第六話 辺境の主
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
東方辺境。
バルド辺境伯領。
元々、この土地は豊かな土地ではない。
荒野。
岩山。
砂漠。
冬は寒く。
夏は暑い。
農業にも向かない。
商業路も遠い。
領主として見れば。
「大外れ」
そんな土地は誰も欲しがらなかった
一人を除いて。
◇
「ここまで栄える領になるとはな」
アレス六世は感心したように辺りを見渡した。
王都からのお忍び。
同行するのは。
騎士団長レオン。
そして。
第二王女エレノア。
三人とも旅装束である。
馬車の窓から眼前に広がる光景は。
まるで小さな王都だった。
市場。
鍛冶屋。
宿屋。
酒場。
冒険者。
そして。
数えきれないほどの機兵。
「陛下」
レオンが苦笑した。
「私としても、予想以上ですね」
「うむ」
アレス六世は上機嫌だった。
「バルドめ」
「面白いものを作りおった」
◇
「陛下!」
「おお!」
「バルド!」
豪快な声。
バルド辺境伯が駆け寄ってくる。
「遠路ご苦労様です!」
「相変わらず元気そうだな」
「これくらいしか取り柄がありませんので!」
豪快に笑う。
その姿を見て。
「……」
エレノアが固まった。
「?」
アレス六世は気付かない。
「?」
バルドも気付かない。
しかし。
レオンだけは気付いた。
(そういうことか)
ほんの少し耳が赤い。
目が泳ぎおち着きがない。
「エレノア?」
「は、はい!」
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!」
「……バルド様ごきげんよう」
「お久しぶりですなぁ、エレノア様」
「益々お美しくなられておる。」
エレノアはその言葉に再度俯く。
レオンは何も言わない。
(こいつ、天然か?)
◇
執務室。
机の上には地図。
遺跡都市周辺。
そして。
無数の赤印。
「現在の探索状況です」
バルドが指差す。
「遺跡都市への入り口はまだ未発見」
「しかし」
「地下反応は間違いなく存在します」
執政官達が頷く。
「そして」
「獣人どもの出現頻度が増えております」
「ほう」
「小規模なものですが」
「ここ一月で十件弱。」
「全て討伐済み」
「しかし数が増えている」
法王からも同様の報告。
王都の学者達も異変を指摘していた。
アレス六世は腕を組む。
「いよいよか」
「恐らく」
部屋の空気が重くなる。
しかし。
「まあ」
バルドは笑った。
「祭りですな!」
「お前は変わらんな」
「酒と戦は景気が良くなります!」
「不謹慎だぞ」
「すみません!」
全く反省していない。
◇
「陛下」
バルドは珍しく真面目な顔になった。
「一つ、お聞きしてもよろしいですか」
「なんだ」
「危険を承知でこの地までお越しになったのは」
「やはり妖精王と目される例の人物を」
「重要視しているからですか?」
静かになる執務室。
アレス六世は少し考え。
そして笑った。
「もちろんだ」
「国を豊かにし」
「妖精姫を従え」
「奇跡を起こした人物だ」
「そのような者が存在するなら」
「王家としても迎えたい」
「出来れば味方になってほしい」
「出来れば家族にな」
エレノアが紅茶を吹きそうになる。
「お、お父様!」
「何だ」
「王家として当然であろう」
家臣達が苦笑した。
「しかしな」
そこで。
アレス六世の顔が変わる。
「それだけではない」
「……」
「国難だ」
「数百年ぶりの戦だ」
「そんな時に王が王都に引きこもっていてどうする」
「我が王族の沽券に関わる」
「余はアストラ王だ」
「民のために前へ立つ」
「それだけだ」
部屋が静まり返る。
そして。
バルドは深く頭を下げた。
「……恐れ入りました」
「いや」
「バルド」
「お前も同じであろう?」
「はっ」
「この地を守るため」
「死ぬ覚悟は出来ております」
「うむ」
「ならば良い」
レオン。
頭を抱える。
「……血気盛んだな」
エレノア。
苦笑。
「お父様ですから」
◇
夜。
城壁の上。
「レオン」
「なんだ」
「本当に危なくなったら」
「王族だけは帰せ」
「当然だ」
「ここまでよくなった歴史だ」
「守らねぇとな」
レオンは静かに頷く。
「国は亡ぼせない」
「そのためなら」
「俺達が死ぬ方が安い」
「だな」
しばし沈黙。
「まあ」
バルドは笑った。
「戦が始まれば」
「俺は好き勝手やるだけだが」
「お前らしい」
「だろ?」
二人は笑った。
◇
翌日。
城壁の上。
アレス六世は感心していた。
「見事だ」
眼下。
機兵。
機兵。
機兵。
国中から集まる冒険者。
傭兵。
騎士。
コロシアムの猛者。
「壮観ですな」
家臣達も頷く。
「これだけ集まれば」
「新人連合とやらも恐るるに足らず!」
「うむ!」
国王も豪快に笑う。
「我が国も捨てたものではない!」
「この武威!」
「そう簡単には負けん!」
少々。
気が大きくなっていた。
誰もがそうだった。
数百年ぶりの大戦。
しかし。
これだけの戦力があれば。
負けるはずがない。
そう。
思っていた。
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