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第十一話 出会いの先

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 ガコン。


操縦席のハッチが開く。


俺はゆっくりと機体の外へ出た。


壁には、確かに文字が書かれている。


『やめてよ』


見間違えるはずもない。


日本語だった。


「……。」


目の前のエルフも、俺を見て固まっている。


信じられないものを見るような顔だ。


いや。


それは俺も同じだった。


この世界に来て四年。


初めてだった。


自分以外に、この文字を書ける存在を見たのは。


俺は壁の文字を見る。


そして、エルフを見る。


もう一度、壁を見る。


「……。」


頭の中が真っ白になる。


だが。


今はそんなことを考えている場合ではなかった。


目の前の二人は、どう見ても限界だった。



年上のエルフが、ふらりとよろける。


「……!」


思わず一歩踏み出す。


すると。


そのエルフは最後まで妹を庇うように抱きしめた。


敵意はない。


そう分かっていても、身体が勝手に動いているのだろう。


「……。」


なんだか、昔の自分を見ているみたいだった。


俺はゆっくり両手を上げた。


何もしない。


そのつもりだった。


もちろん、言葉は通じない。


それでも。


少しでも安心してほしかった。


だが。


限界だったのだろう。


エルフの瞳から、急に力が抜けた。


「あ……。」


そのまま、前へ倒れる。


「うおっ!」


慌てて駆け寄り、身体を受け止める。


軽かった。


驚くほど。


ちゃんと食べていないのだろう。


「お姉ちゃん!」


小さいエルフが駆け寄ってくる。


涙目だ。


何か必死に話している。


もちろん、分からない。


だが。


伝わることもある。


「……大丈夫。」


通じないと分かっていても、そう言ってしまう。


小さいエルフは、不安そうに俺を見つめていた。



俺は二人を寝床まで運ぶことにした。


幸い、距離はそう遠くない。


年上の方を背負う。


軽い。


本当に、軽い。


そして。


小さい方は、俺の服をぎゅっと掴んで後ろを付いてくる。


逃げない。


いや。


逃げられないのかもしれない。


それほどまでに疲れ切っていた。



寝床へ戻る。


毛布を敷き、エルフを寝かせる。


額に触れる。


少し熱い。


「……無理しすぎだろ。」


小さいエルフは、ずっと姉の手を握っていた。


離れようとしない。


「……。」


俺は鍋を火にかける。


残っていた野菜。


干し肉。


少しだけ残していた塩。


全部入れる。


こんな時くらい、出し惜しみはなしだ。


ぐつぐつと、鍋が音を立てる。


やがて。


小さな寝息が聞こえてきた。


振り返る。


小さいエルフも、姉の隣で眠っていた。


「……。」


俺は鍋をかき混ぜる。


静かな夜だった。


だが。


今までの静けさとは違う。


誰かがいる。


それだけで、少しだけ暖かかった。



壁を見る。


そこへ、炭を持っていく。


そして。


小さく文字を書く。


『レン』


しばらく見つめる。


それから。


苦笑した。


「まさかな……。」


偶然かもしれない。


この文字を、たまたま知っていただけかもしれない。


でも。


もし。


もし本当に。


俺と同じなら――。


「……。」


考えるのは、明日にしよう。


今は。


この二人を休ませてやりたい。


俺は鍋の火を弱める。


そして。


毛布に背を預けた。


久しぶりだった。


誰かの寝息を聞きながら眠るのは。


地下都市の夜は静かだった。


けれど。


この日から。


俺の一人きりの生活は終わりを告げた。



読んでいただきありがとうございます。


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