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第三話 畑という名の何か

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

第一章 第三話

畑という名の何か


 翌朝。


 リアは庭から聞こえる物音で目を覚ました。


 窓を開ける。


 カイルがいた。


 朝日を浴びながら畑を眺めている。


 真剣な顔だった。


 まるで戦場を前にした兵士のようだ。


「何してるの?」


 声を掛ける。


 カイルはゆっくり振り返った。


「リアさん」


 そして。


 畑へ視線を戻す。


「これ」


「うん」


「畑じゃないです」


「うん」


 リアも同意だった。


 昨日は暗くて分からなかった。


 だが朝日に照らされた畑は酷かった。


 雑草。


 雑草。


 雑草。


 野菜。


 雑草。


 雑草。


 果物らしき何か。


 雑草。


 畑というより自然だった。


 その時。


 後ろから欠伸が聞こえる。


「おはよう」


 レンだった。


 寝癖が酷い。


 カイルが恐る恐る聞く。


「レンさん」


「ん?」


「何年育ててるんですか?」


「五年くらい」


 沈黙。


 リアもカイルも黙った。


 五年。


 それでこれ。


 逆に凄い。


「豊作だった年とか」


 リアが聞く。


「無いな」


「無いんですか」


「無い」


 即答だった。


 レンは畑を見る。


「でも今年は行ける気がする」


「去年も言いました?」


「言った」


 リアは吹き出した。


 カイルも笑いそうになる。


 レンだけ真面目だった。


「今年は違う」


「何がです?」


「勘」


 駄目だこの人。


 リアはそう思った。



 カイルはゆっくり畑へ入る。


 土を触る。


 葉を見る。


 根元を見る。


 しばらくして。


 小さく息を吐いた。


「どうだ?」


 レンが聞く。


 カイルは少し悩む。


 失礼にならない言い方を探している。


「……頑張ったんですね」


 結局リアと同じ答えになった。


 レンは納得したように頷いた。


 褒められたと思っている。


 幸せな人だった。


 その後。


 カイルは黙々と作業を始めた。


 雑草を抜く。


 土を整える。


 不要な枝を切る。


 レンはその様子を見ていた。


「詳しいんだな」


「少しだけです」


 カイルは答える。


「昔教わったので」


 スラムの話だった。


 リアも知っている。


 食べ物を育てられる人間は強い。


 それだけで生存率が上がる。


 だから教わる機会もある。


 レンは感心したように頷いた。


「すごいな」


「そんなことないです」


「俺できないし」


 カイルは少し困った顔になった。


 出来ない。


 というより。


 やっていないだけだと思う。


 だが言わない。


 恩人だからだ。


 昼頃。


 カイルは畑仕事を終えた。


 リアは見て驚いた。


「別物じゃない」


 整っている。


 昨日よりずっと畑に見える。


 レンも驚いていた。


「おお」


 本当に感心している。


「何か増えた気がする」


「増えてません」


 カイルは即答した。


 レンは不思議そうだった。



 その時、遠くで鳥が飛び立つ。


 森の風が吹く。


 リアは周囲を見回した。


 静かだった。


 本当に静かだ。


 街なら。


 怒鳴り声。


 喧嘩。


 酔っ払い。


 荷車。


 人混み。


 常に何かが聞こえる。


 ここには無い。


 風と鳥だけ。



 リアはふと聞いた。


「レンさん」


「ん?」


「何で森なんですか?」


 昨日も聞いた。


 静かだからと言われた。


 だが。


 それだけではない気がした。


 レンは少し考えた。


 それから。


 珍しく真面目な顔をした。


「死にかけたから」


 リアは黙る。


「街で?」


「街で」


 レンは短く答えた。


「何回も」


 それだけだった。


 詳しく話す気は無いらしい。


 だが。


 リアには何となく分かった。


 自分と同じだ。


 裏切られた。


 騙された。


 奪われた。


 そんな経験がある。


 だから。


 森へ来た。


「ここなら」


 レンが続ける。


「魔獣は来るけど」


「はい」


「人間はあんまり来ない」


 リアは苦笑した。


 確かに。


 それは魅力的かもしれない。



 夕方。


 三人で夕食の準備をしていた。


 その時だった。


 ドォン!!


 突然。


 外から凄まじい音が響く。


 家が揺れた。


「なっ!?」


 リアが立ち上がる。


 剣を掴む。


 カイルも青ざめた。


 だが。


 レンだけが落ち着いていた。


「ああ」


 慣れた様子で立ち上がる。


「来たか」


「何がです!?」


 レンは窓の外を指差した。


 三人で外を見る。


 そこには。


 巨大な猪型魔獣が倒れていた。


 結界の外。


 完全に気絶している。


 いや。


 死んでいた。


 リアは絶句する。


「え……」


 レンは平然と言った。


「晩飯だな」


 リアは理解した。


 この人が森に住みたがる理由を。


 少しだけ。


 本当に少しだけだが。


 理解してしまった。


 だから余計に怖かった。

【エターナルWiki No.002】


■世界樹教 最高神オベロンを祭る


大陸最大宗教。代々「聖女オフィーリア」に選ばれた人物が象徴であり、協会のトップを務める。


ほぼ全ての人類が信仰する。


■教義


・人を助けるべし


・世界樹に感謝するべし


・魔獣から世界を守るべし


■豆知識


神殿騎士は機兵を運用することでも知られる。


読んでいただきありがとうございます。


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