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第一話 東方の伝承

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。好きなものを全部詰め込みました。

王都中央学園。


昼休み前。


歴史学の時間。


教壇に立つミストは小さく欠伸を噛み殺した。


昨夜は研究室に泊まり込み。


今朝になってようやく帰宅。


そしてそのまま授業。


机の端には空になったエナジードリンクの瓶が二本。


「先生、また徹夜ですか?」


最前列。


ルウが呆れた顔をした。


「少々」


「少々じゃないですよ」


「まだ二本目だよ~」


「二本もです!」


隣の席で少年が笑う。


「先生、三本目いきます?」


「やめてください、アルフレッド殿下」


「授業中くらいアルでいいって」


王太子アルフレッド。


九歳。


ルウと同い年。


王族とは思えないほど気さくで


二人はよく一緒に城下町を走り回っている。


今も机の上には紫色の小さなぬいぐるみ。


「ハナ、先生眠そう」


『眠そうです』


「真似しなくていいんですよ」


『真似しなくていいんですよ』


「違います」


『違います』


ルウが笑った。


「ハナ最近先生に似てきたね」


『最近先生に似てきました』


「そうでしょうか」


「似てる」


「似てますね」


アルフレッドも笑う。


そんな二人を見て、ミストは小さくため息を吐いた。


「さて、授業を始めます」


黒板に大陸地図を書く。


中央。


アストラ王国。


そして東方。


「問題です」


「はい!」


「はい!」


二人同時。


「アストラ王国の東には何がありますか?」


「獣の国!」


「獣人の国!」


「正解です」


ミストは頷いた。


「正確には複数の種族によって構成された国家群ですね」


「本当にあるんですか?」


アルフレッドが身を乗り出した。


「王立図書館には複数の記録が残っています」


「じゃあ会ってみたいなぁ」


「仮に逢えたとしてもおすすめしませんね。」


即答だった。


「え?」


ルウとアルフレッドが顔を見合わせる。


「どうしてです?」


「二つ理由があります」


ミストはチョークを走らせた。


【言語】【好戦性】


「まず言葉が通じません」


「全然?」


「記録に残る限り、会話による意思疎通に成功した例はありません」


二人が目を丸くする。


「それと」


ミストの声が少し低くなる。


「彼らは極めて好戦的です」


「好戦的?」


「はい」


本を開く。


そこには古い戦争画。


 獣。


 竜。


巨大な機兵。


「過去数度にわたり、この国は獣人達の侵攻を受けています」


「怖い人たち?」


ルウが尋ねる。


ミストは少し考えた。


「分かりません」


「え?」


「現代人で見たことのある人がいないのよ」


「あくまで言い伝えの話で」


「書物に残された記録のみ。」


そう言ってページをめくる。


「ただ記録に残る限り彼らは非常に強力で」


「戦うことに長けた民族であることは間違いありません」


さらに次のページ。


古い魔核機。


獣のような頭部。


竜のような翼。


「そして彼らに対抗するために生まれたのが魔核機です」


「今の機兵のご先祖様?」


「その通りです」


「ほんとだ」


アルフレッドが絵を覗き込む。


「獣みたい」


「竜みたい」


ルウはかつての恩師の持つ


黒い騎士の姿をした「妖精王」を思い出していた。


「当時の技術者達が侵略者達の能力を模倣したからです」


しかし。


ミストは本を閉じた。


「その技術のほとんどは失われました」


「魔核を生成する技術がないのです。」


「だから今は機兵なんだ」


「ええ」


アルフレッドが頬杖をつく。


「でも、なんで侵攻してくるの?」


「襲ってくるんでしょ?」


「侵略するなら普通、目的があるよね。食べ物とか。」


「城とか」


「領土とか」


ミストは少し驚いた。


「良い着眼点です」


そして。


黒板に最後の文字を書いた。


【世界樹】


「獣人達の目的は現在も不明です」


「ただ一つ」


「全ての侵攻に共通していることがあります」


二人が息を飲む。


「彼らは必ず世界樹方面へ進軍します」


「王都?」


「ええ」


「途中の町や城塞を無視してでも」


「世界樹を目指したと記録されています」


ルウが首を傾げた。


「どうして?」


「分かりません」


アルフレッドも不思議そうにする。


「宝物?」


「それも不明です」


「ただ」


ミストは窓の外を見る。


王都中央。


巨大な世界樹。


「数百年の歴史の中で、彼らは例外なく世界樹を目指しました」


静かな教室。


そして。


『知ることは、未来をつくることです』


机の上でハナがそう言った。


「お?」


アルフレッドが笑う。


「かっこいい」


『かっこいいです』


「ハナもそう思う?」


『私です』


「違うだろ」


ルウが吹き出した。


「ハナ、最近賢くなったよね」


『ルウ様の研究を全力でサポートします』


「えへへ」


嬉しそうなルウ。


そんな様子を見ながら。


ミストは空になったエナジードリンクを手に取った。


「……もう一本くらいなら」


「先生」


「駄目です」


ルウとアルフレッド。


二人同時だった。


「…………」


「分かりました」


「今日はやめておくわ~」


先生モードはここまでらしい。


ミストは窓の向こうに見える世界樹を見上げる。


そして誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


「平和が続けばいいんだけどねぇ……」


何気ない日常の中


しばしのあいだ平和な時間が続く


ルウ達が王都に来て約一年が経とうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。

最近、私は炭酸が苦手で、エナドリ飲んでないなぁ~・・と思いつつ。

まぁどうでもいっか。



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