第12話 曖昧な関係
しばらく経ったある夜。またしても、オフィスに残っているのはジミンとミンジェの二人だけだった。
ジミンは資料をまとめながら、ふと疑問に思った。
(……どうして、いつもこうなるんだろう)
他の社員は定時で上がっていくのに、なぜかこのチームの残業は、ここ最近、ほぼ毎回最後までミンジェと自分だけになっている。
「送る」
ミンジェが短く言って立ち上がる。
ジミンは慌ててバッグを掴みながら、小さく呟いた。
「……課長、いつも残業お疲れ様です」
ミンジェは答えず、ただエレベーターのボタンを押した。
タクシーに乗り込んでからも、車内は静かだった。
ジミンは窓の外を見ながら、胸の中で考えていた。
(……どうして、いつもこうなるんだろう)
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ジミンのアパートの前で別れてから、ミンジェはタクシーの後部座席で静かに目を閉じた。
(……どうして、いつもこうなるんだろう)
二人きりの時間を、少しでも作りたかった。
だからこそ、残業を「調整」して、他の社員より少し長く残るようにしている。
もちろん、そんなことは口には出さない。
ミンジェは窓の外に視線を移しながら、小さく息を吐く。
ミンジェは過去に一度、「曖昧な関係」で人を深く傷つけた経験がある。
数年前の記憶が、蘇る。
仕事で知り合った女性と付き合っていた頃。
当時は「結婚を考えている」と自分でも思っていたし、相手もそれを期待していた。
しかし関係が深まるにつれ、ミンジェは自分の気持ちが本物ではないことに気づいてしまった。
結局、相手が一番欲しがっていた「明確な将来」を与えられず、中途半端なまま関係を続けてしまった。
結局、相手を深く傷つけ、彼女は故郷に帰っていった。
ミンジェはそのとき、初めて自分が「欲望」と「責任」を混同していたことに気づいた。
相手を本気で愛していなかったのに、深い関係を持ってしまった自分を強く後悔した。
それ以来、彼は自分の中で明確なルールを作った。
「一度だけ」や「曖昧な関係」は絶対にしない 。
相手を傷つける可能性があるなら、最初から手を出すべきではない 。
本気で「この人と一生一緒にいたい」と思える相手でなければ、深い関係は持たない。
あの時の後悔と自己嫌悪は、今でも鮮明に残っている。
ジミンを強く欲しいと思ってしまった時、ミンジェは過去の失敗がフラッシュバックした。
ジミンに対しては絶対に中途半端にしたくない。
「一度だけ」で済ませて、後で彼女を傷つけるような真似はできない。
仮の婚約者という枠組みを作ったのは、自分が本当に彼女を一生守れる人間なのか、彼女が本気で自分を必要としているのか、ちゃんと確かめるためだった。
(もう少し……ちゃんと確かめないと)
指先が、無意識に膝の上で軽く握りしめられていた。




