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第3話 視線
会議が終わって、皆が席を立っていく。
「キム・ジミン」
ミンジェの声。
いつも通りのトーン。
ジミンは反射で顔を上げる。
「このデータ、再確認しておいてくれ」
そう言って、資料の一部を軽く机に置く。
特別でも何でもない業務指示。
ジミンは一拍遅れて「はい」と答える。
……のに、そのまま立ち上がれない。
ミンジェの視線が、まだこっちに残っている気がする。
短い沈黙。
「なんだ?」
低い声。 いつものトーン。
それなのに、ジミンは一瞬だけ言葉に詰まる。
「いえ……承知しました」
それだけで会話は終わる。
ミンジェはすでに別の資料に視線を落としている。
ジミンだけが、少し遅れて呼吸を戻す。
「……このあいだは、ありがとうございました」
ミンジェが視線を上げる。
「なんだ?」
短い声。
ジミンは少しだけ呼吸を整える。
「チームビルディングのとき……です」
それだけ言って、視線を落とす。
沈黙。 長くはない。
ミンジェは軽く頷く。
「業務の一環だ」
それだけ。
ミンジェの視線はもう資料に戻っている。
何も引っかかっていないみたいに。
ジミンは静かに席を立った。
――ミンジェは、その背中が会議室の扉を抜けるまで、
一度も視線を外さなかった。




