表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
69/87

第九話 妖精王と王女様

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。

「いやぁ!」


「素晴らしかった!」


「実に素晴らしい!」


上機嫌だった。


アレス六世は豪快に笑いながら、レンの肩をばんばん叩く。


「特にあの機兵!」


「最高だ!」


「愛らしい!」


「強い!」


「飛ぶ!」


「余は感動した!」


「はぁ……」


レンは困った顔で頭を掻く。


横ではリアがぺこりと頭を下げていた。


栗色の髪に銀の髪飾り。


その姿に家臣達も興味深々だ。


「こちらが妖精姫様ですか」


「い、いえ!」


「そんな立派なものじゃ……」


『私の方が可愛いです』


ノアが不満そうに腕を組む。


「そうだな」


『私です』


「そうだったな」



「それでだ!」


アレス六世が真面目な顔になった。


「譲れ!」


「何をです?」


「ペンギンだ!」


「え?」


「父上?」


「代わりにエレノアをやろう!」


「父上!?」


エレノアが真っ赤になる。


「我が言うのもなんだが、器量よしで優秀だ。」


「文句あるまい!」


「はぁ……」


レンは困ったように笑った。


「いやぁ」


「ありがたいお話なんですが」


「ちょっと急というか……」


「そうか!」


「では領地と侯爵位を授けよう!」


「1つの街を支配できる!専用工房だって夢ではないぞ!」


「おぬしに富と最高の栄誉を用意できる!」


「……」


「……」


「それと!」


「王国中の機兵!」


「全部お前の物だ!」


「!!」


レンの顔が変わる。


バルド。


「食いついた」


レオン。


「食いついたな」


「軍のも?」


「うむ!」


「騎士団のも?」


(いや、だめだろう?)


「うむ!」


「旧式も?」


「うむ!」


「倉庫の奥のも?」


「うむ!」


「壊れてるのも?」


「うむ!」


「……」


(全部……)


(見放題……)


(改造し放題……)


(天国では?)


「レンさん?」


リアが不安そうに見上げる。


「……」


「いやぁ」


「うーん」


「その……」


「考えときます」


「おお!」


アレス六世が満足そうに頷いた。


「良い返事を待っておる!」


「ははは……」


完全に逃げた。



その様子を見ていたエレノアは。


(よかった……)


と少し安心していた。


レンも。


リアも。


優しそうな人達だった。


怖くない。


それだけで十分だった。


しかし。


(……バルド様)


胸の奥が少しだけ痛む。



謁見が終わり。


夜の酒場。


「悪かったな」


バルドが豪快に笑う。


「陛下も悪気はねぇありゃ建前だ。」


「分かってる」


「ペンギンが欲しいわけがない。国益だろ?」


レオンも頷いた。


「価値があるものは囲い込む」


「それが国だ」


「別に怒ってない」


レンは酒を飲みながら笑う。


「ただ」


「俺」


「国経営シミュレーションとか」


「貴族ロールプレイとか」


「興味ないんだ」


「ぶはっ!」


バルドが吹き出した。


「もうゲームじゃねぇぞ!」


「似たようなもんだろ?」


レオンも苦笑した。


「確かに、お前には向いてなさそうだな」


「だろ?」


「面倒臭い」


「ああ、俺たちもめんどくさくなる時はある。」


「でも」


レオンが真面目な顔になる。


「そもそも、俺たち元の世界に帰る事考えてないだろ?」


「そうだな。」


「確かに。」


「国の存続は俺たちの居るこの世界の為にもなる。」


「まぁ、ゲームの時の世界設定で言えば」


「俺たちそのうち滅ぶしな。」


「軽く言うな、滅びに向かっている・・だ。」


「サービス終了時点で」


「世界がどうなるのかわかってなかっただろ?」


「アポカリオンなんぞ出てきやがったから」


「もうすでに知ってるのと違うけどな。」


「それに、聖都の件。」


「今更だが、お前何かしただろ?」


「別に」


 レンは手元の酒を少しあおる。


「それで、エレノアはどうするつもりだ?」


レオンがレンの正面を向きなおし真面目に聞く。


「どうもこうもないだろ?俺は今のままがいい。」


「陛下はお前を気に入っていたぞ。」


「そうか」


「なんで?」


「まぁ、ペンギンで」


「そうか」


「そうだ」


三人は笑った。



一方。


庭園。


「申し訳ありません」


エレノアが頭を下げた。


「え?」


リアが慌てる。


「私なんかが」


「間に入るようなことになってしまって」


「??」


「貴女がいらっしゃるのに」


「私が嫁ぐことになってしまって……」


「……え?」


リア。


固まる。


「妖精王の伴侶」


「妖精姫」


「そうお聞きしましたので」


「ええぇぇ!?」


顔が真っ赤になる。


「ち、違います!」


「そうなんですか?」


「違います!」


「違う……はずです!」


「はず?」


「うぅ……」


顔を真っ赤にして俯く。


しかし。


少しだけ。


嫌そうではなかった。


「ふふ」


エレノアが笑った。


「仲が良いのですね」


「そうでしょうか」


「羨ましいです」


「エレノア様は?」


「私ですか?」


エレノアは空を見上げた。


「ここだけの話お慕いしている方がおります」


「まぁ!」


「誰ですか?」


「秘密です」


「気になります!教えてください!」


「駄目です」


リアは食いついた。


「秘密です」


「えー」


二人は笑った。


「きっと」


リアが微笑む。


「優しくて」


「強い人なんですね」


「はい」


エレノアも微笑んだ。


「少し不器用で」


「豪快で」


「よく笑う方です」


「素敵です!」


「そうでしょうか」


「はい!」


「私は」


リアも少し照れながら言った。


「レンさんみたいな人、嫌いじゃないですよ」


「……!」


エレノアが目を丸くする。


「え?」


「あ」


「違います!」


「その!」


「そういう意味じゃなくて!」


「ふふ」


「うふふ」


二人の笑い声が夜風に溶けていく。



その頃。


「全部の機兵かぁ……」


レンはまだ悩んでいた。


「まだ悩んでるのか!」


「馬鹿!」


バルドが大笑いする。


「全部だぞ?」


「気持ちは分かる」


レオンも笑う。


「お前本当にブレないな」


「男のロマンだからな」


『レン様』


「ん?」


『浮気です』


「何が?」


『私がいるのに』


「そういう意味じゃない」


『私です』


「そうだったな」


窓の外。


静かな夜。


しかし。


遺跡都市では。


誰も知らぬまま。


数百年ぶりの戦争の幕が。


静かに上がろうとしていた。



読んでいただきありがとうございます。

面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ