プロローグ 後日談
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
アストラ王国騎士団。
南方支部。
取調室。
男は震えていた。
冒険者ギルド所属。
Eランク冒険者。
現在、奴隷売買への関与で拘束中である。
目の前には騎士団長が座っていた。
「もう一度聞く」
騎士団長が書類をめくる。
「お前達は森で仲間を失った」
「はい……」
「機兵も失った」
「はい……」
「相手は二人」
「はい」
「若い女冒険者と中年冒険者」
「はい」
騎士団長は頷いた。
ここまではいい。
問題はその先だった。
「そして」
「黒い魔核機が現れた」
「はい」
部屋が静まり返る。
数秒。
沈黙。
「見間違いだろう」
「違います!」
「魔獣かもしれん」
「違います!」
「大型の変異種だ」
「違います!」
男は叫んだ。
「人型だったんです!」
「黒い機体でした!」
「隊長の機兵を一撃で!」
「一撃でぶっ飛ばしたんです!」
騎士達が顔を見合わせる。
騎士団長は深くため息を吐いた。
「お前」
「グラムを見たことはあるか?」
「んなもの知らねぇ!」
「セラフィムは?」
「見たことねえ!」
「ティラントは?」
「しらねえ!」
騎士団長は頷く。
「だろうな」
「なら機兵の見間違いだ」
「違う!」
「俺は見たんだ!」
男の顔は真っ青だった。
恐怖が消えていない。
「あれは機兵じゃない!」
「もっと……」
「もっと違う何かだった!」
騎士達がざわつく。
グラム。
セラフィム。
ティラント。
王国最強と呼ばれる機体達。
そして一部では囁かれている。
――あれは魔核機ではないか。
と。
だが。
所詮は噂。
実物を見た者などいない。
その時だった。
部屋の隅で黙っていた老騎士が口を開く。
「機兵の残骸は」
静かな声だった。
書記官が答える。
「回収済みです」
「破壊状況は?」
「異常です」
部屋が静かになる。
老騎士が目を細めた。
「胸部装甲が消失」
「切断痕原因不明。」
「魔術痕なし」
「衝撃痕も判別不能。よほどじゃないとこの辺の魔獣ごときで、機兵はあんな風にはなりませんね。」
騎士団長が眉をひそめる。
「何で壊された。」
「不明です。ただ、驚異的な何かとしか言えません。」
さらに沈黙。
男が叫ぶ。
「だから言っただろ!」
「魔核機だって!」
騎士団長が机を叩いた。
「黙れ!」
男が縮こまる。
しかし老騎士は別のことを考えていた。
「失われた機兵は?」
「回収されていません」
「武装も一部消失しています」
「残骸も持ち去られた形跡があります」
老騎士の目が細くなる。
魔獣ではない。
魔獣は機兵を解体しない。
盗賊でもない。
盗賊が機兵の残骸を持ち帰っても意味がない。
だが。
機兵を分解し。
価値のある部品を選び。
運び出した者がいる。
それは。
機兵を理解している者だ。
老騎士は小さく呟いた。
「魔核機かどうかは知らん」
誰も声を出さない。
「だが……」
老騎士は遠くを見るような目で続けた。
「その可能性を笑うには」
「残骸がおかしい」
◇
その頃。
森の樹海。
結界ハウス。
「おおっ!」
鼻歌まじりでご機嫌なレンが歓声を上げた。
目の前には解体途中の機兵。
周囲には部品の山。
工具の山。
そして換金した金貨。
「黒字だ!」
満面の笑みだった。
リアは呆然としている。
街では騎士団が頭を抱え。
犯罪組織は壊滅し。
謎の黒い機体の噂が広がっている。
その元凶は。
「この関節まだ使えるな」
機兵を解体しながら。
「装甲も流用できそうだ」
楽しそうに呟いていた。
「ネスト」
「はい」
「倉庫空けといてくれ」
「了解」
リアは思わず空を見上げた。
目の前の男は。
王国中が頭を抱えていることなど知らない。
ただ。
拾った機兵が黒字になったことを喜んでいる。
変なおっさんだった。
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