2-2 忌み子の猫人
本日二話目。
俺の名はディータ。猫人だ。
今は、ある女に飼われている、しがない奴隷だ。
俺の人生は、幸せだったかと聞かれれば、『否』と答えるだろう。
それは、生まれた時から……。
俺の容姿は黒髪黒目。
これは、俺達猫人族にとって、不幸の象徴とされているものだ。
そう。俺は所謂【忌み子】として、この世に生まれ落ちた。
猫人族は、古い因習を重んじる種族だからな。
お陰で、畑が不作なのも、夫婦に子供が出来ないのも、あの子に振られたのも、何でもかんでも、事あるごとに俺のせい。
言い掛かりも甚だしい。
両親は…………それなりに優しかったと思う。
しかし、周囲からの冷たい視線や、度かなさなる嫌がらせで、両親は疲弊していき、終いには……自らの命を絶ってしまった。
俺は両親を恨んだ。
死ぬぐらいなら、何故俺を産んだのか。
何故俺も一緒に連れて行ってくれなかったのか。
両親が良く言っていた。
俺にも、いつか運命の出会いがあると。
その人なら、きっと俺を受け入れてくれる。
きっと、いつか幸せになれる。だから生きなさい。
そう言ってたのに…………自分達は、さっさと『楽な道』を選んだ。
そして、当然両親の死も、里の皆は俺のせいだと罵った。
それは否定しない。
そもそも、俺が生まれて来なければ良かっただけの話なのだから。
簡単な墓を作り、両親をそこに埋めた後、俺は里を飛び出した。
十歳になったばかりだった。
それからは、只々必死だった。
盗みも、恐喝も、強盗も、殺しさえもーー。
生きる為に、なんでもやった。
それは別に、両親が言ってた、『運命の相手』だとか、『生きていれば幸せになれる』だとかを信じてた訳では無い。
ただ、死にたくなかった。
両親のような負け犬になりたくなかった。
ただ、その一心だった。
俺は、各地を転々としながら、そんな生活を十年続けた。
気付けば、二十歳になっていた。
その日も、とある街で、いつも通り盗みを働こうとした。
しかし、ちょっとしたヘマで、衛兵に捕まってしまう。
とうとう、俺も年貢の納め時かと諦めたそんな時、あの女に出会ったんだ。
その女は、何処ぞの貴族のご婦人らしかった。
その女は、俺のこの黒髪を「綺麗だ」と言った。
ボサボサで、長年碌に手入れもされていない、不吉だと言われ続けたこの黒髪を、だ。
俺は単純だ。
たったその一言だけで、両親の言った『運命の相手』が、この女じゃないかと思った。
彼女に出会う為、俺はこの苦しみを耐えて生きてきたのだと。
都合の良い事だ。
あれだけ、両親の言葉など信じていなかったと言うのに……。
しかし、それは早くも瓦解する。
俺は、彼女の言うがままに【隷属紋】を受け入れ、彼女専用の【奴隷】となった。
それが間違いだったのだ。
これでも、それなりに人を見る目には自信があったつもりだったが、俺自身も気付かぬ内に、精神的に参ってたのかもしれないな。
その瞬間、あの女はすぐに本性を表したんだ。
それまで優しかったのが嘘のように、あの女は態度を百八十度豹変し、俺を物のように扱うようになった。
少しでも失敗すれば、鞭で打たれた。
性欲の捌け口にもされた。
ある闇ルートから仕入れたらしい薬のせいで、子種を死滅せられた俺は、今後、子作り出来ない体にさせられた。
あの女にとっては、安心安全、と言うわけだ。
いや、俺はまだマシな方だろう。
俺の奴隷仲間の中には、『部位欠損』して、日常生活もまならないやつもいるのだから。
最も、あの女に目をつけられたのが、そもそもの運の尽きと言うものだ。
何がいけなかったのだろうか。
何処で間違えたのだろうか。
やはり、俺が生まれたのがいけなかったのか?
しかし、それは俺にはどうする事も出来ない事だ。
それこそ、文句を言うなら神様に言って欲しい。
神がいればの話だが……。
この世は不公平だ。
何故俺達がこんな目に合わなくてはいけない?
高望みをしてるわけじゃない。
ただ人並みに、幸せに生きたいだけなのに。
それすらも、俺達には許されないと言うのか。
こうして、俺はあの女の奴隷として、三年間地獄の毎日を過ごす事となったのだった。
思ってたより長くなってしまったので、二話に続きます。
次話は、ちょっと長めです。
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