第二十六話 勝利の代償
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
新緑の流星が空を裂く。
シルフィネと一体となるリア。
そして王国軍全ての想いを乗せた一撃。
その光は真っ直ぐにアポカリオンの胸部へ吸い込まれた。
次の瞬間。
世界が白く染まる。
音が消えた。
空気が消えた。
視界が消えた。
ただ光だけが残る。
◇
『リア!!』
レオンは思わず叫ぶが誰にも届かない。
真っ白な空白の後、
轟音が遅れて世界へ帰ってくる。
衝撃波で大地がめくれ上がり山肌が崩れる。
周囲の機兵達が吹き飛ばされた。
ティラントが盾を突き立てる。
セラフィムが防御障壁を展開する。
グラムが踏み止まる。
それでも押し返される。
◇
やがて光が晴れ始めた。
誰もが息を呑む。
そこにいたのは。
膝を折るアポカリオンだった。
『当たった……』
ミストが呟く。
胸部に巨大な穴。
再生も始まらない。
黒い魔力が煙のように漏れ出していた。
アポカリオンが顔を上げる。
赤い瞳のその視線の先。
空にはシルフィネがいた。
断末魔の咆哮が轟く
空が震え大地が揺れる。
そして巨体が傾く。
山のような身体が崩れていく。
徐々に力なく地に伏せる災害を
祈るような気持ちで
満身創痍の騎士たちは見ていた。
本当に終わったのか。
本当に勝ったのか。
轟音が鳴りやみ
やがて戦場に沈黙がはしる。
◇
『……』
最初に口を開いたのはバルドだった。
『勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
歓声が爆発した。
『うおおおおおお!!』
『勝った!!』
『生き残った!!』
『妖精姫だ!!』
『妖精姫様が倒したぞ!!』
絶望に包まれていた戦場が歓喜に変わる。
レオンも思わず笑っていた。
『まったく』
大剣を肩に担ぐ。
『とんでもないな』
ミストも苦笑する。
『なにあれ・・ものすごく納得できないけど・・』
『納得できないけど・・』
『助かったわ。』
『はっはっはっは!!』
バルドが豪快に笑う。
『生き延びたな!!』
『全員帰って飲むぞ!!』
◇
だがその時だった。
『妖精姫様!?』
歓声が止まる。
シルフィネが揺れていた。
空中でまるで糸が切れたように。
『まずい!!』
レオンが叫ぶ。
エメラルドグリーンの機体が落下する。
高速に真っ逆さま。
『リアさん!!』
アリシアが立ち上がった。
落ちる直前。
花弁の翼がゆっくりと広がる。
最後の力で機体を包み
落下の速度が落ちてゆく。
優しく。
本当に優しく。
シルフィネは地面へ降り立った。
コックピットが開く。
リアは立てない。
身体から力が抜ける。
視界が霞む。
(眠い)
異常なほどの眠気に襲われた。
「みんな……」
かすれた声。
「勝った……よね……?」
そこで意識が途切れた。
後方指揮所。
アリシアは駆け出していた。
聖女としての責務も立場も関係ない。
「リアさん!!」
ただの少女の元へ。
ただの友人の元へ。
駆け寄り、抱きしめる。
「リアさん!」
返事はなく眠っていた。
ただ、気のせいなのか
その身体は驚くほど軽かった。
まるで、何かを使い果たしたように。
アリシアは唇を噛む。
「ありがとう…ございます…」
無茶をした友を責めたい気持ち
未来を救ってくれた感謝
二つの感情が入り混じる。
それ以上の言葉が出ない
抱きしめる事しかできなかった。
◇
レンは空を見上げていた。
「なんとかなったらしいな・・」
ルウが頷く。
「勝ちました」
だがレンの表情は晴れない。
「レンさん?」
「…無茶しやがって」
嫌な予感それだけが消えなかった。
◇
そして数日後。
災厄の討伐が宣告され、王国の勝利に
王都は街中がお祭りになった。
酒場でも。市場でも。神殿でも。
話題は一つ。
『妖精姫』
誰もがその名を口にする。
◇
「誠に、そのような災禍が…」
王宮の執務室で国王アレスは報告を受け取った。
「はい。」
「それにしても妖精姫か。」
「現在は、オフィーリア様の庇護のもと神殿にて療養されている様子。」
「国を救われて挨拶も無しという訳にはいくまいて。」
「それが…かの御人たちは余り表に出て来たがらない御様子で…」
「なんと。それでは折を見て使いをやろう。」
「それが…レオン様に我々も接触を制限されていまして…」
「なにやら、考えがあるのやもしれんな。妖精王と妖精姫…」
「興味深い。」
アレスは椅子に腰を下ろして静かに考える。
◇
神殿の一室。
アリシアは一人で窓の外を見ていた
魔獣の脅威がつい先ほどまで迫っていたとは
思えないほど噓のように王都は平和だ。
人々は笑っている。
静かに呟く。
「やはり私は聖女ではありません」
今までならそこで嘆いて終わっていた。
アポカリオンと言われてたあの魔獣
あれが生まれた時、確かに目が合った。
きっとあれは本来私の未来を奪いに来たのだろう。
特殊な未来視能力等があるはずもないが本能がそう言っていた。
思い返せば今でも身がすくんで
立てなくなりそうだ。
「ですが」
リアの姿を思い出す。
命を削るように戦った少女。
「オフィーリアではいられます」
顔を上げる。
逃げない。
辞めない。
たとえ力がなくても。
人を支えることは出来る。
それが今の答えだった。
◇
誰も知らない場所。
静寂の中。
長い沈黙の後。
声が響く。
「面白い」
愉快そうな声。
「実に面白い」
鍵は見つかった。
ならば。
あとは育つのを待てばいい。
「急ぐ必要もあるまい」
静かな笑いだけが残る。
◇
その日。
妖精姫は英雄になった。
そして。
誰にも知られぬまま。
代償の物語が始まっていた。
【機体図鑑 No.011】
ウィルオーウィスプ(Will-o'-Wisp)
■基本データ
分類 魔核機
ランク S
フレーム タイプ・エレメント
全高 約 5.0m
カラー 漆黒×紅蓮
役割 火力制圧・突撃・殲滅
操縦者 レオ
★機体概要
鬼火を思わせる漆黒の外装を持つ、
火力特化型魔核機。
全身に流れる炎の魔力回路により、
圧倒的な破壊力と瞬間加速性能を実現している。
森の申し子の一人であるレオのために、
レンとトトによって共同開発されたロマンの魔核機。
高い近接戦闘能力と広範囲殲滅能力を兼ね備える。
鬼火剣をふるう度
その機体は炎に包まれているよう見える
設計思想は、グラムに近いアタッカータイプである。
読んでいただきありがとうございます。
面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。




