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第二十二話 文字

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。

バルドの砦。


その一角。


辺境伯自ら用意した豪華な客室。


広い部屋の中には、穏やかな寝息だけが響いていた。


「……」


ベッドの上。


眠るリア。


銀の髪飾りを付けた栗色の髪。


シルフィネの中で気を失って以来、まだ目を覚まさない。


『リア様の容態は安定しています』


『問題ありません』


「そうか」


レンは小さく頷く。


ベッドの傍らで椅子に腰掛けたまま俯いた。


「……やっぱり」


「戦場に連れて行ったのは失敗だったかな」


「……」


「悪かったな」


レンはリアが


少しでも経験を積めばいいと思っていたが


本来こんな面倒な事はしない。


何故リアがずっと一緒なのか


自分でも分からない。


本来ならもう別々に活動してても不思議ではない。


(まぁ俺も、推しに似てる時点でほっとけないんだよなぁ……)



「お前がそんな顔するとはな」


バルドが苦笑した。


「生きて帰ってきたんだ」


「上出来だろ」


レオンも頷く。


「リアも無事だ」


「結果だけ見ればな」


「……」


「まぁそうだな」


レンは苦笑した。


「それより」


「今から言うことは」


「三人だけの秘密にしてくれ」


レンが、声のトーンを下げていった。


「なんだ?」


「俺たちは新人連合の連中と意思の疎通ができない」


「ああ」


「常識だな」


「でも考えてみろ」


「奴らの服」


「鎧」


「装飾」


「……」


「和だな」


「和だな」


レオンとバルドが同時に答える。


「そう」


「和なんだ」


「東方文化」


「俺たちの知る日本やアジア圏文化に近い」


「そして」


レンは小さく息を吐いた。


「奴らの公用語は」


「おそらく日本語だ」


「!?」


「!?」


二人の表情が固まる。


「何故そんなことが分かる!」


「居るんだよ」


「知り合いが」


「エルフのプレイヤーが二人」


「……は?」


「なんでそんな大事なこと黙ってた!」


バルドが食いつく。


「使いどころが難しい」


「下手すりゃ」


「患者扱いで」


「国賊となる」


「それは……」


レオンも納得した。



「だが」


「何故今なんだ?」


「日本語を使うとしても」


「結局」


「意思疎通できるのはプレイヤーだけだろ?」


「ああ。そうだな」


「俺の知ってる四人だけ……」


「いや」


「六人か」


「?」


「まぁ」


「細かい話だ」


「それより」


レンは二人を見る。


「知ったら」


「今みたいに戦えるか?」


「お前ら国の中枢だぞ」


「意志が少しでも揺らぐとまずい立場にあるのは自覚あるな?」


「……」


「……」


二人は黙る。


「相手にプレイヤーが居ても」


「やらなきゃ」


「やられるだけだ」


「そうだな」


レオンは静かに答えた。



「そのエルフとは」


「どう知り合った?」


「まぁ」


「たまたまだ」


「四年前かな」


「この世界に来て一年目」


「お互い弱くて」


「死にたくなくて」


「ある日」


「エルフが壁に文字を書いた」


「書いた?」


「……!」


レオンが目を見開く。


「そうか!」


「文字か!」


「ああ」


「言葉は全然分からない」


「でも」


「文字は分かる」


「俺たちなら」


「通じ合えた」


「ということか」


バルドは呆れた。


「なんだそれ」


「単純だな」


「そうでもない」


レンは首を横に振る。


「戦いの最中」


「防御を捨てて」


「相手に通じるかも分からない文字を書く」


「自殺行為だろ」


「……」


「確かにな」


「死ぬな」


レオンが小さく呟く。



「まぁ」


「そういう経緯で」


「向こうの事情も多少は知ってる」


「協力できる所はしたい」


「そうだな」


「敵意が無いなら」


「戦う理由もない」


「ただ」


「今は戦時中だ」


「この情報は」


「まだ出すべきじゃない」


「賛成だ」


「今はまだな」


三人の意見は一致した。



「それはそうと」


バルドが笑う。


「陛下がお前に会いたいそうだ」


「そうか」


「リアの回復を待って行くか?」


レンは眠るリアを見る。


「そうだな」


穏やかな寝顔を見て答える。


「しばらく」


「このままで居たい」


「そうか」


「なら」


「ゆっくりしていけ」


バルドは立ち上がった。


「おう」


「酒でも飲んでくる」


「俺も付き合う」


レオンも部屋を出ていく。



静かになった部屋。


レンは眠るリアの手を優しく握った。


「……」


「無茶するなって言ったのにな」


『マスター』


「ん?」


『リア様の脳波が安定しました』


『もうすぐ目を覚まされると思われます』


「そうか」


レンは安堵の息を漏らした。


読んでいただきありがとうございます。

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