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2-10 転生者

 俺の眼前では、十人の男女(包帯ぐるぐる巻きは背負われたまま)が、片膝を折って頭を垂れた、異様な光景が広がっていた。


「……もし、この忠誠を受け取ってくれないと言うのなら、後生です。どうか、この刀で私めに引導を渡して下さい」

「ま、待って待って!話が良く見えないんですけど?」


 自身の刀を掲げて、ヤマトが物騒な事を口走る。


「……そもそもさ、何でそんな話になるの?お……僕は、【隷属紋】を破棄するから、好きに生きてって言っただけで……」

「だから、好きにしている。私は、私の意思で、この先も生きられるのなら、貴殿の傍で。それが、我が願い」


 えー?


「折角、奴隷じゃなくなるんだよ?それなのに、また奴隷に落ちるわけ?それって、本末転倒じゃない?」

「私は、そうは思わない。今までの私は、自身の意思で奴隷になったわけではない。だが、今回は違う。そこには、明確な違いがある」


 あー……ダメだこりゃ。

 この頑固イケメンが!

 全く聞く耳持ってくれないよ。


 言いたい事は分かるけど、だからって、何で態々俺なんかの奴隷としての人生を選ぶんだか……。


 俺は、心底困り果てる。

 どうやって諦めさせようか。そんな事を考えていたら、ディータから思いがけない言葉が出てきて、面食らった。


「…………一つ確認したい事があるがいいか?」

「はぁ~……何?」

「……カエルは【転生者】か?」

「………………………………は?」


 まさか、そんな質問が来るとは思わず、誤魔化す事も忘れ、頓狂な声を出す。


 何でバレた?

 俺、そんな事、一言も言った覚えないんだけど。


 周りを見れば、薄々気付いていた者も居るらしく、他の皆も、それ程大きな反応をしていなかった。


 二の句がつげれず、俺はただ呆然と、ディータを凝視した。


「やっぱりか……」

「…………何で?」


 自然と、声が固くなるのを感じた。

 別に、【転生者】である事は、頑なに隠しておこうとは思っていないが、俺が持つ能力が知れ渡れば、確実に碌でもない未来しか待っていない気がする。


 アシスも言っていた。

『【転生者】は、この世界の住人よりも、能力が底上げされてる者が多い』とーー。


 だとしたら、権力者達が、こぞってその力を欲するかもしれない。

 だからこそ、極力隠しておきたかったんだが……。


 【転生者】は、最悪存在自体が最終兵器にすらなり得そうだよな。

 特に俺の『能力』なんかは。


 …………………………ん?あ、あれ?ちょっと待てよ…………


 [………………]


 何か、嫌な汗が流れてきた。


 それを裏付けるように、ディータが続けた。


「【転生者】は、この世界では特に珍しくもないからな。しかも、『記憶を持った、別の世界の【転生者】』ってのも。だからこそ、この世界では、【転生】と言うものは、広く信じられている。そして、『記憶を持った、別の世界の【転生者】』って奴は、多かれ少なかれ、俺達とは違う、特殊な能力を授かるって話だ。あんたの、その底知れぬ強さと言い、数多の能力と言い、大人顔負けの言動と言い……それらを考えてみれば、その可能性が、一番しっくりくるからな」


 やっぱりかー……。

 もう、完全に自業自得じゃん!!


 俺は、頭を抱えて悶えたいのを、必死に我慢した。


「あー、もう!例えそうだとしたら、何なわけ?」


 半分逆切れ、半分開き直って、俺はディータに聞き返す。

 さっきの話の流れから、どうしてそんな話になるのか、さっぱりだからだ。


「その秘密を隠したいから、俺達に【契約書】で喋らないようにしたかったんだろ?」

「……まあね」


 流石に、俺が【転生者】だと言う事がバレてるとは思わなかったが。


「……なら、俺達は…………それを拒否する」

「……え?」

「そうなると、あんたは俺達を口封じで殺した方がいいんじゃないのか?ま、俺は別にそれでも構わないけどな。どっち道、このままでも死ぬ運命なんだし」

「…………………………」


 俺は、ポカンと口を開けたまま、硬直する。


 なんちゅー、無茶振りを……。


 ディータの、『してやったり』みたいなドヤ顔が、余計に腹立たしい。

 俺は、頭痛のする頭を抑えながら、確認する。


「えーっと……つまりはこう言う事?貴方達は、【隷属紋】が破棄されても、()が用意した【契約書】にはサインするつもりはない。それで逃がした場合、何処かの誰かに、俺の事を話すかもしれない。そうならない為に、今ここで口封じをするか、もしくは俺の奴隷にした方が良い、と?」

「そうだ」


 ディータが頷く。


「…………他の皆も、同じ意見なわけ?」


 他九人が首肯したのを確認し、俺は暫し熟考する。

 十人を奴隷にした場合の、メリットとデメリットを天秤にかける。


 先ず、この十人を、孤児院に連れて行くなど論外だ。

 そうなると、何処に住まわせる?

 この森か?この基地か?

 ………………いや。俺なら、幾らでもどうとでも出来るから、そこは問題にはならないだろう。

 それに、俺は見た目はまだ子供で、まだスキルの解放も、半分以上されていない。

 そんな中、俺の事情を知り、俺に絶対的な忠誠を持つサポート役が入れば?

 色々と、今後はもっと幅広く行動出来るのでは?

 そう考えると、今この場で殺すよりは、有難い提案と思わなくはない……か?


 俺が、そこまで思考を巡らせていると、ディータが「それに」と、続けた。

 まだ、何かあるのかと身構えてると、最後にとんでもない爆弾を投下してきた。


「俺達をこのまま逃がすのは、正直、あんたにとっては、あまり得策とも思えない」

「………………どう言う事?」


 俺は、眉間に皺を寄せて聞き返す。


「【転生者】は、この世界では、あまり良く思われていないからだ。いや、正確には、『記憶を持った、別の世界の【転生者】』は、だが」

「……え?何で?」


 ディータ曰く、この世界は、『記憶を持った、別の世界の【転生者】』とやらが、良く転生されて来る世界らしい。

 だが、今から二千年程前に、自らを『自分は神に選ばれた【勇者】である!』と(のたま)う、勘違い転生者(野郎)が現れた。

 此方では、【勇者】なんて言う【称号】を持つ者は存在しないらしい。

 そんなのは、絵本などの話だそうだ。


 確かに、『記憶を持った、別の世界の【転生者】』と言う存在は重宝された。

 何故なら、力も()る事(なが)ら、そう言った【転生者】は知識も豊富で、国を、世界を栄えさせて来た実績があったからだ。


 しかし、やり過ぎたのだ。その【転生者】は……。


 その【転生者】は、【転生者】らしく、強大な能力を所有していた。

 故に、誰も彼に逆らう事は出来なかった。

 その力を振るい、暴君と化した彼は、遂には、自らを王とした国を建国し、逆らう者には死を。気に入った美女がいれば、力ずくで自分のハーレムに加えたり、他国を脅しては、金銀財宝を奪ったり……。


 そうして、好き放題しまくってた男だったが、そんな事が長く続く筈もなく……とうとう終わりを迎える時が来た。


 神の命を受けた、【監視者】とも呼ばれる九つの【守護獣】が、男を討伐する為動き出したのだ。

 幾ら【転生者】と言えども、相手は【守護獣】。

 しかも、【守護獣】全てが相手なのだ。

 たった一晩で、その【転生者】の国は、跡形も無く滅んだと言う。


 余談だが、【勇者】が存在しない理由は、ここにある。

【魔王】と呼ばれる者は存在する。

 魔人国の王が魔王だからだ。

 しかし、その魔王は、別に他の種族を滅ぼそうなど考えない。いや、考えられない(・・・・)

 それは、他の種族にも言える事だ。

 国同士の、多少の小競り合いなら、過去にも幾度とあったらしい。

 だが、それが度を過ぎると、必ず神の命を受けた【守護獣】が現れ、双方(・・)の国を裁く。

 それは、この国に住まう者達にとって常識であり、【守護獣】には決して逆らわない。

 適う筈がないのだから。


 その【転生者】は、その事実を知らなかったのか、或いは知ってても、自分なら【守護獣】にも勝てると思い上がったのか……最早、真実は誰にも分からない。

 結果として、その転生者は、神の逆鱗に触れてしまったのだから。


 ディータは続ける。


「その日以来、その話が絵本となって、未だに語り継がれている。勿論、全ての【転生者】がそんな奴ばかりではないだろう。けど、そのせいもあり、それからこの世界では【転生者】を、あまり好ましく思っていない連中が多いんだ。特に長命種とかな。だから、俺達を逃せばあんたが【転生者】だと言っちまって、あんたがこの世界で生きずらくなっちまうかもしれないぜ?」


 そう、最後にディータは締め括った。


 えー?マジっすか?

 そんな話は初耳何ですけど?

 アシスさん!アシスさーん!


 [……何でしょう?]


「何でしょう?」じゃないよ!

 今の話は本当?


 [はい、本当です]


 あぅち!本当でした!

 何で教えてくんなかったの?!


 [……聞かれませんでしたので]


 …………ご尤もです。


 確かに、この世界に、俺以外の【転生者】が居るかどうかは聞いた事はあるけど、そんな馬鹿な【転生者】が居たかどうかは聞いた事は無い。


 けど、普通そんな事思わないじゃん?

 そんなの、完全に予想の範囲外だよね?

 そんな馬鹿が実際に居たとは……。

 俺、悪くなくね?


 これで、尚更選択肢が狭まってしまった。

 心の何処かでは、別にこのまま逃がしてもいいかな~、なんて考えてたけど、もし逃がした場合のデメリットが大き過ぎる。

 俺にそんな気がなくても、周囲が俺を、暴君転生者と同じに見れば、それだけでこの世界での居場所を失うだろう。


 まあ、分かってて、ディータはこんな話を振ってきたんだろうけど。

 話されたくなければ、自分達を殺すか、奴隷にしろ、と。


 脅迫ですか?!

 脅迫ですよね?!


 まあ、彼らもそれだけ必死なのかもしれない。

 どうしてそこまで俺なんかに?と思わなくはないが…………ここまで来たら仕方ない。


 俺は大きな溜息を吐くと、腹を括る。

 そして、未だに片膝を付いて、ジッと俺の返答を待ち続ける十人に向かって、宣言した。


※前に一度【神獣】と書きましたが、【守護獣】に変更しました。


少しでも面白いと感じて下さったら、ブクマや評価をお願いしますm(_ _)m

更にやる気が上がりますので♪

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