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第十話 足跡の主

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 ゴト……。


静かな地下都市に、不自然な音が響いた。


「……?」


俺は鍋から顔を上げる。


この数日、ここで過ごして分かったことがある。


この地下都市には何もいない。


魔物も。


動物も。


そして、人も。


だからこそ。


今の音は異質だった。


俺は腰の剣を手に取る。


「……誰かいるのか?」


返事はない。


当たり前だ。


独り言のように呟き、焚き火を消す。


そして、音のした方へと歩き出した。



しばらく進む。


すると、石畳の上に見慣れないものが落ちていた。


「……ん?」


赤い木の実だった。


俺がここへ来てから、何度か採っていた実。


だが。


今日はここへ来ていない。


つまり――。


「誰かが、ここを通った。」


周囲を見回す。


すると。


石畳の上に、小さな足跡が残っていた。


「……裸足?」


しかも、一つじゃない。


二人分。


片方は小さい。


子供だろうか。


俺はしゃがみ込む。


まだ新しい。


ついさっきだ。


「……まさかな。」


ここに来てから、ずっと一人だった。


だから、誰かがいるなんて考えもしなかった。


けれど。


この足跡は嘘をつかない。



足跡を追う。


途中、壁際に置いていた干し肉が一つなくなっていた。


「……盗まれた?」


いや。


食べ物を探していたのか。


少しだけ、嫌な予感がする。


足跡はどんどん奥へ続いていた。


そして――。


視界の先。


崩れた建物の陰。


何かが動いた。


「……!」


咄嗟に身を隠す。


しばらく様子を見る。


すると。


そこから現れたのは。


「……エルフ?」


思わず呟いた。


長い耳。


金色の髪。


ゲームで何度も見た種族。


けれど。


その姿は、あまりにも痛々しかった。


服はぼろぼろ。


身体は痩せ細っている。


そして。


首には、鉄の首輪。


その後ろには、さらに小さなエルフの少女がいた。


こちらも同じ首輪を付けている。


「……。」


奴隷、か?


いや。


そんなことより。


「なんでこんなところに……。」


地下都市に、生存者がいた。


それだけでも驚きだった。



その時だった。


小さい方が、ふらりとよろける。


慌てて姉らしきエルフが支える。


しかし。


その姉の方も、今にも倒れそうだった。


「……。」


見ていられなかった。


俺も、昔はあんな顔をしていた。


食う物がなくて。


生きるだけで精一杯だった頃。


誰も信じられなかった頃。


放っておけば。


あの二人は、きっと死ぬ。


「……はぁ。」


大きくため息を吐く。


「面倒事の予感しかしない。」


けれど。


見捨てるのも、後味が悪い。



俺は機兵へ戻った。


ハッチを開く。


操縦席へ乗り込む。


この姿なら、もし襲われても対処できる。


ゆっくりと機兵を動かした。


ゴウン……。


重い足音が響く。


すると。


エルフ達がこちらに気付いた。


びくり、と身体を震わせる。


小さい方を、姉が必死に庇う。


「……。」


完全に怯えている。


そりゃそうだ。


いきなり鉄の巨人が出てきたら、俺でも逃げる。


だが。


姉の方は逃げなかった。


震える足で立ち上がる。


そして。


妹を背中へ隠した。


その姿に。


少しだけ感心する。


「……強いな。」


次の瞬間だった。


姉が、ふらふらと後ろへ下がる。


そして。


壁へ手を付いた。


何かを書いている。


「……?」


機兵を止める。


やがて。


四文字の文字が、壁に浮かび上がった。


『やめてよ』


「……。」


俺の思考が止まった。


今。


何を見た?


もう一度。


壁を見る。


『やめてよ』


間違いない。


俺が知っている文字だ。


「……え?」


あり得ない。


どうして。


この世界で。


その文字を。


「……。」


心臓が大きく鳴る。


俺は壁の文字と、エルフを何度も見比べた。


「……まさか。」


胸の奥が、ざわつく。


ゆっくりと。


俺は操縦席のハッチを開いた。


この出会いが。


俺の人生を、もう一度大きく変えることになる。


この時の俺は、まだ知らなかった。


読んでいただきありがとうございます。


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