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第四話 妖精王の噂

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。

王城。


謁見の間。


「南部の税収は前年比二割増」


「商人の流入も増加しております」


「作物の収穫量も過去最高」


執政官の報告に、家臣達から感嘆の声が漏れた。


「驚異的ですな」


「わずか数年でここまでとは」


「まるで別の土地だ」


玉座に座るアレス六世は腕を組む。


「聖都化、か」


世界樹教法王が静かに頷いた。


「はい」


「謎の広域結界による恩恵は本物です」


「気候は安定」


「魔物の発生率は減少」


「病も少なく」


「土地は豊かになりました」


「今や南部は新たな聖地として巡礼者が絶えません」


第一王女フィオナも嬉しそうに微笑む。


「素晴らしいことです」


「王国にとっても大きな力になります」


家臣達も異論はない。


しかし。


「不可解なのはその始まりです」


執政官が資料をめくる。


「全ての報告に共通するものがあります」


「森の申し子」


そう言って数枚の書類を広げた。


「魔の森から来たと言われる子供達」


「妖精姫」


「聖女派の若手神官長」


「若くして研究所で活躍する少年」


「南部の最大の商会の大表」


「王都中央学園の最優秀生徒」


「南部復興の中心人物」


「いずれも森の家に関係しています」


「森の家か」


アレス六世が呟く。


「近頃よく聞くな」


「そして」


執政官は声を落とした。


「彼らの背後には妖精王と呼ばれる人物の存在があるとの噂もございます」


ざわり。


家臣達が顔を見合わせた。


「妖精王」


「妖精姫の夫か」


「いや、妖精そのものだという話も」


「姿を見た者はいない」


「数百歳の賢者だとも」


法王は苦笑した。


「神話ですな」


「妖精姫が実在する以上、全てを笑うことはできませんが」


「しかし」


執政官は頷く。


「もし実在するのであれば」


「王国としても迎え入れるべきでしょう」


「その通り」


アレス六世も頷いた。


「国の宝となる人材だ」


「ぜひとも取り込みたい」


「何か案は?」


その言葉に。


家臣達が一斉に第二王女へ視線を向けた。


エレノア。


十六歳。


真黒の髪を揺らす少女は、静かに王の隣でやり取りを聞いていた。


「……?」


「エレノア殿下」


執政官が咳払いをする。


「もしその人物が独身であれば」


「王家との縁組も一つの手かと」


「うむ」


アレス六世も頷く。


「その時はエレノア」


「輿入れを頼むぞ」


「かしこまりました」


即答だった。


家臣達が少し驚く。


「おお……」


「さすが第二王女殿下」


「動じませんな」


本人は淡々としている。


「王家の娘ですので」


「必要であれば」


「誰が相手でも」


「王国のために務めを果たします」


フィオナが優しく微笑む。


「相変わらず真面目ね」


「姉上ほどではありません」


「もっと自分の幸せを考えてもいいのよ?」


「問題ありません」


本当に。


少しも動揺していない。


「妖精王か……」


アレス六世は笑った。


「どんな者か見てみたいものだな」


「少なくとも只者ではありますまい」


法王も頷く。


「奇跡を起こし」


「妖精姫を従え」


「聖都を築いた人物」


「もし存在するならば」


「世界樹教としても歓迎いたします」


その時だった。


「陛下!」


伝令が駆け込む。


「バルド辺境伯より急報!」


謁見の間の空気が変わる。


「申せ」


「東部国境付近にて異常事態」


「東の獣人達の活動を確認!」


空気が凍りついた。


「何だと?」


「まさか本当にいたのか……」


「この時代に」


家臣達に動揺が広がる。


「辺境伯閣下は」


「数百年ぶりの大規模侵攻の可能性あり、と」


アレス六世の顔から笑みが消えた。


「……来たか」


フィオナも表情を引き締める。


「レオンに伝えなくては」


「はい」


執政官が頷く。


その横で。


エレノアだけが。


「……バルド辺境伯」


小さく呟いた。


「エレノア?」


フィオナが首を傾げる。


「いえ」


「何でもありません」


慌てて俯く。


しかし耳がほんのり赤い。


「?」


「?」


誰も気付かない。


「……ご無事でしょうか」


小さな声。


王都へ来る度。


土産を持ってきてくれる。


一緒に市場を歩いてくれた。


騎士の話をしてくれた。


豪快で。


優しくて。


少し乱暴で。


笑顔が眩しい人。


「……」


第二王女は静かに俯いた。


そして。


誰にも聞こえないほど小さな声で。


「お気を付けください」


そう呟いた。



一方。


東部辺境。


バルド辺境伯は豪快なくしゃみをしていた。


「ぶぇっくし!」


「誰か噂してやがるな!」


そして。


その手元には。


たった一行だけの手紙。


『祭りが始まりそうだ。来るなら今のうちだぞ』


送り先。


森の家。


宛名。


レン。



静かだった王国に。


数百年ぶりの嵐が。


ゆっくりと近づいていた。


読んでいただきありがとうございます。

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