表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/25

2-1 七歳

本日は、三話投稿します。

 児童養護施設ーーそれは、親からの虐待や、捨てられた子供、或いは親と死別したなどの理由で、行き場のない子供達を引き取り、自立の為の援助をしつつ育て、里親などに預けるもの。


 本来なら……。


 しかし、この世界の児童養護施設…………と言うより、俺が住んでる孤児院は、やはり変わっていた。


 俺を含めた八人が、英才教育を受けてると言ったが、他の孤児院の子供達も、明らかに普通(・・)ではなかったんだ。


 流石は犯罪国家(ヴァレン国)。お国柄と言った所か。


 この孤児院の教育方針は、『力こそ全て!』だ。

 その為、幼い頃から、既に序列化(ヒエラルキー)が始まっている。


 最初に行われるのは、勝者(強者)敗者(弱者)の、明確な線引き。

 それが決まれば、後は言わずもがな。

 食事の時は、強者が先に食べ、弱者は残り物を分けてもらう(・・・・・・・)

 玩具で遊べるのも、強者のみ。

 何をするにも、強者が上に立つ。

 敗者は勝者に付き従うのみ。

 単純明快。


 弱肉強食。適者生存。


 しかし、敗者はいつまでも敗者でいるとは限らない。

 敗者は、勝者()にいつでも再戦を申し込める。

 そうする事で、闘争本能に火をつけるのだ。


『欲しい物があれば力で奪え』ーー。


 勝者は勝ち組のままで居たいのなら、更に力を付けろ。

 敗者が勝ち組になりたいなら、更なる努力をしろ。


 それが、この孤児院ーー【ゲルダ院】の方針だ。


 そして、そんな子供達でさえ一目置かれてるのが、俺達、選ばれた(エリート)八人と言うわけである。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ぅお?!」


 俺は現在、宙を舞っていた。

 右手を捕まれ、投げ飛ばされていた。


「ッ?!」


 背中を強かに打ち付け、息を詰まらせる。


「…………どうしました?カエル(・・・)。心ここに在らずでしたよ?」


 マイラ先生が、無表情で俺を見下ろしながら、そう指摘してきた。

 俺はバツが悪そうな顔をして、視線を逸らす。


 因みに、『カエル』とは、俺のここでの名前だ。

 名付けはマイラ先生。

 〈鑑定〉スキルを持ってない限り、俺の名前(ステータス)を見る事は出来ない。

 なので、誰も俺の本名を知らない。


 不思議と、ステータスにも反映される事はなかった。

 ちゃんと、今も名前は『トーヤ』となっている。


「あー……すみません。小腹が空いちゃって」


 俺は上半身を起こし頭を掻いて、舌を出しておどけて見せた。

 すると、俺の誤魔化しに、もう一人(・・・・)が同意を示す。


「あ!俺も腹減ったかも!」

「…………」


 マイラ先生が、彼に一瞥し、もう一度俺に視線を向けてから一拍。


「そうですね。そろそろおやつの時間にしますか。鍛錬は一度お休みにしましょう」


 ポンと手を打ち鳴らすと、コロッと表情を和らげた。


 ふうー、危ない危ない。

 危うく怪しまれる所だった。

 加減(・・)するのも楽じゃないな。


 今の俺は、間違いなくマイラ先生より強いから。

 怪しまれない様、調整しなくてはならない。

 あまり手を抜きすぎると、返って不審がられるし……本当難しいよ。


「俺に感謝しろよ?カエル」


 俺の横を通り過ぎざま、男の子が悪戯が成功した時の様に、ニヤリと笑って言った。

 八重歯の似合う子だ。

 俺は苦笑しながら、小さな声で「ありがとう」と告げた。


 彼の名は【ミハエラ】ーー。


 俺と一緒に訓練してる男の子だ。

 現在、ミハエラと俺の二人が、マイラ先生の指導を受けてる。

 他の六人?

 他の子達は、今は別の所(・・・)で訓練中。

 最初は、基礎的な事を学ぶ為に全員一緒だったけど、それぞれ得意分野が別れ、途中からそれに合った(・・・)訓練へ移行する事になったんだ。


 ある子は、盗みの才能を。

 ある子は、詐欺の才能を。

 ある子は、計算の才能を。


 そして、俺とミハエラは、暗殺の才能をーー。


 ……………………解せぬ。

 何故俺が暗殺者なのか。

 俺は至って普通(・・)の男の子なのに。


 [………………]


 俺達は食堂へと着く。

 マイラ先生は、他の子供達を呼びに、一度食堂を出ていき、俺達は皆が来るまで席に着いて待つ事にした。


「こう言っちゃなんだが、おやつの時間が一番楽しみだよな」

「……確かに」


 それには、俺も心から同意する。

 おやつは、言わば俺達八人(エリート)のみに許された特権だ。

 他の孤児の子供達には、それ(おやつ)はない。


『飴と鞭』の『飴』と言うわけだ。


 皆には悪いとは思うが……。

 けれど、仕方が無いんだ。

 実は、前に一度、こっそりと下の子達にお菓子を分けた事がある。

 そうしたら、院長にめっさ怒られた。


『他の奴らまで真似したらどうするんだ!』とーー。


 ここでは、『善』が『悪』、『悪』が『善』なのだ。

 良かれとした事だが、そのせいで、俺からお菓子を貰った子達まで怒られてしまい、本気で申し訳ない事をしてしまった。

 この国では、今までの常識が、一切通用しない。

 だからこそ、自分自身を見失わないように、一層気を引き締めようと、その時新たに思った。


「あ~あ、早く俺も一人前の暗殺者になって、人を殺したよ」

「あ、はは」


 ミハエラが、事も無げに言う。

 こう言う会話が、一番返事に窮する。


 ミハエラは、いい子だと思う。

 俺より二つ上で、兄貴肌で、ちょっとガキ大将っぽい所もあるが、面倒見もよく仲間思いで……。

 けれど、環境が人を作る。

 洗脳されてるのもあるが、こう言った事を平気で言ってくるので、俺としても、非常に反応に困るのだ。


 それからも、ミハエラと談笑をしつつ、マイラ先生を待つ。


 そして、二十分後、マイラ先生が食堂に戻って来ての第一声。


「カエル。院長先生がお呼びです」


 えー?おやつはー?


名前の発音ですが、カエル↗ではなく、カエル↘と読んで下さいね?

カエル↗だと、『蛙』になりますから(笑)


少しでも面白いと感じて下さったら、ブクマや評価をお願いしますm(_ _)m

更にやる気が上がりますので♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ