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第十一話 赤き竜と狼鬼

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。

 今から数か月前。


 南部都市よりほど近い南の森。


 その地では、一つの噂が冒険者達の間で広まっていた。


 武器を使う大型魔獣。


 すでに討伐へ向かった機兵部隊も幾つか壊滅。


 危険度は急上昇し、ギルドでは最優先の危険依頼となりつつあった。


 報酬も破格。


 当然、それに目がくらんだ新人冒険者もいた。



「やめとけ」


 酒場。


 数人の若い冒険者達へ声を掛けた男がいた。


 黒髪。


 旅人のような姿。


 だが、その目は鋭い。


「命が惜しいならな」


「なんだよ、おっさん」


「俺たちは歴戦の猛者だぜ。」


「人数もいるし機兵も最新型だ。」


「俺たちが報酬取るのがそんなに気に入らねぇのか?」


 笑う若者達。


 男は肩をすくめる。


「好きにしろ」


「ただ」


「後悔するぞ」



 結局。


 彼らは森へ向かった。


 そして。


「で、でけぇ……」


 機兵ほどもある爪痕。


 倒された木々。


 抉れた地面。


 巨大な足跡。


 そして。


 森の奥から響く。


 咆哮。


 空気が震える。


 鳥達が一斉に飛び立つ。


「ひっ!」


「帰るぞ!」


「無理だ!」


「こんなの!」


 若者達は逃げ帰った。


 誰一人として振り返ることなく。



 さらに別の日。


 レオとリアもまた、この森を訪れていた。


 そして。


「見られてる」


 レオが呟く。


 リアも同じ感覚を覚えていた。


 何かいる。


 だが姿が見えない。


 嫌な気配だけが残る。


「帰ろう」


 二人は森を後にした。



 その頃。


 森の奥。


「ふむ」


 巨大な影。


 狼鬼であった。


「小さい戦士か」


 レオ達が去っていく方向を見る。


「わずらわしい・・」


 狼鬼の興味はもっと別にあった。



 数日前。


 新人連合国。


 狼鬼は我慢できなくなっていた。


 世界樹。


 豊かな土地。


 小人達の国。


 見てみたい。


 知りたい。


 その好奇心を抑えきれなかった。


「少し行ってくる」


 止める者はいない。


 止められる者もいない。


 こうして狼鬼は秘宝「ゲート」を起動した。



 気付けば。


 森だった。


「ほう」


 狼鬼は歓喜した。


 見たことのない果実。


 見たことのない草花。


 見たことのない魔獣。


「素晴らしい!」


 数日は夢のようだった。


 狩り。


 食事。


 昼寝。


 また狩り。


「楽園ではないか!」


 ところが。


 ある日。


 小人に見つかった。


 さらに。


 ここ数日。


 今度は。


 見たこともない鉄の巨人達まで襲ってくるようになった。



「面倒だな」


 ドガァン!!


 一機。


 鉄の巨人を殴り飛ばす。


 バキバキと砕け散る機兵。


「またか」


 一対一なら負ける気はしない。


 だが。


 奴らは群れる。


 次から次へと現れる。


 しかも、食えない。


 明らかに作り物。


「くたびれもうけだ」


 狼鬼は珍しく疲れていた。


 食べ物はある。


 体力も余裕。


 だが。


 何処かも分からない土地。


 戻る方法も分からない。


 定期的に襲ってくる巨人と小人。


 終わりが見えない。


「……」


 狼鬼は少しだけ後悔していた。


(早まったか)



 また一機。


 巨人が現れる。


 だが。


「む?」


 狼鬼の目が細まる。


「……」


 赤黒い。


 巨大な竜。


「ほう!」


 狼鬼の顔が変わる。


「竜人族か!?」


 歓喜。


 だがその竜は


 彼の知る竜人とは違った。


 冷たい光を放つその眼には生を感じず


 ただ金属音がずっとその場に響く。



 赤黒き魔核機。


 グラム。


 その中で。


 レオンが呟く。


「やはり獣人か」


 報告は正しかった。


 グラムと同じ程の体躯


 手には、すべてを薙ぎ払うであろう大槍。


 知性も感じる。


 そして。


 まごう事なき、人類の敵。


 危険極まりない存在。



「グォォォ!」


 狼鬼が吠える。


『お前は竜人族か!』


 だが。


「……」


 レオンには咆哮にしか聞こえない。


 そして。


 レオンの言葉も。


 狼鬼には理解できなかった。


 ゲーム時代と同じ敵国プレイヤー。


 出会えば必ず戦うレッドプレイヤー。


 それが、現実に目の前にいる。

 

「やはり」


 レオンは剣を抜いた。


「意思の疎通は難しいか」


 そして。


 静かに告げる。


「お前を放逐したら」


「この国が亡ぶ。」


「狩らせてもらう!」



 狼鬼は笑った。


「いい!」


 言葉は分からない。


 だが。


 戦士だ。


 それだけは分かる。


「来い!」



 激突。


 槍。


 剣。


 衝撃。


 森が揺れる。


 木々が吹き飛ぶ。


 巨大な咆哮。


 火花。


 炎。


 そして。


 竜。


「面白い!」


 狼鬼は笑う。


 久しぶりだった。


 ここまで戦える相手。



 一方。


 レオンも驚いていた。


(強い)


(バルド級か)


 いや。


 それ以上。


 今まで戦ったどんな魔獣とも違う。


 知恵。


 技。


 経験。


 武。


 全てが高水準。


 わかってはいたが


 これ程とは



 数時間。


 戦いは続いた。


 そして最後。


 赤黒き竜の剣が狼鬼を貫いた。



 倒れる。


 空が見える。


「……」


 狼鬼は笑った。


「強いな」


 声は届かない。


 だが、満足だった。


 狼鬼は思う。


(俺は……)


(世界を知らなさ過ぎた……)


 たかが小人、そう思っていた。


 家畜、そう思っていた。


 だが違った、強者はいた。


 機械の竜の胸部が開き


 こちらを見ている赤い髪の小人と目が合う。


「面白い……」


 意識が落ちていく。



時系列では、2章4話~5話参照です。

読んでいただきありがとうございます。

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