表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
94/101

第九話 地下都市の暮らし

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 遺跡に落ちてから数日が経った。


まずやったこと。


それは、生きる為に必要な事だった。


「……よし。」


俺は小さく呟く。


幸いにも、この地下都市は完全な死の世界ではなかった。


まず、水があった。


街の中央を流れる細い水路。


試しに飲んでみたが、腹を壊すこともない。


むしろ、森の湧き水と変わらないほど綺麗だった。


「地下なのに川か……。」


見上げても天井しかない。


なのに、水はどこから来ているのだろう。


「まぁ、考えてもしょうがないか。」


飲める。


それだけで十分だった。



次は寝床だ。


崩れていない建物を探し、壁が三方残っている小屋を見つけた。


雨風はない。


夜露もない。


奴隷商の檻より、ずっと快適だった。


壊れた机を集めて薪にする。


持っていた鍋を置く。


森で拾った木の実を煮る。


探せばキノコ位ありそうだな。


干し肉のストックはまだあるか…


「当分いきていけそうだな。」


誰に言うでもなく笑った。


ここ数年。


まともな家に住んだことなんてない。


外敵をあまり気にせず落ち着けた夜も少ない。


幸い、他の気配が何もない。


案外、ここは悪くない。



探索も始めた。


街は広かった。


見たことのない建物。


崩れた塔。


用途の分からない部屋。


そして――。


「……文字?」


壁に埋め込まれた棚の中。


そこに、一冊の手記が残されていた。


紙は黄ばんでいる。


だが。


書かれている文字を見て、俺は固まった。


「……日本語?」


間違いない。


俺の知っている文字だった。


急いでページをめくる。



『やはり私のこれは夢ではなかった。』


そこで文章は途切れていた。


次のページ。


『ここは――』


そこから先は破れている。


「……なんだこれ。」


誰が書いた?


どうして日本語なんだ?


この世界に俺以外の日本人がいた?


頭の中に疑問が溢れる。


さらにページをめくる。


『神の果実アンブロシア』


『精製方法の確立には――』


またそこで終わっていた。


「アンブロシア……?」


聞いたことがない。


アイテムか?


それとも食べ物か?


分からない。


手記は途中からほとんど読めなくなっていた。


破れている。


あるいは、文字そのものが消えている。


そして。


最後の方のページに、一つだけ読める文章があった。


 『アルカディアは在る』


そこから先はなくなっていた。



手記を閉じる。


そして、ため息をついた。


「……なんか、面白くなってきたな。」


帰れるかも分からない。


ここが何なのかも分からない。


それでも。


冒険だけは昔と変わらない。


知らない場所。


知らない謎。


そういうものを前にすると、少しだけ胸が躍ってしまう。


「俺もたいがい、ゲーム脳だな。」


苦笑する。


ふと。


視線の先に、奇妙なものが見えた。


白い扉。


他の建物の扉とは明らかに違う。


まるで、一枚の板をそのまま立てたような造り。


「……なんだあれ。」


近付いてみる。


取っ手もない。


鍵穴もない。


押しても。


引いても。


びくともしない。


「開かない……か。」


少しだけ興味はあった。


だが。


今は、生きることの方が先だ。


「まぁ、そのうちだな。」


俺は踵を返した。



寝床へ戻る。


鍋を火にかける。


静かな時間だった。


誰もいない。


何もない。


けれど。


不思議と寂しくはなかった。


その時。


ゴト……。


「……?」


何かが倒れる音。


遠い。


街のどこかだ。


耳を澄ます。


しばらく静寂。


気のせいか?


そう思った時。


カラン。


今度は、はっきりと聞こえた。


「……。」


誰かいる。


この遺跡に。


俺以外の何かが。


腰の剣に手を添える。


しばらく考え。


そして立ち上がった。


「……面倒事の予感しかしない。」


そう呟きながら。


俺は音のした方へと歩き出した。


読んでいただきありがとうございます。


面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ