第八話 奈落の底へ
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
雨だった。
この世界に来て四年。
俺は相変わらず、雨が嫌いだった。
冷たいし、じめじめする。
何より――思い出したくないことまで思い出してしまう。
森の中を、一機の中古機兵がゆっくりと歩いていた。
青く塗られていたはずの装甲は、ところどころ錆びている。
左肩には修理跡。
右足からは時々嫌な音が鳴る。
それでも。
俺にとっては宝物だった。
「これで、まともな依頼も受けられる。」
操縦席の中で、小さく笑う。
「雨風もしのげるし、寝床にも困らない。」
この世界に来て初めて。
ほんの少しだけ、未来が見えた気がした。
奴隷商に二度売られた。
信用していた人間にも裏切られた。
食うものもなくて、何度も死にかけた。
それでも。
ここまで来た。
「……よし。」
操縦桿を握る。
「試してみるか。」
ゲーム時代。
俺がよく使っていた戦法がある。
結界突撃。
結界を何重にも張り、体当たりするだけの単純な戦法。
だが、これが案外強い。
パワーもスピードも耐久も
正直全然足りない機体だが
幸いにも俺には森で拾った
光る石がある。
それを背後で爆発させて瞬発力を得る。
「ちょっと怖いけど、再現は出来そうだな。」
慣れておかなければ。
今後、命を預ける相棒になる機体なのだ。
俺は機兵を走らせた。
「うおっ!」
ドンッ!
木にぶつかる。
「いてぇ!」
もちろん痛いのは俺じゃない。
でも、衝撃は伝わる。
もう一度。
ガン!
今度は岩。
「……難しいな。」
思った以上に機体の癖が強い。
それでも、少しずつ感覚を掴んでいく。
「もう一回!」
加速。
結界展開。
そして――。
ドゴォン!!
「……え?」
岩が、砕けた。
いや。
違う。
砕けたのではない。
岩の向こうに。
巨大な空洞があった。
「ちょっ――」
地面が消える。
機体ごと。
俺は奈落へと落ちていった。
◇
どれくらい気を失っていたのか。
「……う。」
目を開ける。
暗い。
静かだ。
「生きてる……。」
まず、それを確認する。
次に。
機体。
動く。
よかった。
「今度、操縦席のクッションを改善しよう…。」
そして、周囲を見まわす。
「……なんだここ。」
言葉を失った。
巨大な空間。
石造りの建物。
見たこともないほど広い地下空間。
遥か上空にすごく小さな穴が光って見える
おそらくはあそこから落ちたのだろう…。
目が慣れるころには少し岩肌が光って見えることに気が付く。
周りを改めて見まわした。
一つの街のようだった。
「遺跡……か?」
機体を降りる。
静かすぎる。
誰もいない。
ほとんど風化している。
かすかに人が暮らしていた痕跡だけは残っている。
壊れた机。
崩れた建物。
そして。
見たことのない文字。
「なんだここ……。」
未知の発見に帰れない事など忘れてしまっていた。
そして、俺は知らなかった。
この時。
ここが。
自分の人生を大きく変える場所になることを。
そして。
数日後。
ここで二人のエルフと出会うことを。
まだ何も知らなかった。
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