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ミンジェ課長の秘密  作者: Furi0804


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第18話 朝がきても

ミンジェの腕がゆっくりと緩んだ。


「……すまない」


低く掠れた声。

ジミンは解放された瞬間、ようやく振り返った。


ミンジェは一歩後ろに下がり、視線を逸らしたままコートを手に取った。


「タクシーを呼ぶ。今日はもう帰ろう」


ジミンはまだ胸の鼓動が収まらず、小さく頷いた。


「……はい」


二人は無言でオフィスを後にした。

タクシーに乗り込んでからも、車内は重い沈黙に支配されていた。

ミンジェは窓の外を、ジミンは膝の上に置いた指を見つめていた。

アパートの前に着いた時、ミンジェはようやく口を開いた。


「おやすみ」


声は低くて、少し掠れていた。


ジミンが車を下りた後、ミンジェはタクシーの後部座席で目を閉じていた。

腕に残るジミンの体温と、彼女の震えが、まだ鮮明に残っている。


(……完全に、やりすぎた)


彼は静かに息を吐き、頭をシートに預けた。


抱きしめた瞬間、ミンジェ自身が一番驚いていた。


こんな場所で。

上司として。

まだ契約の途中で。


どの条件に照らしても、してはいけないことだった。


それでも、離せなかった。

あと1ヶ月。この「仮の契約」が終わるまでは。


ミンジェの指は、無意識に自分の腕を強く握りしめていた。


*************


翌朝、オフィスはいつもと何も変わらないはずだった。


「ジミンちゃん、昨日大変だったね。大丈夫?」


席に座ると、隣の先輩が心配そうに声をかけてきた。


「はい、ご心配をおかけしました」


ジミンは慌てて笑顔を作り、視線は自然とミンジェの席へ向かう。

PCのモニターに隠れて、ミンジェの表情は見えない。


(課長、今どんな顔してるんだろう……)


昨夜あんなに強く抱きしめておいて、平気な顔をしているのか。


ミーティングが終わった後、ミンジェがジミンのデスクの横を通りかかった。

ミンジェはいつも通り淡々と声をかけた。


「キム・ジミン」


目が合う。


「昨夜の対応、お疲れ様。

君の対応のおかげで先方も納得してくれた。

体調が悪そうなら、今日は早めに上がれ」


「……ありがとうございます」


ジミンは小さく頭を下げた。

でも心の中では全く別の言葉が渦巻いていた。


(早めに上がれって……

昨夜あんなに「限界だ」って言ったくせに、それだけ?

ずるい……本当にずるい……)


ジミンはデスクの下で、指をきつく握りしめた。


その日から、二人の間には

これまで以上に重くて、甘くて、息苦しい「気まずさ」が漂い始めた。


ジミンは毎日、ミンジェの視線を感じるたび、あの夜を思いだして胸がざわついた。


(……どうしよう。

これからどう顔を合わせればいいの?)


一方、ミンジェは——


(……完全に、やりすぎた)


ジミンを抱きしめてしまった感触が、まだ腕に残っている。


この仮の契約が終わるまで、あと1ヶ月。


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