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第二十四話 妖精姫

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 王都。


レンは北の空を睨んでいた。

 

王都から確認できる位置までそれは迫ってきていた


顔色が悪い。


リアもルウも初めて見る表情だった。


「そんなにやばいんですか?」


リアが不安そうに尋ねる。


レンは短くつぶやく。


(やばい。あれが来たら、アリシアが・・いや)


「強いとかそういう話じゃない全部なくなっちまう。」


そして空を見上げる。


「本来なら人類全部で戦う前提の怪物だ」


リアの顔色が変わった。


レンの態度がその脅威を物語っている。


「ネストを呼ぶ」


レンは即座に決断した。


だが数秒後。


「あ」


止まった。


「どうしました?」


「呼べねぇ」


「え?」


ルウはすぐ気付いた。


「ああ」


「ノアですね」


「それだ」


レンが頭を抱える。


完全に忘れていた。


元々ネストはナビでレンが呼べる仕様だ。


しかし子供たちの教育用ぬいぐるみにそのナビ機能ごと


全部を詰め込んだ。


自分が「教育者」ではないのと世話が面倒だと理由で。


「あとはまかせた」


みたいなノリで。


様々な機能をノアへ移植した。


正確にはネストのAIノアが


ぬいぐるみを遠隔操作している。


「完全に自業自得ですね」


「反論できん」



南部都市の孤児院。


「では次の問題です」


ノアは子供達へ授業をしていた。


カイルに付いて遊びに来ていた。


穏やかな午後。


平和そのもの。


子供たちには大人気だった…


「はっくしゅん」


静寂。


「先生?」


「おや」


ノアが首を傾げる。


「今のは何でしょう」


「くしゃみ?」


「人形なのに?」


「不思議ですね」


少し考える。


「呼びました?」


子供達が笑った。


ノアも微笑む。


「では授業を続けましょう」



「ノアぁぁぁ……」


届かない。


レンは遠い目をした。


ルウも諦めたように頷く。


「ネストは無理ですね」


「仕方ない」


そこでレンは振り返った。


格納庫。


そこにいるのはシルフィネ。


高速機動型特殊機。


最低限の戦力にはなる。


「シルフィネででる。」


「駄目です」


リアからさえぎられる。


「何がだ」


「何がじゃありません」


リアは珍しく怒っていた。


「シルフィネは私のです」


「言ってる場合か…」


「でも乗ってるの私です!」


「あそびじゃないんだぞ!」


「操縦権は私です!」


ルウが横で呟く。


「喧嘩してる場合ですか?」


二人とも聞いていない。



「リア」


レンの声が低くなる。


「相手はアポカリオンだ」


「知りません」


「だろうな」


「でも」


リアは一歩前へ出た。


「レンさんの顔を見れば分かります」


レンが黙る。


「絶対無茶する顔です」


図星だった。


「だから行かせません」


「お前な」


「行かせません!」


レンはため息を吐いた。


「リア」


「俺が行く」


「駄目です!」


リアも引かない。


「なんでだ」


そして。


リアは叫んだ。


「心配だからです!!」


沈黙。


レンが固まる。


「皆もです!」


「アリシアさんも!」


「レオンさん達も!」


「でも!」


リアはレンを指差した。


「レンさんが一番心配です!」


言葉を失う。


ルウが横で目を逸らした。


レンは頭を掻く。


弱った顔をしていた。


そして。


その隙だった。


「行ってきます!」


「待て」


リアがコックピットへ飛び込む。


「リア」


「元々私のです!」


「違う!」


「今は私のです!」


シルフィネ起動。


「リア!!」


「待ちません!!」


次の瞬間。


エメラルドグリーンの機体が空へ飛び出した。



「行ったな」


「行きましたね」


ルウが呟く。


レンは空を見上げていた。


小さくなる機影。


「初めてかもしれん」


「何がです?」


「俺の言うこと聞かなかった」


「俺も戦場に向かうか・・」


レンは苦笑する。


だが。


心配そうな顔は消えない。



戦場。


絶望が広がっていた。


アポカリオン。


SSS級災厄。


ワーウルフ隊は半壊。


ビショップ隊も崩壊寸前。


ティラントが踏み止まっているから辛うじて持っているだけ。


『総員後退!』


『立て直せ!』


レオンの指揮が飛ぶ。


だが苦しい。


圧倒的に。


苦しい。


その時だった。


『なんだ?』


誰かが空を見上げた。



エメラルドグリーンの光。


それが戦場を横切った。


新緑を思わせる美しい機体。


どこか女性的な流麗なシルエット。


背中には花弁を思わせる光の翼。


戦場には似つかわしくない美しさだった。


『増援!?』


『あの機体は!?』


誰も知らない。


誰も見たことがない。



後方指揮所。


アリシアが目を見開く。


「まさか……」


知っていた。


見覚えがある。


森。


結界の家。


トトのゴンドラ。


空の散歩。


そして。


あの機体。


「シルフィネ……?」


思わず呟く。


さらに。


コックピットの映像。


小さな人影。


アリシアの顔色が変わった。


「リアさん……!?」



「シルフィネ!」


リアが叫ぶ。


機体が応える。


その瞬間だった。


世界が輝いた。



膨大な光。


緑の奔流。


戦場全体を包む世界樹を思わせる輝き。


誰も理解できない。


何が起きたのか。


ただ。


シルフィネだけが変わっていく。


花弁の翼が広がる。


さらに。


さらに。


大きく。


美しく。



そして。


消えた。


『消えた!?』


違う。


速すぎる。


誰も追えない。



アポカリオンの首元。


火花。


次の瞬間には反対側。


さらに上空。


さらに背後。


さらに足元。


さらに。


さらに。


さらに。



戦場には無数のシルフィネがいた。


残像。


だが。


本当に何十機もいるように見える。


花畑を舞う妖精。


そんな幻想的な光景。


だからこそ。


恐ろしい。


その全てが。


アポカリオンへ致命傷を刻んでいた。


刺突。


斬撃。


刺突。


斬撃。


高速で繰り返される一方的な攻撃。



『おいおい……』


レオンが苦笑する。


『反則だろ』


『理論が崩壊しています』


ミストが呆然と呟く。


『はっはっは!!』


バルドが豪快に笑った。


『いいぞ嬢ちゃん!!』



戦場に向かう馬車の上


レンは口を開けていた。


「……」


知っている。


シルフィネは自分が作った。


性能も知っている。


だが、あんな性能はない。


あんな速度はない。


あんな出力はない。


「なんだあれ」


本気で分からなかった。



 後方指揮所。


アリシアは涙を流していた。


理由は分からない。


だが。胸の奥で。


何かが繋がった。


ずっと探していた答え。


ずっと間違えていた答え。


世界樹。


聖女。


その意味。


全てが一瞬で理解できた。


だから。


自然と零れる。


「あぁ……」


震える声。


「あぁ……聖女様……」



誰も知らない場所。


誰も届かない場所。


ただ。


ひとつの声だけが響く。


「……ほう」


初めてだった。


その存在が興味を示したのは。


新緑の光。


花弁の翼。


そして。


その中心にいる少女。


沈黙。


やがて。


愉快そうに笑った。


「まさか」


「鍵の方から飛び込んで来るとはの」


笑う。


本当に愉快そうに。


「僥倖」


静かな声。


「実に僥倖よ」


その視線だけが。


初めて。


一人の少女へ向けられていた。


【機体図鑑 No.010】


 ユグドラン(Yggdran)


■基本データ

 分類   魔核機

 ランク  S

 フレーム タイプ・エレメント

 全高   5.8m

 カラー  翡翠×白金

 役割   防衛・守護・広域支援

 操縦者  カイル


★機体概要

 世界樹の守護騎士をイメージしてレンがデザインした魔核機。

 樹木を思わせる外装と大柄な体躯を持ち、

 仲間を守ることに特化した重装甲機として設計されている。

 森の申し子の一人であるカイルのために作られた機体であり、

 神殿騎士団長として各地の防衛戦で活躍。

 全方位伸縮槍トレントで、近接する敵を迎撃。

 広域防御結界と仲間への支援能力を発揮する。


 圧倒的な耐久性能と防御能力から、

 のちに「神殿の象徴」と呼ばれる機体となる。


読んでいただきありがとうございます。

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