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第十七話 王都会議

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 あれだけ全く行く気のなかった王都に行くことになってしまった…


招待状を受け取った時も。


次の日も


レンは最後まで行く気がなかった。


その意思は変わらなかった。


だが見てしまう。


「王都……」


珍しく反応したルウの姿。


王都にしかない本屋。図書館。薬学研究施設。


王都にはルウが好きそうなものが山ほどある。


本人は感情をあまり表に出さない。


それでも興味があることだけは分かりやすかった。


「行ってみたいです…」


小さな声だった。


ルウから自分の希望を口にすることは珍しい。


レンはそのつぶやきを聞いてしまった。


そして。


「はぁぁぁ…」


折れた。


リアは思わず笑った。


結局、レンは子供達に甘かった。


「でも他はさすがに置いていくぞ。旅費がかかるからな。」


「ノアが居たら平気だな。」


『おまかせください』


この一言がなかったらもっとよかったのに。


リアは思った。



 王都中央会議場。


王国の中枢。


高位貴族。


神殿幹部。


騎士団将官。


名のある学者。


国を動かす人間達が集まる場所だった。


そんな場所を。


レン達は歩いていた。


使い込まれた外套。


普通の冒険者装備。


子供二人を連れた中年男。


どう見ても場違いだった。


当然視線が集まる。


「誰だ?」


「冒険者か?」


「会議関係者には見えんが……」


ひそひそ声が聞こえる。


リアは少し肩を縮めた。



 さらに奥。


貴族達の声が耳に入る。


「何と場違いな……」


「子供まで連れているぞ」


「随分と貧相な身なりだ」


「誰かの使用人ではないか?」


リアは俯いた。


ルウも少し居心地が悪そうだった。


その様子を見たレンが言う。


「気にするな」


「でも……」


「どうせ会議が始まれば静かになる」


レンは平然としていた。


昔から慣れている。


人は見た目で判断する。


それだけの話だった。



 やがて会議室の扉が開く。


中にいた者達に一同が一斉に振り返る。


そして最初に声をかけたのはレオンだった。


「来たか」


続いて、ミストが笑顔を見せる。


「お待ちしていました」


バルドが豪快に笑う。


「遅かったな!」


そしてアリシアが優雅に一礼した。


「ようこそお越しくださいました」


会議室が静まり返る。


王国最強騎士。


軍部の英雄。


王国最高峰の研究者。


神殿実質第二位。


その全員が。


くたびれた者たちに第一声をかけを迎えていた。


先程まで嘲笑していた者達は固まるしかなかった。



「で…席はどこだ?」


レンだけがいつも通りだった。



 会議はすぐに始まった。


中央には巨大な地図。


その周囲に配置図。


補給線。


避難経路。


そして巨大な魔獣模型。


レオンが立ち上がる。


「対象はS級レイド魔獣」


空気が引き締まる。


「魔王獣バハルム」


国家災害級。


過去に幾つもの都市を壊滅寸前まで追い込んだ怪物だった。



 続いてバルド。


「第一迎撃線は王国騎士団と辺境伯軍」


「第二迎撃線は学園機兵部隊」


「第三迎撃線は神殿軍」


巨大な地図に駒が置かれていく。


経験豊富な指揮官らしい説明だった。



 さらにミスト。


「弱点は巨体ゆえの関節部」


「腹部にある死角」


「眼球周辺及び逆鱗部」


過去の戦闘記録。


損傷分析。


行動傾向。


膨大な資料が並ぶ。


誰が見ても周到だった。


勝つための準備は整っている。


会議参加者達も安心した様子だった。



 だが。


レンは資料を見ながらずっと黙っていた。


魔王獣バハルム


ゲームでは王都より北の山岳地帯より現れ


王都に迫ってきたこの魔獣によって都市は半壊


壊滅寸前の王国軍の報を受けて


第三迎撃線指揮を執っていたアリシアが囮を買って出る。


聖女として少数部隊で前線へ出向き


大型魔獣に立ち向かい


凄惨な最期を遂げる。

 

そういうイベントがあった。

 

おそらく、ここにいる3人はこの未来を知っている。


そして、これはおそらくアリシアを救う為のレイドなのだろう。


軍編成の動き、同行がゲーム進行より早い。


この前森に来た時のレオンの発言を思い出す。


(「予想より早い」とはこのことか…)



 会議が終わる。


参加者達が退出していく。


やがて部屋に残ったのは。


レオン。


ミスト。


バルド。


アリシア。


そしてレン達だけだった。



 レンが口を開く。


「一つ聞いていいか」


「何だ」


レオンが答える。


「なんで俺を呼んだ」


沈黙。


レンは資料へ視線を落とす。


「S級一体なら足りてるだろう」


「お前ら三人で十分勝てそうだが」


「王国軍も神殿軍もいる」


「保険にしては大げさだ」


もっともな意見だった。



 レオンは腕を組む。


「保険…それは建前だ」


レンが眉を上げる。


「本音は?」


レオンは小さく息を吐いた。


「お前に2人を会わせたかった」


レンが固まる。


「は?」


本気で意味が分からない顔だった。



 今度はバルドが笑う。


「俺も同じだ」


「一度会ってみたいと思っててよ。」


ミストも頷く。


「私もね。」


「あっちでは見ただけで話したことなかったし。」


レンは露骨に嫌そうな顔になる。


「このタイミングかよ…」


「まぁ数少ない同士なんだ。逢いたくもなるものだ。」


レオン即答。



 アリシアが小さく笑う。


「やはり皆さんは何所か似てる雰囲気ですね。」


「貴方が思っている以上に貴方はこの場に合っていますよ。」


レンはさらに嫌そうな顔になった。


リアは思わず吹き出しそうになる。



 その時だった。


レンが荷物を漁り始める。


「そういえば忘れていた」


ごそごそ。


小瓶を取り出す。


「土産だ」


机の上へ並べた。


『翼を授ける薬』


沈黙。


「おい」


バルド。


「おい」


レオン。


「おい」


ミスト。


三人同時だった。


「まぁ、景気付けだ。」


レンがニヤリと笑う。



「ルウが作った」


レンが言う。


「飲んでみろ」


最初に飲んだのはバルドだった。


一口。


そして固まる。


「……懐かしいな」


ぽつりと呟く。


「徹夜で攻略していた頃を思い出す」


豪快な男が珍しく遠くを見るような顔をした。



レオンも飲む。


一口。


そして、もう一口。


そして頷いた。


「近い」


「かなり近い」


素直に驚いているようだった。



ミストは真顔だ。


一口飲む。


固まる。


もう一口飲む。


さらに固まる。


「再現率が高すぎる」


「これどうやったら出来るのよ…」


「薬草です」


ルウが答える。


「ほぼ薬草だけです」


ミストが頭を抱えた。



「まだあります」


ルウが自分の鞄から新たに瓶を取り出す。


「三本傷のやつです」


取り出す。


「黒いやつです」


取り出す。


「緑のやつです」


取り出す。


丁寧に瓶の色も併せて似たラベルを張っていた。


三人のプレイヤーは天井を見上げた。


「やめろ……」


バルドが呟く。


「何故ある…」


レオンが珍しく同意した。



沈黙してたミストが一瞬震え、目が変わった。


完全に研究者の目だった。


「ルウ君」


「はい」


「本は好きかい?」


「好きです」


「研究は?」


「好きです」


「薬は?」


「大好きです」


ミストが立ち上がる。


満面の笑みだった。



「王都中央図書館」


「閲覧自由」


「研究施設」


「利用自由」


「薬草温室」


「利用自由」


「研究室」


「利用自由」


「試薬」


「使い放題」


条件がどんどん増えていく。


ルウの目が揺れる。


かなり揺れる。



 リアは焦った。


今まで見たことがないほど。


ルウが本気で心を動かされている。


「ルウちゃん……」


少し寂しかった。



 そんな様子を眺めながら。


アリシアは小さく微笑む。


重苦しい会議の後とは思えない光景だった。


その視線はやがて机の上の資料へ向く。


魔王獣バハルム。


万全の布陣。


十分な戦力。


それでも消えない違和感。


レオンも。


レンも。


同じものを感じている。


アリシアの胸にも。


小さな不安が残っていた。


まるで。


嵐の前の静けさのように。


読んでいただきありがとうございます。

私のモチベーションも★★★★★チャージしてほしいです(笑)

喜びます。

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