第十六話 王都からの招待状
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
春の森は静かだった。
風が木々を揺らし、小鳥の鳴き声が響く。
そんな穏やかな昼下がり。
森の入口で見張りをしていたレオは眉をひそめた。
「またか……」
森の入り口から
単身こちらに向かって歩いてくる人影が
結界の外に見える。
見覚えがある奴だった。
銀色の鎧を纏う隙のない立ち姿。
王国最強騎士。
レオンだった。
纏う空気は重い。
忙しい人間がわざわざここへ来る。
それだけで嫌な予感しかしない。
◇
レオンは結界を抜ける。
相変わらず異常だった。
森の空気が違う。
気候が違う。
生き物の様子が違う。
結界の内側だけ別世界だ。
王都の学者達が見たら発狂する。
そんなことを考えながら歩いていると。
「よう。今度はなんだ?」
レンがいた。
木材を運んでいる。
相変わらず冴えない中年男にしか見えない。
だが、レオンは知っている。
この男がどれだけ異常かを。
「話がある」
「断る」
まだ内容を言っていない。
レオンは額を押さえた。
予想通りだった。
「せめて聞いてから断れ」
「聞くと面倒事が増える」
「増えるな」
「なら断る」
即答だった。
昔から変わらない。
◇
食堂へ移動する。
リアがお茶を運んでくる。
今日はいつもの談笑している雰囲気ではない。
リアは気になりちらちらとレオンを見ている。
不安そうだった。
無理もない。
この雰囲気は絶対に重要な話だ。
良い話より悪い話を想像する。
「何かあったんですか?」
リアが恐る恐る聞いた。
レオンは少しだけ表情を和らげる。
「君達が心配する話ではない」
だがその言葉は逆に不安を煽った。
リアの肩が少し強張る。
ルウも静かに話を聞いていた。
◇
その時だった。
ふわり。
白いぬいぐるみのような妖精が現れる。
『来客を確認』
『騒がしいですね』
ノアだった。
レオンの顔が引きつる。
毎回これだ。何度見ても慣れない。
おそらくゲームであった「マスコット」だろう
「それは何だ」
『ノアです』
「それは知っている」
『賢いですね』
「褒めていない」
『残念です』
レンが吹き出した。
リア達もすっかり慣れている。
慣れていないのはレオンだけだった。
王国最強騎士。
大型魔獣を前にしても
顔色一つ変えない男が
ノアには少し驚いた。
何所で手に入れてきたのやら…
「相変わらず理解不能だな」
『同意』
「お前が言うな」
食堂の空気が少しだけ和らぐ。
リアも小さく笑った。
◇
ようやく本題に入る。
レオンは真顔になった。
「王都近郊で大型レイドの兆候が出ている」
食堂の空気が変わった。
リアの笑顔が消える。
レイドという言葉の意味は少しは知っている。
大型魔獣の出現。
それに伴う大掛かりな討伐の事だ。
冒険者ギルドの依頼でたまに話題になる事もある。
でもそれを、国が主導して行う規模。
どれだけ強力な魔獣かそれだけで予想できる。
「そうか」
「そうかじゃない」
レオンが低く言う。
「予想より早い」
「規模も大きい」
「国も動いている」
そこで一枚の書類を机に置いた。
「今度対策会議がある」
レンは書類を横目で見た。
書類を手に取ろうとはしない。
「断る」
「だから最後まで聞け」
レオンが珍しく苛立つ。
レンは肩を竦めた。
「亀の俺に何を話せと言う」
「王都には英雄も将軍もいる」
「そっちへ聞け」
レンはゲーム時代の周りからの自分の評価をこう解釈している。
ランク外の趣味特化亀職。
自分でも自覚がある。
だがレオンは鼻で笑った。
「その言い訳は聞き飽きた」
即答だった。
「王都の連中や他なら騙せるかもしれん」
「俺には通用せん」
レンが眉を上げる。
「お前は実力を隠し過ぎだ」
そもそも狩り好きでもなく必要以上に戦いたくない。
関わる気は毛頭なかったが
レオンのその言葉に少し意外だと感じて頭を掻いた。
◇
リアは黙って話を聞いていた。
大型レイド、会議、王都。
どれも普段ならなじみない単語ばかりだ。
レオンは焦っている。
話が進む度に徐々に声が大きくなっている。
レンの態度の悪さが
大半を占めているのだろうが
事の重大さをわかってほしいという
真剣さもある。
それが分かる。
子供がいる手前そこまで態度には出していないのだろう。
時間がない。
そんな焦りが見え隠れする。
「そんなに危ういのですか?」
リアは思わず聞いていた。
レオンは少しだけ考える。
そして渋々、正直に答えた。
「あまり良くはない」
リアの顔が曇る。
「だが今すぐではない」
「準備する時間はある」
少し安心する。
だが不安は消えなかった。
◇
その間。
レオはずっとレオンを見ていた。
本人は隠しているつもりだ。
全く隠れていない。
憧れ、尊敬、顔に出ている。
レオンも気付いていた。
「何だ」
「え?」
「さっきから見ている」
レオが固まる。
耳まで赤くなった。
「いや……」
「その……」
言葉が続かない。
「格好いいなと思って」
やっと言葉を出した。
レオンは少しだけ笑う。
本当に少しだけ。
「そうか」
レオは嬉しそうだった。
◇
話し合いは結局平行線だった。
「来い」
「断る」
「来い」
「断る」
何度目か分からない。
レオンは諦めたように息を吐く。
そして立ち上がった。
「招待状だけ置いていく」
「いかないぞ」
「どうせ来る」
レンが眉をひそめる。
「なぜそう思う」
「お前は趣味人だからな。」
「国内中の機兵が集まるイベントを見逃すのか?」
レオンは知っていた、レンという人間を。
「参加しないにしろ見たいだろ?」
「そういう男だ」
レンは何も答えなかった。
(こいつ最後に餌巻いていきやがった…)
◇
帰る前。
レオンはレオへ声を掛ける。
「剣は続けているか」
「はい!」
返事が大きい。
「そうか」
レオンは少し考えた。
「一本だけ付き合え」
レオの目が見開かれる。
リア達も驚いた。
そして。
レンだけが小さく笑った。
どうやら今日の来客の用事は
まだ終わりではないらしい。
【機体図鑑 No.006】
ワーウルフ(Warwolf)
■基本データ
分類 汎用機兵
ランク RR
フレーム タイプ・ビースト
全高 約 4.9m
カラー 黒鉄
役割 近接戦闘・突破・追撃
操縦者 王国騎士団・傭兵
★機体概要
人狼を模した外装を持つ近接戦闘型機兵。
獣型フレームによる高い運動性能と、
鋭い爪による白兵戦能力を特徴とする。
主に王国騎士団や辺境守備隊で運用されており、
機動力を活かした遊撃戦や敵陣突破を得意とする。
魔核機には及ばないものの、
優れた近接戦闘能力を持ち、
多くの戦場で活躍している主力機兵の一つ。
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