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第十六話 王都からの招待状

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 春の森は静かだった。


風が木々を揺らし、小鳥の鳴き声が響く。


そんな穏やかな昼下がり。


森の入口で見張りをしていたレオは眉をひそめた。


「またか……」


森の入り口から


単身こちらに向かって歩いてくる人影が


結界の外に見える。


見覚えがある奴だった。


銀色の鎧を纏う隙のない立ち姿。


王国最強騎士。


レオンだった。


纏う空気は重い。


忙しい人間がわざわざここへ来る。


それだけで嫌な予感しかしない。



 レオンは結界を抜ける。


相変わらず異常だった。


森の空気が違う。


気候が違う。


生き物の様子が違う。


結界の内側だけ別世界だ。


王都の学者達が見たら発狂する。


そんなことを考えながら歩いていると。


「よう。今度はなんだ?」


レンがいた。


木材を運んでいる。


相変わらず冴えない中年男にしか見えない。


だが、レオンは知っている。


この男がどれだけ異常かを。


「話がある」


「断る」


まだ内容を言っていない。


レオンは額を押さえた。


予想通りだった。


「せめて聞いてから断れ」


「聞くと面倒事が増える」


「増えるな」


「なら断る」


即答だった。


昔から変わらない。



食堂へ移動する。


リアがお茶を運んでくる。


今日はいつもの談笑している雰囲気ではない。


リアは気になりちらちらとレオンを見ている。


不安そうだった。


無理もない。


この雰囲気は絶対に重要な話だ。


良い話より悪い話を想像する。


「何かあったんですか?」


リアが恐る恐る聞いた。


レオンは少しだけ表情を和らげる。


「君達が心配する話ではない」


だがその言葉は逆に不安を煽った。


リアの肩が少し強張る。


ルウも静かに話を聞いていた。



その時だった。


ふわり。


白いぬいぐるみのような妖精が現れる。


『来客を確認』


『騒がしいですね』


ノアだった。


レオンの顔が引きつる。


毎回これだ。何度見ても慣れない。


おそらくゲームであった「マスコット」だろう


「それは何だ」


『ノアです』


「それは知っている」


『賢いですね』


「褒めていない」


『残念です』


レンが吹き出した。


リア達もすっかり慣れている。


慣れていないのはレオンだけだった。


王国最強騎士。


大型魔獣を前にしても


顔色一つ変えない男が


ノアには少し驚いた。


何所で手に入れてきたのやら…


「相変わらず理解不能だな」


『同意』


「お前が言うな」


食堂の空気が少しだけ和らぐ。


リアも小さく笑った。



 ようやく本題に入る。


レオンは真顔になった。


「王都近郊で大型レイドの兆候が出ている」


食堂の空気が変わった。


リアの笑顔が消える。


レイドという言葉の意味は少しは知っている。


大型魔獣の出現。


それに伴う大掛かりな討伐の事だ。


冒険者ギルドの依頼でたまに話題になる事もある。


でもそれを、国が主導して行う規模。


どれだけ強力な魔獣かそれだけで予想できる。


「そうか」


「そうかじゃない」


レオンが低く言う。


「予想より早い」


「規模も大きい」


「国も動いている」


そこで一枚の書類を机に置いた。


「今度対策会議がある」


レンは書類を横目で見た。


書類を手に取ろうとはしない。


「断る」


「だから最後まで聞け」


レオンが珍しく苛立つ。


レンは肩を竦めた。


「亀の俺に何を話せと言う」


「王都には英雄も将軍もいる」


「そっちへ聞け」


レンはゲーム時代の周りからの自分の評価をこう解釈している。


ランク外の趣味特化亀職。


自分でも自覚がある。


だがレオンは鼻で笑った。


「その言い訳は聞き飽きた」


即答だった。


「王都の連中や他なら騙せるかもしれん」


「俺には通用せん」


レンが眉を上げる。


「お前は実力を隠し過ぎだ」


そもそも狩り好きでもなく必要以上に戦いたくない。


関わる気は毛頭なかったが


レオンのその言葉に少し意外だと感じて頭を掻いた。



 リアは黙って話を聞いていた。


大型レイド、会議、王都。


どれも普段ならなじみない単語ばかりだ。


レオンは焦っている。


話が進む度に徐々に声が大きくなっている。


レンの態度の悪さが


大半を占めているのだろうが


事の重大さをわかってほしいという


真剣さもある。


それが分かる。


子供がいる手前そこまで態度には出していないのだろう。


時間がない。


そんな焦りが見え隠れする。


「そんなに危ういのですか?」


リアは思わず聞いていた。


レオンは少しだけ考える。


そして渋々、正直に答えた。


「あまり良くはない」


リアの顔が曇る。


「だが今すぐではない」


「準備する時間はある」


少し安心する。


だが不安は消えなかった。



 その間。


レオはずっとレオンを見ていた。


本人は隠しているつもりだ。


全く隠れていない。


憧れ、尊敬、顔に出ている。


レオンも気付いていた。


「何だ」


「え?」


「さっきから見ている」


レオが固まる。


耳まで赤くなった。


「いや……」


「その……」


言葉が続かない。


「格好いいなと思って」


やっと言葉を出した。


レオンは少しだけ笑う。


本当に少しだけ。


「そうか」


レオは嬉しそうだった。



話し合いは結局平行線だった。


「来い」


「断る」


「来い」


「断る」


何度目か分からない。


レオンは諦めたように息を吐く。


そして立ち上がった。


「招待状だけ置いていく」


「いかないぞ」


「どうせ来る」


レンが眉をひそめる。


「なぜそう思う」


「お前は趣味人だからな。」


「国内中の機兵が集まるイベントを見逃すのか?」


レオンは知っていた、レンという人間を。


「参加しないにしろ見たいだろ?」


「そういう男だ」


レンは何も答えなかった。


(こいつ最後に餌巻いていきやがった…)



帰る前。


レオンはレオへ声を掛ける。


「剣は続けているか」


「はい!」


返事が大きい。


「そうか」


レオンは少し考えた。


「一本だけ付き合え」


レオの目が見開かれる。


リア達も驚いた。


そして。


レンだけが小さく笑った。


どうやら今日の来客の用事は


まだ終わりではないらしい。


【機体図鑑 No.006】


 ワーウルフ(Warwolf)


■基本データ

 分類   汎用機兵

 ランク  RR

 フレーム タイプ・ビースト

 全高   約 4.9m

 カラー  黒鉄

 役割   近接戦闘・突破・追撃

 操縦者  王国騎士団・傭兵


★機体概要

 人狼を模した外装を持つ近接戦闘型機兵。

 獣型フレームによる高い運動性能と、

 鋭い爪による白兵戦能力を特徴とする。

 主に王国騎士団や辺境守備隊で運用されており、

 機動力を活かした遊撃戦や敵陣突破を得意とする。

 魔核機には及ばないものの、

 優れた近接戦闘能力を持ち、

 多くの戦場で活躍している主力機兵の一つ。


読んでいただきありがとうございます。

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