第22話 見えない存在
海外事業チームの会議室。
ソヨンがメインで発表する資料のレビューが行われていた。
スクリーンに映る資料を指しながら、ソヨンははっきりとした声で説明を進める。
「この部分の数値についてですが、来期の成長率を……」
スクリーンの前に座ったミンジェが、時折静かに補足を入れる。
「ここは前年の実績を加味すると、もう少し保守的に見積もった方がいいかもしれません」
「ありがとうございます。ではそのように修正します」
二人のやり取りは完全に業務的で、プロフェッショナルだった。
しかし、周囲の社員たちの目には違って映っていた。
「あの二人、並ぶとほんと絵になるよね」
誰かが小声でささやいた。
「ソヨンさん、ミンジェ課長には遠慮なく聞いてください。彼は本当に面倒見がいいから」
本部長が満足そうに言った。
ジミンは資料を握る手に、思わず力を込めた。
胸の奥が、鋭く痛む。
(……面倒見がいい、か)
一緒に残業した夜も、タクシーで送ってくれた夜も、
あの温泉で背中で守ってくれたことも——
すべてが「面倒見のいいミンジェ課長」の通常運転だったのかもしれない。
でも、あの温泉のことだけは、特別だったはずだ。
そう思いたい。そう思い続けたい。
――業務の一環だ。
ミンジェの声が頭に響いた。
本当に「業務の一環」で、困っている部下を助けただけだったら?
ジミンは唇を軽く噛んだ。
会議が終わり、みんなが席を立つ中、ミンジェとソヨンが並んで出口に向かう後ろ姿が目に入った。
二人は何事もなかったように、軽く会話を続けている。
ジミンはその背中を見つめながら、静かに息を吐いた。
(……私は、ただの部下で、でも仮の婚約者で、
外からは何も見えない存在なんだ)
胸の痛みが、ますます深くなっていった。




