺は、息を飲んだ。
何故なら、その瞼の裏には…………何も無かったからだ。
そこは、空洞だった。
ずっと、目を閉じていたのは気になっていたが、まさか、目をくり取られていたとは……。
イケメンが、凛とした声音で、高々と宣言する。
「我が名は【ヤマト】。生涯の主をここに見つけたり。許されるなら、残されたこの命、貴殿の【隷属紋】を刻み、貴殿の為に尽くしたいと思う。願わくば、我が忠誠を受け取ってほしい」
「…………………………はい?」
え?何言っちゃってんの?この人。
今度は俺が、開いた口が塞がらなかった。
何故、いきなりそうなるのか分からなかった。
助けを求めるように、辺りを見渡してみると…………ヤマトに倣う様にに、何故か他の人達までもが、膝を折ってる光景が目に入った。
えー?何でー?
益々、俺は混乱するのだった。
例えが分かりずらくてすんまへん!!
作者も、書いてて良く分からんくなった(←おい!
((((((^_^;)ニゲヨッ