2-8 呪術
集まっている面々は、ディータを初め十人。
猫人に、白髪赤目の兎人の可愛らしい女の子。
双子ドライアドにドワーフにコロポックル。
赤目だから、恐らく魔人らしき男。
包帯ぐるぐる巻きで、人相は分からず、種族不明の人が一人。
それから、人族の男性が二人だ。
鑑定…………は、止めた。
正直面倒いし、何より前回の教訓(ついディータの名前を口走った)もあるしね。
それに、そもそも、ステータスを見るのは、プラべートを覗くようなものだ。
相手も、あまり良い気分にはならないだろう。
ディータが代表して、一歩前に出る。
「これが、約束の報酬だ」
そう言って、ピンク色の可愛らしいウェストポーチを、俺に手渡して来た。
「これは……【収納鞄】だね?」
【収納鞄】とは、〈異空間収納〉が付与された鞄だ。
背負袋だったり、旅行カバンみたいなものだったりと、種類は様々ある。
どれも、それなりに高いらしいが。
「ああ。その中に、金目の物を目に付くだけ入れてみた。時間もなかったから適当だったが……」
彼女の死を確認してから、恐らく皆は慌てて屋敷を飛び出してきたのだろう。
誰かに見つかると、色々と面倒な事になりそうだから。
俺は早速、ウェストポーチを逆さまにして、地面に中身をばら蒔いた。
お金が入った財布に、様々な色や形をした宝石類。
指輪、ネックレス、イヤリング……等々。
装飾の施されたナイフ。金のコップや食器類(使い勝手が悪そうだ)。
高そうな絵画。
それに、何故か鞭や蝋燭、仮面まで。
……………………女王様?!
「……それは、あの女の愛用の物だ」
……なるほど。
ディータの、不機嫌そうな声で、大体の事を察した俺。
まあでも、仮面はないよな~、仮面は。
「…………うん。確かに、報酬は受け取ったよ」
俺は、一通りそれらを確認し終わると、ウェストポーチにそれらをしまい直した。
「改めて、礼を言う」
その行動を、終始見守っていたディータ達が、一斉に頭を下げた。
「別に礼はいいよ。言ったでしょ?これは正式な仕事だ。報酬も、きっちり貰ったしね」
「それでも……礼を言わせてくれ。本当に有難う」
「……分かった。礼はきっちり受け取ったよ」
俺が、苦笑しながらそう言うと、ディータがホッとした顔をした。
義理堅い男だ。
そんな中、一人の人族ーー両目を瞑った、長い黒髪を後ろでポニテにして、腰に打刀と脇差の二本の刀を帯刀した、如何にもといった男。しかも美男子ーーが、前に進みでると、俺に聞いてきた。
「すまないが、一つ聞きたい事がある」
「ん?何?」
「……あの女を殺したのは、【呪術】か?」
どうやら、彼女の殺し方が気になった様だ。
「んー……まあね」
「それは、どんな【呪術】だ?見た所、老化を速めてる感じがあったが……」
へぇー……悪くない観察眼だな。
まあ、見てれば大凡の予想はつくか。
確かに、彼の言う通り、俺が彼女に掛けた呪いは、『老化を十倍速にするもの』だ。
しかし、俺はその質問には答えず、ニヤリと意地悪く笑った。
「どう?少しは楽しめた?これで、多少なりとも溜飲は下がったんじゃないかな?」
「……確かに。あれは、あの女にとっては、最高の地獄の一週間だったかもな」
「彼女は、どうも『美』に拘っていたみたいだからね」
だから、俺がした事は、彼女の老化を速める事で、彼女が最も恐れていた『老い』を、実体験で感じさせてあげたのだ。
それは、現在進行形で続いている。
年老いて、死んで、骨となる。
そこまでが、この【呪術】の効果だった。
まあ、そこまで詳しく説明するつもりは無いが。
しかし、皆が俺の言葉に驚いた顔をする。
「……よく知ってたな。あの女が、『美』に拘りがあるって。先日、初めてあったばかりだと言うのに……」
あー……またやっちゃったよ。
さっき、戒めたばかりだってのに。
学習能力無いな、本当。
俺は内心苦笑する。
実は、彼女の【称号】に、〈美の探求者〉なんてものがあった。
最初は、何じゃそりゃって思ったわ(笑)
でも、そこから推測するに、彼女は『自分磨きに余念が無い』のではないかと思った。
服や化粧の事はあまり詳しくないが、センスは良かったと思うし、実年齢よりは、若々しくも思えた。
それに、女性は年齢に煩いと、昔美波先生に聞いた事があったからね。
「まー……何となく?」
俺は、取り敢えず誤魔化しておいた。
これ以上、俺の能力を知られるのは危険だと判断したからだ。
それに、どうせ皆とは、ここでお別れだしね。
皆も、これ以上は追求してこなかった。
俺は、これ幸いにと、そのまま話を進める事にした。
「それじゃ、最後の仕上げと行こうか」
「…………ん?『最後の仕上げ』??」
俺の言葉に、十人が一斉に首を傾げるのだった。
因みに、今回の『呪術』は、主人公のオリジナルです。
その名も、【老加速】………………誰か、ネーミングセンスを分けて下さい(切実)




