第十九話 戦場の妖精王
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。
空に響く轟音。
赤き機竜グラム。
そして巨大な竜、牙竜。
激しい空中戦が続いていた。
だがその片腕には。
力なくぶら下がるシルフィネ。
「リア!」
「くっ!」
レオンは歯を食いしばる。
度重なる衝撃。
振動。
既に。
リアは操縦席で気を失っていた。
『リア様』
『リア様』
『返答してください』
『リア様』
ノアの声だけが虚しく響く。
◇
「ははは!」
牙竜は楽しそうに笑う。
「速いな!赤いの!」
グラムが翼を広げる。
音速で剣を振りかぶる。
しかし。
「ほれ」
「ほれ」
ガン!
シルフィネを振り回す。
「!」
レオンが剣を止める。
「卑怯な!」
牙竜にはレオンの言葉は金属音の様に
ノイズに聞こえている。
「当たるぞ?味方を斬ってみよ」
牙竜の言葉は咆哮として聞こえる。
アストラの兵士達には。
シルフィネを玩具のように振り回して
遊んでいるようにしか見えなかった。
「なんて奴だ……」
「悪魔か……」
◇
「くっ」
バルドは立ち上がる。
「休んでられねぇ」
ティラントへ向かう。
その時。
「?」
遠く機兵の残骸。
砕けた外装、その傍ら。
立ち上がる男が見えた。
「……!」
「無事だったか!」
思わず叫ぶ。
「レン!」
◇
レンは空を見上げる。
「……」
「流石に」
「出し惜しみしてる場合じゃないな」
拳を握る。
そして。
ペンギンの残骸に残った通信機。
「バルド!」
「少しの間」
「獣人の相手頼めるか!」
「おう!」
「任せろ!」
「レオン!」
「そのまま竜を牽制しろ!」
「了解した!」
二人は安堵した。
生きていた。
まだレンがいる。
◇
「どうする気だ?」
二人から問われる。
「ノア」
「リアは?」
『衝撃に耐えかねて気絶しています』
『命に別状はありません』
「そうか」
レンは息を吐く。
心を落ち着かせる。
静かに。
目を閉じる。
そして。
呟いた。
「来い」
「ネスト」
◇
ピシッ……
空間が割れる。
「!?」
「なんだ!?」
「空が!」
戦場全体が静まる。
亀裂の中から
黒い巨人の手。
まるで主人を迎えるように。
優しく。レンを包む
そしてそれは姿を現す。
黒い騎士。
魔核機。ネスト
◇
「なんだありゃ!?」
「どこから出てきた!?」
「魔核機か!?」
「知らん!」
兵士達も。
獣人達も。
誰一人。
理解できない。
現実感のない戦い。
その先の。
さらに理解不能な存在。
夢でも見ているのか。
そう思う光景だった。
◇
『ネスト』
『起動します』
「ノクターン」
「起動」
『光の長弓』
『起動します』
ネストが天へ手を掲げる。
すると。
光が収束して
巨大な長弓の形を成す。
まるで月光を編み込んだような。
神々しい弓。
戦場の誰もが息を呑む。
「綺麗……」
「なんだあれ」
「魔法か?」
「違う……」
「なんだ?」
◇
『距離補正』
『高度補正』
『座標補正』
「シルフィネに当てるなよ」
『了解しました』
「いけ」
『発射』
ビィィィィィ!!
一条の閃光が放たれる
◇
空。
「!」
牙竜はレオンとの攻防に夢中だった。
下を見ることすらない。
「面白い!赤いの!」
その時。
「!?」
シルフィネを持つ腕の
付け根がはじけ飛ぶ。
ズバァァァ!!
「ぐあぁぁぁ!!」
「なっ!?」
「何だ!?」
牙竜が動揺する。
「腕が!?」
「いつ!?」
「どこから!?」
◇
「今だ!」
レオンはその隙を見逃さなかった。
グラムは大剣を一閃。
「遅い!」
ズバァ!!
牙竜を吹き飛ばす。
「ぐあぁぁぁ!!」
◇
竜の腕から離れ、力なく落下するシルフィネ
先程まで地上にいた黒い騎士は
竜のすぐそばまで飛行して
シルフィネを両腕で抱くように抱えて受け止める。
ネストの背中には
オーロラのカーテンの様なものが
蝶の羽のように大きく噴き出している。
妖精。
光の羽。
幻想的な六枚の光翼。
「!」
「飛んだ!」
「魔核機が!」
「なんだあれ!」
「妖精……?」
誰もが見上げる。
妖精姫を抱えるその姿。
美しく、妖艶で、優しく。
気高く見えた。
大空へ。
静かに浮かび上がる。
誰しも。
同じものを思い浮かべた。
「妖精王……」
「妖精王様……」
「奇跡だ……」
◇
そして。
空中。
腕を失った牙竜。
何が起こったのか未だ混乱している
自分を襲った光が何所から来たのかを探す。
そして、自分の背後に
突如として現れた黒い人形。
光の翼。
そして、自分が今まで持っていた
玩具を奪われている。
「よう」
「遊びの時間は終わりだ」
牙竜は察したアイツがやったと。
瞳が見開かれる。
「……」
「なんだ、お前は」
突然現れたそれを見上げ理解と同時ににらみつける。
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