第27話 本音
「俺自身はどうしたいか、か」
ミンジェはつぶやいて、沈黙した。
(……答えられないんだ)
胸の奥がヒリヒリする。
これだけぶつけても、この人の心の奥には届かない。
緑地の街灯が、ミンジェの横顔を淡く照らしている。
いつも通り冷静で、感情をほとんど見せない顔。
「課長はいつもそうやって、私に選ばせているみたいに言って、自分が何を望んでいるかは隠すんですね」
ジミンの声は震えていたが、はっきりしていた。
一度あふれた気持ちは止められなかった。
「仮婚約も、3ヶ月という期限も、『君が望むなら』という言葉も。
全部、課長が決めてきたことなのに」
ミンジェはまだ黙ったままだった。ジミンは一歩近づいた。
「なのに、課長自身がどうしたいのかは、いつも見せてくれない」
木々のざわめきが響く。
ミンジェはようやく、ゆっくりと口を開いた。
「……俺は、逃げていたのかもしれない」
その声は低く、静かだった。
また、沈黙が落ちる。
でも、今度はジミンには分かった。
この沈黙は、ミンジェが自分自身と向き合っている証拠だ。
「昔、俺の態度が原因で、ある人をひどく傷つけたことがあった」
ジミンは目を見開いた。
「相手を大切に思っているつもりだった。
でも、俺が何を望んでいるのかを曖昧にしたまま、中途半端な関係を続けた」
ミンジェは小さく息を吐いた。
「結果的に相手を深く傷つけてしまった。
あの時の後悔が、今も残っている」
ジミンの胸の鼓動が早くなる。
「だから、君に対しては絶対に中途半端にしたくなかった」
ジミンを見るまなざしは落ちついていて、でも彼自身が一番傷ついているようでもあった。
「……それは半分は嘘だ。
本当は、ただ怖かっただけだ。
自分の欲に負けて、君を傷つけてしまうのが」
ミンジェはそこで言葉を切った。
緑地の静かな夜に、二人の息遣いだけが響いていた。
「課長が怖かったことは、分かりました」
ジミンは静かに彼を見つめていた。
「でも、私はその人じゃありません。
私が傷つくかどうかまで、課長が一人で決めないでください」




