第二話 雨の森
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。
翌朝。
雨はまだ降り続いていた。
灰色の空。
湿った土の匂い。
村の誰もが、私たちを避けるように目を逸らしていた。
……三日後。
私達は、ここからいなくなる。
その意味は分からない。
でも。
戻ってきた人がいないことだけは知っていた。
「お姉ちゃん。」
「ん?」
「今日のご飯、あるかな?」
ツバキが私の袖を引っ張る。
私は笑った。
「……あるよ。」
「探そう。」
「うん!」
本当は何もない。
でも、何もしないで待っているなんて嫌だった。
◇
森へ入る。
里の周りに広がる、暗い森。
私たちエルフにとって唯一の食料庫。
だけど、最近は木の実もほとんど残っていない。
「ないね……。」
「うん……。」
ツバキのお腹がぐぅ、と鳴った。
「……。」
「……。」
二人で顔を見合わせて、小さく笑う。
「今日は外れかな。」
「お姉ちゃん。」
「なに?」
「私、お花でも食べられるよ?」
「食べちゃだめ。」
「えぇ……。」
少しだけ。
本当に少しだけ。
気持ちが軽くなった。
◇
その時だった。
ゴロゴロ……
遠くで雷が鳴る。
雨が強くなる。
「うわっ。」
「お姉ちゃん。」
「少し雨宿りしよう。」
「うん。」
私たちは、森の奥へと足を向けた。
すると。
「……あれ?」
見慣れないものが目に入る。
木々の間。
苔に覆われた石。
まるで建物の一部のような。
「こんなの……あったっけ?」
私は近づく。
ツバキも後ろからついてくる。
「変なの。」
石には、不思議な模様が彫られていた。
円。
線。
見たこともない文字。
そして中央に。
透明な結晶のようなものが埋め込まれている。
「綺麗……。」
ツバキが呟く。
私は、なんとなく手を伸ばした。
すると。
ピシッ。
首輪の宝石が、微かに光る。
「……え?」
同時に。
石碑の模様が光を帯び始めた。
「お姉ちゃん?」
「離れて!」
ゴォォォ……
地面が震える。
足元に、光の輪が広がっていく。
「な、なにこれ!?」
「お姉ちゃん!」
ツバキが泣きそうな顔でしがみついてくる。
逃げようとした。
でも。
身体が動かない。
眩しい。
熱い。
そして。
世界が白く染まった。
◇
――どれくらい経っただろう。
「……う……。」
冷たい床。
私はゆっくりと目を開けた。
「ここ……。」
暗い。
天井が高い。
石造りの広い空間。
見たことのない場所。
「ツバキ!」
「う……。」
すぐ隣で、妹が目を覚ます。
「お姉ちゃん……。」
「よかった……。」
私は思わず抱きしめた。
「怖かった……。」
「うん……。」
二人でしばらくそのままでいた。
やがて。
ツバキが顔を上げる。
「ここ、どこ?」
「……分からない。」
本当に分からなかった。
村でもない。
森でもない。
そして。
外でもない。
まるで。
地下のような場所。
その時だった。
パチッ。
遠くで光が灯る。
「……!」
「お姉ちゃん。」
「……うん。」
もう一つ。
また一つ。
光が順番に点いていく。
やがて。
巨大な通路が浮かび上がった。
その先には。
見たこともない建物。
塔。
橋。
そして。
無数の明かり。
「……街?」
私は、呆然と呟いた。
地下。
そこには。
一つの都市が眠っていた。
誰もいない。
静かな。
まるで時間が止まったような。
古代の街が。
「お姉ちゃん……。」
ツバキが私の服を掴む。
「……うん。」
私は妹の手を握った。
怖い。
でも。
ここにいるしかない。
もう、帰り道も分からない。
「……行こう。」
「うん。」
二人は。
静まり返った地下都市へ。
ゆっくりと足を踏み入れた。
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