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第四話 鉄の巨人

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

ガシャン。


ガシャン。


重い足音が響く。


暗い通りの向こう。


そこに、二つの赤い光が浮かんでいた。


「お、お姉ちゃん……。」


ツバキの手が震えている。


私の服を掴むその力も、いつもより強かった。


私だって怖い。


逃げたい。


でも。


足が動かない。


目の前の存在が、あまりにも異質だった。


鉄。


そう、鉄だ。


人の形をしている。


でも人ではない。


頭。


腕。


脚。


すべてが黒い金属でできている。


それがゆっくりと、こちらへ歩いてくる。


ガシャン。


ガシャン。


「……ゴーレム?」


思わず呟く。


精霊術で作られる土人形とは、まるで違う。


前の世界で見た、SFのロボットに近い。


そして。


何より。


意志が宿るようにに見えた。


赤い目が、じっと私たちを見ている。


「お姉ちゃん……。」


「……大丈夫。」


大丈夫じゃない。


でも、そう言うしかなかった。



逃げなきゃ。


そう思って、私は後ろへ一歩下がる。


すると。


ゴーレムも、一歩前へ出た。


「ひっ……。」


ツバキが小さく悲鳴を上げる。


まずい。


追ってくる。


私は周囲を見渡した。


隠れる場所はない。


逃げ道もない。


そして。


私たちには、戦う力もない。


首輪のせいで精霊術はまともに使えない。


もし使えたとしても、今の私には大きな精霊を呼ぶ余力はなかった。


ここまで歩いてきた疲れ。


空腹。


緊張。


それらが、じわじわと身体を蝕んでいた。


それでも。


私はツバキの前へ立つ。


「お姉ちゃん……?」


「後ろにいて。」


「でも……。」


「いいから。」


小さく震える手を握る。


守らなきゃ。


この子だけは。


私はお姉ちゃんだから。



ガシャン。


ガシャン。


鉄の巨人が止まる。


十歩ほど先。


赤い瞳が、私たちを見ている。


不気味だった。


まるで、何かを考えているみたいに。


「……。」


沈黙。


動かない。


でも。


それが余計に怖かった。


私は意を決して、首輪に触れる。


「精霊よ……。」


赤い宝石が、微かに光る。


しかし。


何も起きない。


「……っ。」


やっぱり。


うまくいかない。


少しだけ。


本当に少しだけ。


風が吹いた。


それだけだった。


私は唇を噛む。


「お願い……。」


「お願いだから……。」


もう一度。


力を込める。


その瞬間。


ズキン。


頭が痛む。


視界が揺れる。


「う……。」


「お姉ちゃん!」


膝をつく。


だめだ。


力が出ない。


精霊たちの声も、遠い。



すると。


ガシャン。


鉄の巨人が、一歩近付いてきた。


「……!」


終わった。


そう思った。


「お姉ちゃん!」


ツバキが私の前へ飛び出す。


小さな身体を精一杯広げて。


私を庇うように。


「だめ……!」


「お姉ちゃんを……。」


声が震えている。


足も震えている。


それでも。


ツバキは逃げなかった。


「お姉ちゃんを……いじめるな……!」


小さな両手を前へ出す。


涙を流しながら。


必死に。


私を守ろうとしていた。



鉄の巨人は止まった。


動かない。


ただ。


赤い目だけが、じっとツバキを見ている。


静寂。


誰も動かない。


時間が止まったみたいだった。


「……ツバキ。」


「お姉ちゃん……。」


私は立ち上がろうとする。


でも。


身体に力が入らない。


頭がぼんやりする。


限界だった。


ここ数日の疲れ。


空腹。


緊張。


全部が一気に押し寄せてくる。


意識が遠のいていく。


だめだ。


立たなきゃ。


妹を守らなきゃ。


私は――


お姉ちゃんだから。


壁に手をつく。


そして。


ゆっくりと顔を上げた。


目の前には。


鉄の巨人。


赤い瞳。


得体の知れない怪物。


私の視界が揺れる。


意識が薄れていく。


その時。


ふと、頭の中に一つの考えが浮かんだ。


もし。


もしも。


操っている誰かがいるのなら。


ゲームを始めた時に見たイラスト。


鉄の巨人に乗る人々の国。


確か――。


人類の国。


そんな設定があった気がする。


もしかしたら。


もしかしたら、この怪物の向こうにいるのは。


私と同じ――。


人間なのかもしれない。


私は震える手で、壁へと指を伸ばした。


読んでいただきありがとうございます。


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