第二十七話 卒業生達
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
アポカリオン討伐から一週間。
王都は未だ祭りの熱気に包まれていた。
市場へ行けば妖精姫。
酒場へ行けば妖精姫。
神殿へ行けば聖女オフィーリアと妖精姫。
誰もが英雄譚を語っている。
だが、その中心人物であるリアはというと。
◇
森の家
「うぅ……」
森に帰ってソファに転がっていた。
毛布に包まりながら。
まるで冬眠前の動物のように。
「眠いです……」
「寝ろ」
レンが即答する。
「さっき起きたばっかりです……」
「じゃあ起きてろ」
「眠いです……」
「面倒くさいな」
リビングに苦笑が広がった。
窓際ではルウが本を読んでいる。
リアの様子をちらりと見てから再び本へ視線を戻した。
アポカリオン戦から。
リアは妙に疲れやすくなっていた。
よく眠る。
食べる量も増えた。
本人はあまり気にしていない。
レンも気にしていない。
でもルウだけは少しだけ違和感を覚えていた。
ただ。
まだ言葉にできるほどの確信はない。
だから黙っていた。
◇
そんな穏やかな昼下がりだった。
森の家の庭先が騒がしくなる。
レンが窓を見る。
「ん?」
森の家の入口。
見覚えのある顔が並んでいた。
カイル。
マル。
シーナ。
レオ。
トト。
その後ろには神殿騎士や王国騎士の姿まで見える。
「みんな帰って来てます!」
リアが飛び起きた。
さっきまで眠そうだったのが嘘みたいだった。
「元気だな」
「皆が帰って来たので!」
げんきんだった。
◇
しばらくして。
森の家のリビングは久しぶりの賑わいに包まれていた。
カイルは以前より背筋が伸びているせいか頼れるように見える。
レオも少し背が伸びて肩つきが逞しくなった。
シーナは身なりも綺麗にして少し女性らしさが出てきた。
トトは相変わらず工具箱を抱えていた。
マルは以前に比べて少し日に焼けている。
皆、成長していた。
あってないのは数週間。
ここに来てからは約1年間。
レンは紅茶を飲みながら思う
(やっぱ、子供の成長って早いな…)
そんな皆を見て
本当に少しだけ嬉しかった。
◇
「かえってきたか」
レンが切り出す。
すると全員が顔を見合わせた。
何所か緊張している。
やがて。
カイルが立ち上がった。
「レンさん」
呼び方に真剣さが乗る
レンが眉を上げる。
「なんだ」
「ここを出ようと思います。」
静かな声。
だがその一言には重みがあった。
◇
「僕は南部新神殿へ行きます」
カイルは真っ直ぐ前を向く。
「神殿長として」
レンは驚いた…が態度には出さない。
(え?神殿長ってなに…?孤児院長とかじゃなく?この子まだ15~6歳なんだけど)
(神殿のやつら何考えてるんだ…)
「南部の神殿完成したのか…そうか…」
レンは紅茶を吹き出しそうになったが堪えた。
カイルは静かにうなずく。
誰よりも真面目で。
誰よりも責任感が強い。
人を支えることに向いている。
そういう少年だった。
「そうか…よかったな」
短い言葉。
だがカイルは嬉しそうに笑った。
◇
続いてシーナが立ち上がる。
「私達も報告がありますわ」
その隣でマルが少し照れ臭そうに頭を掻いた。
「マルシーナ斡旋所ですが…」
シーナが胸を張る。
「正式に商会として認可されましたの」
リアが目を丸くした。
「商会!?」
「ええ」
シーナは自慢げに続ける。
「元々は屋台一つから始まりましたけれど」
「仕事も増えて皆さんの支持も得られて」
「組合や神殿にも認められて事業を拡大できましたわ」
「………」
レンは言葉が出ない。
「授業所も今じゃ町でも一、二を争う屋敷になった。」
マルが補足する。
「従業員も増えたし」
「最近じゃ町長から相談も来る」
「凄いです!」
リアが拍手した。
シーナは少し照れたように微笑む。
「私達だけの力ではありませんわ」
その言葉は本心だった。
「町の皆様が支えてくださったからですもの」
屋台一つから始まった商売。
それを育てたのは町の人々だった。
愛された結果。
それが今のマルシーナ商会だった。
レンの手にもったカップは完全に止まった。
(え?なに??凄すぎるんだが………)
◇
「俺はマルシーナ商会で職人を続ける」
マルが言う。
「もっと凄いもん作りたい」
妖精王≪ネスト≫像を作った時と同じ目だった。
職人の目。
きっと芸術家肌なんだろうが
シーナといれば安心な気がする。
レンは少し笑う。
「頑張れ」
「はい。」
◇
「俺は王都に行きたい。」
「目標は王国騎士団だ。」
言葉と目には迷いがない。
レオも自分の行く道を決心したのだろう。
「レオン様のような騎士になる」
それを聞いたリアが少し寂しそうな顔をする。
森で一緒に育った弟分のような存在。
離れるのはやはり寂しい。
だが、リアは笑顔で答える。
「そう、目標を見つけたんだね…」
レオは笑顔で答えた。
夢を見つけた少年の顔だった。
◇
そして。
ルウが本を閉じる。
「僕は」
静かな声。
「ミストさんのお誘いを受けることにしました」
レンが視線を向ける。
「学園か」
「はい」
ルウは頷いた。
「王都へ行きます」
「もっと勉強したいので」
文字を覚えて本が好きになって
ルウはいつも思っていた。
知らないことが多すぎる。
昔は自分たちが置かれた状況すら知らずに
死にかけた………今は
もっと知りたい、もっと勉強したい、もっと学びたい。
知ることで自分の世界が変わった
これからももっと変わっていく
そんな気がした。
◇
「僕もです!」
元気よく手を挙げたのはトトだった。
「お前もか」
「王都に行きます!」
即答だった。
「レオも行くし!」
「ルウも行くし!」
「レオン様もいるし!」
「ミスト様もいるし!」
目が輝いている。
他にも目的がありそうだ。
分かりやすい。
「本音は?」
レンが聞く。
「色々な機兵が見たい。」
王都にレン達が行った時
ルウやリアがレオン達にに連れられて見学した格納庫の話。
王国機兵の話や実験機の話
それを聞いてからずっと羨ましかったのだ。
全員が笑った。
トトだけ真顔だった。
「絶対面白いじゃないですか!」
興奮気味に話す。
「王国の機兵も見たいし!」
「学園の実験機も見たいし!」
「あれば魔核機も!」
レンは呆れて言う。
「お前なぁ…皆将来の話をしてるのにお前だけ観光か?」
「失礼な!きちんと考えてますよ。」
「学園に機兵工学の推薦枠があってルウと一緒に推薦してもらってます!」
こいつ知らないうちに…
「………」
(ちゃっかりしてやがる…いやこの場合はしっかりしてるか…)
◇
話が終わる。
部屋が静かになった。
皆がレンを見る。
自然と。
全員の視線が集まっていた。
レンは紅茶を飲み干す。
そして立ち上がった。
◇
木々が揺れる。
森がざわめく。
ふと。
思い出す。
泣いていた子供達。
何も持たなかった子供達。
あの日…
拾った子供達が今では
それぞれの未来を語っている。
それぞれの夢を持っている。
◇
悪くない。
そう思った。
「そうか」
レンが言う。
皆が顔を上げる。
「なら」
一瞬の沈黙。
「最後の授業だ」
トトが勢いよく立ち上がった。
「格納庫ですか!?」
「おう」
レンが笑う。
「卒業祝いに餞別をやる」
その瞬間。
歓声が森の家に響いた。
誰も知らない。
格納庫の奥で。
それぞれの未来へ向けた餞別が。
静かに待っていることを。
読んでいただきありがとうございます。
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