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第二十二話 違和感

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 戦闘開始から一時間。


戦況は極めて良好だった。


魔王獣バハルムの巨体にはすでに幾つもの傷が刻まれている。


バンシー隊による長距離魔法砲撃。


ビショップ隊による結界包囲。


そしてレオン率いるグラムが前線を切り裂いていた。


『左翼前進!』


『ワーウルフ隊、再突撃開始!』


『バンシー隊砲撃座標更新!』


戦場は混沌としているが指揮系統は生きていた。


王国軍は訓練された軍隊だ。


まして今回は王国騎士団、神殿騎士団、学園の混成部隊。


精鋭中の精鋭である。


後方指揮所。


アリシアは巨大な戦況図を見つめていた。


神殿騎士達が慌ただしく報告を続ける。


「第三防衛線維持」


「損害軽微です」


「神殿騎士隊も問題ありません」


順調だった。


あまりにも。


アリシアは小さく眉を寄せる。


もちろん良いことだ。


良いことなのだが。


胸の奥に小さな棘が刺さったような感覚が消えない。



『グラム、突撃する』


レオンの声が通信網に響く。


次の瞬間。


赤黒の機体が地面を蹴った。


爆発的な加速。


翼を広げ一瞬で間合いを詰める。


振り抜かれる大剣。


「竜牙剣≪ドラグーンブレード≫!!」


魔王獣の首筋へ深々と食い込んだ。


鮮血が舞う。


大地を揺らす咆哮。


『効いてるぞ!』


『流石団長!』


歓声が上がる。


だがレオンは眉をひそめた。


浅い。


予想よりも。


手応えが軽い。



 上空。


セラフィムの砲撃陣地。


無数の魔法陣が展開されている。


『第六砲門展開』


『第七砲門装填』


ミストは冷静に戦況を分析していた。


砲撃は順調。


敵の行動も予測通り。


被害も計算内。


だが。


「おかしいですねぇ……」


誰にも聞こえない声だった。


戦術的には勝っている、戦略的にも勝っている。


なのに。


プレイヤーとしての経験が警鐘を鳴らしていた。



『はっはぁ!!』


ティラントが巨大な盾を叩き付ける。


褐色の重装甲が陽光を反射した。


魔王獣の爪が振り下ろされる。


だがティラントは退かない。


真正面から受け止める。


「巨人の盾≪ティラント・シールド≫!!!」


衝撃と共に地面が沈む。


しかし機体は動かない。


『そんなもんかぁ!!』


バルドが豪快に笑う。


まるで戦いそのものを楽しんでいるようだった。


周囲の騎士達も士気を上げる。


王国最強の盾。


その名に恥じない戦いだった。


だからこそ、彼もまた気付いていた。


「妙だな……」


小さく呟く。


誰にも聞こえない声。


だが長年戦場で生きてきた男の勘は鋭い。



同じ頃、王都。


「暇ですね…」


リアが言った。


「暇だな…」


レンも同意する。


宿のテラス。


街を見下ろしながらのんびりしていた。


ルウは朝からミストにもらった学術院の資料を読んでいる。


リアは飽きていた。


「大丈夫でしょうか…」


「大丈夫だろ。」


レンは適当に答える。


それだけ聞けば安心できる。


だがリアは少し首を傾げた。


「でもレンさん…」


「なんだ」


「難しい顔してます」


レンは返事をしなかった。


代わりに遠くを見る。


王都北方。


戦場の方向。


もちろん何も見えない。


だが。


嫌な感覚だけがあった。



 後方指揮所。


「オフィーリア様」


神殿騎士が駆け込んでくる。


「どうしました?」


「敵の行動パターンが変化しません…」


アリシアは瞬きをした。


「変化しない?」


「はい。まるでこのまま狩られるのを待っているおとなしい獣のようです。」


神殿騎士も困惑している。


「当初の作戦の情報で行けば、ここまで被害を受ければ行動変化が起こります」


「逃走」


「狂暴化」


「防御行動」


「何らかの反応があるはずなのですが……」


全くない。


魔王獣は最初から同じ行動を繰り返している。


まるで。


時間を稼いでいるように。


その考えが浮かんだ瞬間。


アリシアの背筋を冷たいものが走った。



『団長!』


『反応です!』


観測班の声が響く。


レオンが振り向く。


『どこだ』


『北方山脈です!』


『何?』


全員が凍り付いた。


北方山脈。


そこは戦場から遥か彼方。


今回の作戦区域外。


観測魔道具が映し出した光景に誰も言葉を失った。


巨大な魔力反応。


あり得ない数値。


計測不能。


『馬鹿な……』


ミストが呟く。


観測班も顔を青くしている。


『そんな反応は報告にありません!』


『観測ミスか!?』


『違います!』


誰かが叫ぶ。


その直後。


戦場全体を震わせる咆哮が響いた。


魔王獣バハルムではない。


もっと遠く。


もっと巨大な何か。


山脈の向こうから。


世界そのものを震わせるような咆哮だった。



 王都。


テラスにいたレンが空を見上げた。


風が変わる。


鳥達が一斉に飛び立つ。


何故か急にレンは立ち上がった。


「ルウ」


「はい」


「リア」


「はい!」


「ちょっと出るぞ」


リアが瞬きをする。


「え?」


レンは北を見ていた。


その表情からいつもの気怠さが消えている。


珍しく。


本当に珍しく。


面倒そうではなかった。


「どうしたんですか?」


リアが聞く。


レンは短く答える。


「どうも気になる事があってな。」


その一言で。


ルウの顔色が変わった。


レンの予感。


それが当たる時は。


大抵ろくなことにならない。


北方の空。


その遥か彼方で。


二体目の災厄が目を覚ましていた。


【機体図鑑 No.009】


 バンシー(Banshee)


■基本データ

 分類   試験・試作機兵

 ランク  RR

 フレーム タイプ・ソーサラー

 全高   4.8m

 カラー  紫黒×深藍

 役割   遠距離支援(魔法砲撃特化)

 操縦者  学園機兵隊・魔導師部隊


★機体概要

 魔核機セラフィムのデータをもとに製造された試作機

 魔法戦闘に特化して開発された後方支援型機兵。

 複数の浮遊魔導端末を備え、

 高出力魔法による制圧射撃と広域支援を得意とする。

 機動力と防御力は低いものの、

 優れた魔力制御能力によって遠距離戦では絶大な戦果を発揮。

 学園都市や魔導師部隊で運用され、歴史が浅い為に

 生産台数はまだ少ない。

 戦場の砲台として知られている。


読んでいただきありがとうございます。

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