第二話 王都の休日
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。
授業が終わる。
昼休み。
「先生、今日は研究室ですか?」
教科書を鞄へしまいながらルウが尋ねた。
「その予定でしたが」
ミストは少し考える。
机の上。
三本目のエナドリ。
ルウとアルフレッドの視線。
「……今日は休みましょう」
「よし!」
「勝った!」
二人が謎の勝利を喜んだ。
「先生、城下町行きましょう!」
「露店!」
「新しいお菓子!」
「私は忙しいんだけどねぇ……」
「忙しい人は寝ません。」
「疲れてるのよ~」
『関係ありません』
「ハナ」
『私です』
「最近絶妙になってきたわね……」
『知ることは、未来をつくることです』
「便利ですね」
「賢い!」
アルフレッドがハナを持ち上げる。
「ルウの研究、進んでる?」
「うん!」
「最近は魔導通信!」
「ほう」
「トト兄ちゃんがすごいんだよ!」
「彼は本当に面白いですね」
ミストは素直に感心する。
十歳。
王国最高峰の研究者達ですら理解できない発想をする。
あれは天才というより変人だった。
たぶんレンに似たのだろう。
本人達は認めないだろうが。
「行きましょう先生!」
「お菓子!」
「……え~少しだけですよ」
(ずいぶんなつかれちゃったな……)
「やったー!」
◇
城下町。
昼の大通りは活気に溢れていた。
「わぁ!」
「新作だ!」
ルウが駆ける。
アルフレッドも追いかける。
「うわ……インドアにはきっついわ……」
『インドアにはきついです』
「ハナ!二人をきちんと見るのよ。」
『了解。私です!』
小さなぬいぐるみは二人を追っていった。
しばらく
子供二人とぬいぐるみ一匹。
その後ろをミストが歩く。
「先生、これ!」
「串焼きだね~」
「美味しいよ!」
すでにアルは串焼きをもっている。
「殿下、あまり買い食いは」
「アルでいいって!」
「私は、この自酒もくださいな~」
「先生だけずるい」
「大人だからね~」
「ずるい」
『ずるいです』
「ハナまで」
ミストは苦笑した。
すると。
「ミスト先生!」
向こうから声。
学園の女生徒達だった。
「こんにちは!」
「今日も綺麗ですね!」
「研究頑張ってください!」
「ありがとうございます」
「きゃー!」
黄色い声。
アルフレッドが呆れる。
「先生、人気あるよね」
「そうでしょうか」
「そうだよ」
「だらしないけど」
「豪快だし」
「研究バカだけど」
「綺麗だし」
「優しいし」
「あと胸大きい」
ゴン。
「痛っ!」
アルフレッドの頭に教科書が落ちた。
「最後はいりません」
「いてて……」
「殿下」
「アル」
「アル」
「アル」
「はい」
「女性にそういうことを言わない」
「はい」
『はい』
「ハナも返事しなくていいんですよ」
『返事しなくていいんですよ』
「……」
今日も平和だった。
◇
その頃。
王城の執務室。
「殿下は?」
「学園の日ですが、今日は」
「城下町に降りているようです」
「またか……」
側近達がため息を吐く。
「護衛は?」
「ついております」
「なら良いか」
「しかしながら、ミスト様と一緒です」
「……なら大丈夫だな」
満場一致だった。
あの人がいるなら。
問題は起こらない。
たぶん。
◇
夕暮れ。
世界樹の見える丘。
三人は座っていた。
「綺麗だね」
ルウが呟く。
王都の中央。
巨大な世界樹。
夕日に照らされ黄金色に輝いている。
「昔から思ってたんだけど」
アルフレッドが言う。
「なんでこんな大きいんだろ」
「さぁ」
ミストは微笑む。
「王国より昔からあるそうよ~」
「すごいね」
『すごいです』
風が吹く。
静かな時間。
いつもの王都。
いつもの平和。
だから。
誰も気付かなかった。
遥か東。
誰も知らない場所で。
数百年ぶりに。
古代の扉が。
静かに開き始めていることを。
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