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第三話 地下都市

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。


静かだった。


あまりにも静かだった。


足音だけが、石畳の道に小さく響く。


カツ……。


カツ……。


「お姉ちゃん……。」


「うん。」


私は、繋いだツバキの手を握り返した。


地下。


そこは地下のはずなのに、見上げるほど高い天井があり、淡い光が街全体を照らしている。


石造りの建物。


大きな塔。


広い道。


まるで一つの都市。


だけど――。


「誰も……いない。」


そう。


人の気配だけがなかった。


まるで、時間だけが止まってしまったかのように。



ぐぅぅ……。


「……。」


「……。」


お腹が鳴る。


私は思わず苦笑した。


「お腹、空いたね。」


「うん……。」


私も限界だった。


森へ入る前からほとんど何も食べていない。


それに、転移した時の光。


あれだけでずいぶん体力を使った気がする。


「何か探そう。」


「うん。」



二人で建物を回る。


しかし、どこも空っぽだった。


机。


椅子。


棚。


どれも古く、誰も使っていない。


だが。


「……あれ?」


私は足を止めた。


「どうしたの?」


「これ……。」


 机の上。


そこに、一つの器が置いてあった。


綺麗だった。


古びてもいない。


それどころか――。


まだ、少し湿っている。


「……。」


「……。」


二人で顔を見合わせる。


「誰か……いる?」


「……かもしれない。」


胸がざわつく。


さらに奥へ進む。


すると。


「お姉ちゃん!」


ツバキが小さく声を上げた。


棚の上。


そこに布袋が置かれていた。


中を見る。


パンの欠片。


少しだけ残った干し肉。


そして、空になった水筒。


「……。」


「食べ物……。」


私は息を呑んだ。


古代遺跡に、こんなものがあるはずがない。


つまり。


「……誰かの、だよね。」


「うん。」


誰かがいる。


それだけは分かった。


でも。


私たちのお腹は限界だった。


ツバキが私を見上げる。


「お姉ちゃん……。」


「……。」


少し考える。


そして。


「……ごめんなさい。」


誰に向かってかも分からない謝罪を口にする。


「少しだけ……いただこう。」


「うん……。」


二人でパンを分け合う。


一口。


また一口。


久しぶりに感じる、小麦の味。


「……おいしい。」


思わず涙が出そうになった。


ツバキも、夢中で食べている。


「……よかった。」


「うん。」


少しだけ。


本当に少しだけ。


生きられる気がした。


ツバキが、最後のパンを飲み込む。


「……ごちそうさまでした。」


私も小さく手を合わせた。


「……誰かの物だったら、ごめんなさい。」


返事はない。


当たり前だ。


この街には、誰もいない。


……はずだった。


その時。


ガシャン。


「……!」


私は立ち上がった。


今。


音がした。


遠く。


建物の外。


ガシャン。


ガシャン。


重い何かを引きずるような音。


「お姉ちゃん……。」


ツバキが震えながら私の服を掴む。


「静かに。」


私は妹を抱き寄せた。


音は、ゆっくりと近づいてくる。


一歩。


また一歩。


まるで、こちらを探しているように。


ガシャン。


ガシャン。


暗い通りの先。


そこに、二つの赤い光が浮かんだ。


「……っ。」


息を呑む。


人じゃない。


獣でもない。


大きい。


人の何倍もある。


鉄の塊。


そして。


ゆっくりと。


その赤い瞳が、こちらを向いた。


「お姉ちゃん……。」


ツバキの声が震える。


私も、声が出なかった。


逃げなきゃ。


そう思うのに、足が動かない。


鉄の巨人は。


ゆっくりと。


私たちへ向かって歩いてきていた。



読んでいただきありがとうございます。


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