第十一話 赤き竜と狼鬼
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。
今から数か月前。
南部都市よりほど近い南の森。
その地では、一つの噂が冒険者達の間で広まっていた。
武器を使う大型魔獣。
すでに討伐へ向かった機兵部隊も幾つか壊滅。
危険度は急上昇し、ギルドでは最優先の危険依頼となりつつあった。
報酬も破格。
当然、それに目がくらんだ新人冒険者もいた。
◇
「やめとけ」
酒場。
数人の若い冒険者達へ声を掛けた男がいた。
黒髪。
旅人のような姿。
だが、その目は鋭い。
「命が惜しいならな」
「なんだよ、おっさん」
「俺たちは歴戦の猛者だぜ。」
「人数もいるし機兵も最新型だ。」
「俺たちが報酬取るのがそんなに気に入らねぇのか?」
笑う若者達。
男は肩をすくめる。
「好きにしろ」
「ただ」
「後悔するぞ」
◇
結局。
彼らは森へ向かった。
そして。
「で、でけぇ……」
機兵ほどもある爪痕。
倒された木々。
抉れた地面。
巨大な足跡。
そして。
森の奥から響く。
咆哮。
空気が震える。
鳥達が一斉に飛び立つ。
「ひっ!」
「帰るぞ!」
「無理だ!」
「こんなの!」
若者達は逃げ帰った。
誰一人として振り返ることなく。
◇
さらに別の日。
レオとリアもまた、この森を訪れていた。
そして。
「見られてる」
レオが呟く。
リアも同じ感覚を覚えていた。
何かいる。
だが姿が見えない。
嫌な気配だけが残る。
「帰ろう」
二人は森を後にした。
◇
その頃。
森の奥。
「ふむ」
巨大な影。
狼鬼であった。
「小さい戦士か」
レオ達が去っていく方向を見る。
「わずらわしい・・」
狼鬼の興味はもっと別にあった。
◇
数日前。
新人連合国。
狼鬼は我慢できなくなっていた。
世界樹。
豊かな土地。
小人達の国。
見てみたい。
知りたい。
その好奇心を抑えきれなかった。
「少し行ってくる」
止める者はいない。
止められる者もいない。
こうして狼鬼は秘宝「ゲート」を起動した。
◇
気付けば。
森だった。
「ほう」
狼鬼は歓喜した。
見たことのない果実。
見たことのない草花。
見たことのない魔獣。
「素晴らしい!」
数日は夢のようだった。
狩り。
食事。
昼寝。
また狩り。
「楽園ではないか!」
ところが。
ある日。
小人に見つかった。
さらに。
ここ数日。
今度は。
見たこともない鉄の巨人達まで襲ってくるようになった。
◇
「面倒だな」
ドガァン!!
一機。
鉄の巨人を殴り飛ばす。
バキバキと砕け散る機兵。
「またか」
一対一なら負ける気はしない。
だが。
奴らは群れる。
次から次へと現れる。
しかも、食えない。
明らかに作り物。
「くたびれもうけだ」
狼鬼は珍しく疲れていた。
食べ物はある。
体力も余裕。
だが。
何処かも分からない土地。
戻る方法も分からない。
定期的に襲ってくる巨人と小人。
終わりが見えない。
「……」
狼鬼は少しだけ後悔していた。
(早まったか)
◇
また一機。
巨人が現れる。
だが。
「む?」
狼鬼の目が細まる。
「……」
赤黒い。
巨大な竜。
「ほう!」
狼鬼の顔が変わる。
「竜人族か!?」
歓喜。
だがその竜は
彼の知る竜人とは違った。
冷たい光を放つその眼には生を感じず
ただ金属音がずっとその場に響く。
◇
赤黒き魔核機。
グラム。
その中で。
レオンが呟く。
「やはり獣人か」
報告は正しかった。
グラムと同じ程の体躯
手には、すべてを薙ぎ払うであろう大槍。
知性も感じる。
そして。
まごう事なき、人類の敵。
危険極まりない存在。
◇
「グォォォ!」
狼鬼が吠える。
『お前は竜人族か!』
だが。
「……」
レオンには咆哮にしか聞こえない。
そして。
レオンの言葉も。
狼鬼には理解できなかった。
ゲーム時代と同じ敵国プレイヤー。
出会えば必ず戦うレッドプレイヤー。
それが、現実に目の前にいる。
「やはり」
レオンは剣を抜いた。
「意思の疎通は難しいか」
そして。
静かに告げる。
「お前を放逐したら」
「この国が亡ぶ。」
「狩らせてもらう!」
◇
狼鬼は笑った。
「いい!」
言葉は分からない。
だが。
戦士だ。
それだけは分かる。
「来い!」
◇
激突。
槍。
剣。
衝撃。
森が揺れる。
木々が吹き飛ぶ。
巨大な咆哮。
火花。
炎。
そして。
竜。
「面白い!」
狼鬼は笑う。
久しぶりだった。
ここまで戦える相手。
◇
一方。
レオンも驚いていた。
(強い)
(バルド級か)
いや。
それ以上。
今まで戦ったどんな魔獣とも違う。
知恵。
技。
経験。
武。
全てが高水準。
わかってはいたが
これ程とは
◇
数時間。
戦いは続いた。
そして最後。
赤黒き竜の剣が狼鬼を貫いた。
◇
倒れる。
空が見える。
「……」
狼鬼は笑った。
「強いな」
声は届かない。
だが、満足だった。
狼鬼は思う。
(俺は……)
(世界を知らなさ過ぎた……)
たかが小人、そう思っていた。
家畜、そう思っていた。
だが違った、強者はいた。
機械の竜の胸部が開き
こちらを見ている赤い髪の小人と目が合う。
「面白い……」
意識が落ちていく。
時系列では、2章4話~5話参照です。
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