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第十八話 最後の悪だくみ

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 王都滞在も数日が過ぎた。


リアは神殿や市場を見て回り。


ルウはミストの研究施設へ入り浸り。


レンはと言えば、その辺を適当に歩いていた。


仕事に来たのか。観光に来たのか。


本人にもよく分かっていなかった。



 その日の帰り道だった。


王都の市場は活気に満ちている。


食材、道具、衣類、雑貨。


ありとあらゆる物が売られていた。


人々の顔も明るい。


南部都市も最近は賑わってきたが、それでも王都とは比べ物にならない。


ふとルウが立ち止まった。



 パン屋の前。


焼き立ての香りが漂う。


子供達が笑っている。


買い物帰りの家族が談笑している。


ごく普通の光景だった。


ルウは少しだけ寂しそうな顔をした。


スラムには無かった。


あんな光景は。


寒さや飢え。


暴力や死。


そんなものばかりだった。


自分もいつ死ぬか分からなかった。


今こうして笑っていられるのは。


レン達に出会えたからだ。



 その夜


珍しくルウから話しかけた。


「レンさん」


「ん?」


「相談があります」


レンが少し驚く。


ルウは基本的に自分で考える。


助言は求めても。


相談は少ない。


「何だ」


「安いもので」


「保存できる食べ物を作りたいです」


レンが瞬きをした。


「王都を見て思いました」


「食材の相場が高いので」


「余裕のない人でももっと安く手に入れられる」


「食べ物がたくさんあったら」


「スラムなんてなくならないかなぁって。」


ルウは言う。


戦う力はない。


結界も張れない。


魔核機も作れない。


けれど。誰かを助ける方法はあるかもしれない。


「飢饉の時に使える物」


「兵士が持ち運べる物」


「保存できる食べ物」


ルウは真剣だった。


「僕も役に立ちたいです」


レンはしばらく考えた。


そして静かに頷く。


「偉いな。」


実際のところ。


途中からレンの頭の中は別方向へ走っていた。


(久しぶりにあれ食いたいな)


である。



 翌日。


研究施設。


ルウ。


ミスト。


レン。


三人による開発が始まった。


薄く切る。


乾燥させる。


油で揚げる。


塩を振る。


途中。


ミストが何度も首を傾げた。


「本当に保存食?」


「たぶん」


ルウは答えた。


たぶんだった。



 数時間後。


試作品が完成した。


大皿の上。


山のように積まれた。


薄いジャガ芋。


きつね色。


香ばしい匂い。


見た目は地味だった。


「できました」


ルウが少し誇らしそうに言う。


「これが保存食です」


試食会が始まった。


最初に手を伸ばしたのはリアだった。


一枚摘まむ。


口へ入れる。


パリッ。


小気味よい音。


リアの目が丸くなる。


「え?」


もう一枚。


パリッ。


「なにこれ」


さらにもう一枚。


「おいしいです!」


止まらなくなった。


アリシアも興味を持った。


一枚摘まむ。


パリッ。


数秒。


無言。


そして。


もう一枚。


「……不思議ですね」


さらにもう一枚。


「味付けは単純なのに」


さらにもう一枚。


「手が止まりません」


珍しく年相応の少女らしい笑顔だった。


バルド。


一掴み。


パリパリパリパリ。


「うまい!」


即答。


レオンも食べる。


一枚。


二枚。


三枚。


「……うまいな」


真顔だった。


その真顔が逆に面白い。


ミストは分析しながら食べる。


「食感」


パリッ。


「塩分」


パリッ。


「油分」


パリッ。


「計算されて――」


パリッ。


止まっていなかった。


ノアが言う。


『異常を確認』


『摂取速度が増加しています』


『危険な食べ物です』


誰も聞いていない。


ルウは少し安心した。


皆喜んでいる。


思っていた以上に好評だった。


「成功ですかね」


嬉しそうに呟く。


しかし、ミストは少し言いにくそうな顔をした。


「うん。美味しいんだけどねぇ・・」


ルウの顔が明るくなる。


「でもね」


嫌な予感。


「保存食には向かないとおもうよ。」


沈黙。


「え?」


ミストが指を折る。


「湿気がくる。」


「え?」


「もろい」


「え?」


「味がすぐおちる」


「え?」


追撃は終わらない。


バルドが手を挙げる。


「仮に傾向してもだ。」


「俺なら途中で全部食う」


レオンも頷く。


「私も食う」


アリシアが少し考える。


「私もたぶん食べてしまいますね」


リアも元気よく頷く。


「私もです!」


ルウ。


完全敗北だった。


「えぇ……」


肩を落とす。


保存食計画。


終了のお知らせである。


その時だった。


パリッ。


実に良い音がした。


全員の視線が集まる。


レンだった。


満足そうに。


実に満足そうに。


薄いジャガ芋を食べている。


「うまい」


幸せそうだった。


ルウがじっと見る。


レンを見る。


薄いジャガ芋を見る。


レンを見る。


「もしかして」


レン。


嫌な予感。


「最初から」


「これが食べたかっただけですか?」


沈黙。


全員がレンを見る。


レン。


もう一枚摘まむ。


パリッ。


「……何の話だ」


目を逸らした。


ルウ確信。


「はめられた……」


本気で呟いた。


「保存食を作る話だったのに……」


「まぁ、料理レパートリーは増えただろ?」



 肩を落とす。


バルドが大笑いする。


「お前か!」


ミストが頭を抱える。


「美味しかったけど、ルウくん可哀そ」


レオンが呆れる。


「エナドリに続き、よくやる・・」


三人だけが妙に納得していた。


アリシアとリアは顔を見合わせる。


「?」


何がそんなに面白いのか分からない。


アリシアが首を傾げる。


「この料理を皆さんはご存じなのですか?」


ミストが苦笑する。


「これ、私たちにしかわからないカルマみたいなものなの」


「だな。思い出の味だ。」


それだけだった。


リアもルウも意味が分からない。


「?」


三人の元プレイヤーだけが理解している。


そんな空気だった。


だが落ち込んでいたルウも。


周囲を見て少しだけ笑った。



皆喜んでいる。


皆笑っている。


皆美味しそうに食べている。


なら、成功なのかな…?


「まあ、街の名物にはなるんじゃないのか?」


「これはこれで成功です」


レンも頷く。



「大成功だ」


そして。


思い出したように言った。


「ああ、そうだ」


全員が見る。


「食った後に武器持つなよ」


沈黙。


「……はい?」


リアが首を傾げる。


「油でギトギトになる」


再び沈黙。


リアの顔が青ざめた。


想像してしまったのだ。


シルフィネの操縦席。


操縦桿が全部ベタベタ。



「だ、だめです!」


「シルフィネちゃんが!」


「操縦桿がギトギトになります!」


本気だった。


バルドが笑う。


「罠だよなぁ」


「ゲーム時代も色々犠牲になった」


ミストも遠い目をした。


「そこはまあ……」


「コントローラーとか、ボードとか・・」


レオンも頷く。


「接種量を考えないと、カロリーの暴力もあるし」


リアは理解できない。


「危ない食べ物なんですか!?」


アリシアも困惑している。


「美味しいのにですか?」


三プレイヤーが同時に頷いた。


「美味しいからだ」


レンも当然のように頷く。


「美味しいからだ」


ノアが呟いた。


『理解不能』


『危険性を理解しながら摂取を継続しています』


『人類は非合理的です』


誰も反論できなかった。



後に。


この薄いジャガ芋は『ポ〇チ』と呼ばれ。


王都から王国全土へ広がることになる。


兵士。


冒険者。


神官。


貴族。


誰もが食べた。


そして数か月後。


「誰だ資料を汚したのは!」


「ポ〇チ持ち込み禁止だ!」


そんな悲鳴が各地で上がることになるのだが。


それはまた別の話である。


【機体図鑑 No.007】


 パワード(Powered)


■基本データ

 分類   汎用機兵

 ランク  R

 フレーム タイプ・グラディス

 全高   約 5.0m

 カラー  黒鉄・(冒険者による塗装多数)

 役割   前線維持・近接戦闘

 操縦者  王国軍・冒険者・傭兵


★機体概要

 最も広く普及している標準型汎用機兵。

 特別優れた性能は持たないが、

 扱いやすさと整備性の高さから、

 王国軍や冒険者を中心に広く運用されている。

 頑丈な装甲と安定した性能を持ち、

 様々な武装や追加装備に対応可能。

 古代機兵の設計思想を受け継ぎ、

 数百年にわたり第一線で使用され続けてきた名機である。


軽くありがちな転生知識チート回でした。

エナドリと言ったらポテチでしょ…位のノリで(笑)


読んでいただきありがとうございます。

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