第九話 妖精王と王女様
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。
「いやぁ!」
「素晴らしかった!」
「実に素晴らしい!」
上機嫌だった。
アレス六世は豪快に笑いながら、レンの肩をばんばん叩く。
「特にあの機兵!」
「最高だ!」
「愛らしい!」
「強い!」
「飛ぶ!」
「余は感動した!」
「はぁ……」
レンは困った顔で頭を掻く。
横ではリアがぺこりと頭を下げていた。
栗色の髪に銀の髪飾り。
その姿に家臣達も興味深々だ。
「こちらが妖精姫様ですか」
「い、いえ!」
「そんな立派なものじゃ……」
『私の方が可愛いです』
ノアが不満そうに腕を組む。
「そうだな」
『私です』
「そうだったな」
◇
「それでだ!」
アレス六世が真面目な顔になった。
「譲れ!」
「何をです?」
「ペンギンだ!」
「え?」
「父上?」
「代わりにエレノアをやろう!」
「父上!?」
エレノアが真っ赤になる。
「我が言うのもなんだが、器量よしで優秀だ。」
「文句あるまい!」
「はぁ……」
レンは困ったように笑った。
「いやぁ」
「ありがたいお話なんですが」
「ちょっと急というか……」
「そうか!」
「では領地と侯爵位を授けよう!」
「1つの街を支配できる!専用工房だって夢ではないぞ!」
「おぬしに富と最高の栄誉を用意できる!」
「……」
「……」
「それと!」
「王国中の機兵!」
「全部お前の物だ!」
「!!」
レンの顔が変わる。
バルド。
「食いついた」
レオン。
「食いついたな」
「軍のも?」
「うむ!」
「騎士団のも?」
(いや、だめだろう?)
「うむ!」
「旧式も?」
「うむ!」
「倉庫の奥のも?」
「うむ!」
「壊れてるのも?」
「うむ!」
「……」
(全部……)
(見放題……)
(改造し放題……)
(天国では?)
「レンさん?」
リアが不安そうに見上げる。
「……」
「いやぁ」
「うーん」
「その……」
「考えときます」
「おお!」
アレス六世が満足そうに頷いた。
「良い返事を待っておる!」
「ははは……」
完全に逃げた。
◇
その様子を見ていたエレノアは。
(よかった……)
と少し安心していた。
レンも。
リアも。
優しそうな人達だった。
怖くない。
それだけで十分だった。
しかし。
(……バルド様)
胸の奥が少しだけ痛む。
◇
謁見が終わり。
夜の酒場。
「悪かったな」
バルドが豪快に笑う。
「陛下も悪気はねぇありゃ建前だ。」
「分かってる」
「ペンギンが欲しいわけがない。国益だろ?」
レオンも頷いた。
「価値があるものは囲い込む」
「それが国だ」
「別に怒ってない」
レンは酒を飲みながら笑う。
「ただ」
「俺」
「国経営シミュレーションとか」
「貴族ロールプレイとか」
「興味ないんだ」
「ぶはっ!」
バルドが吹き出した。
「もうゲームじゃねぇぞ!」
「似たようなもんだろ?」
レオンも苦笑した。
「確かに、お前には向いてなさそうだな」
「だろ?」
「面倒臭い」
「ああ、俺たちもめんどくさくなる時はある。」
「でも」
レオンが真面目な顔になる。
「そもそも、俺たち元の世界に帰る事考えてないだろ?」
「そうだな。」
「確かに。」
「国の存続は俺たちの居るこの世界の為にもなる。」
「まぁ、ゲームの時の世界設定で言えば」
「俺たちそのうち滅ぶしな。」
「軽く言うな、滅びに向かっている・・だ。」
「サービス終了時点で」
「世界がどうなるのかわかってなかっただろ?」
「アポカリオンなんぞ出てきやがったから」
「もうすでに知ってるのと違うけどな。」
「それに、聖都の件。」
「今更だが、お前何かしただろ?」
「別に」
レンは手元の酒を少しあおる。
「それで、エレノアはどうするつもりだ?」
レオンがレンの正面を向きなおし真面目に聞く。
「どうもこうもないだろ?俺は今のままがいい。」
「陛下はお前を気に入っていたぞ。」
「そうか」
「なんで?」
「まぁ、ペンギンで」
「そうか」
「そうだ」
三人は笑った。
◇
一方。
庭園。
「申し訳ありません」
エレノアが頭を下げた。
「え?」
リアが慌てる。
「私なんかが」
「間に入るようなことになってしまって」
「??」
「貴女がいらっしゃるのに」
「私が嫁ぐことになってしまって……」
「……え?」
リア。
固まる。
「妖精王の伴侶」
「妖精姫」
「そうお聞きしましたので」
「ええぇぇ!?」
顔が真っ赤になる。
「ち、違います!」
「そうなんですか?」
「違います!」
「違う……はずです!」
「はず?」
「うぅ……」
顔を真っ赤にして俯く。
しかし。
少しだけ。
嫌そうではなかった。
「ふふ」
エレノアが笑った。
「仲が良いのですね」
「そうでしょうか」
「羨ましいです」
「エレノア様は?」
「私ですか?」
エレノアは空を見上げた。
「ここだけの話お慕いしている方がおります」
「まぁ!」
「誰ですか?」
「秘密です」
「気になります!教えてください!」
「駄目です」
リアは食いついた。
「秘密です」
「えー」
二人は笑った。
「きっと」
リアが微笑む。
「優しくて」
「強い人なんですね」
「はい」
エレノアも微笑んだ。
「少し不器用で」
「豪快で」
「よく笑う方です」
「素敵です!」
「そうでしょうか」
「はい!」
「私は」
リアも少し照れながら言った。
「レンさんみたいな人、嫌いじゃないですよ」
「……!」
エレノアが目を丸くする。
「え?」
「あ」
「違います!」
「その!」
「そういう意味じゃなくて!」
「ふふ」
「うふふ」
二人の笑い声が夜風に溶けていく。
◇
その頃。
「全部の機兵かぁ……」
レンはまだ悩んでいた。
「まだ悩んでるのか!」
「馬鹿!」
バルドが大笑いする。
「全部だぞ?」
「気持ちは分かる」
レオンも笑う。
「お前本当にブレないな」
「男のロマンだからな」
『レン様』
「ん?」
『浮気です』
「何が?」
『私がいるのに』
「そういう意味じゃない」
『私です』
「そうだったな」
窓の外。
静かな夜。
しかし。
遺跡都市では。
誰も知らぬまま。
数百年ぶりの戦争の幕が。
静かに上がろうとしていた。
読んでいただきありがとうございます。
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