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第十五話 変わりゆく町

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 春のような陽気が南部都市を包んでいた。


カイルは町の入口で足を止める。


見慣れたはずの景色。


だが、どこか違って見えた。


「どうかしましたか?」


隣を歩いていたシーナが聞く。


「いや」


カイルは町を見渡した。


「変わったなと思ってね」


マルも足を止める。


確かにそうだった。


一年前。


ここは希望のない町だった。


仕事はない。


食べ物もない。


冬になれば死人が出る。


スラムでは明日を生きられる保証すらなかった。


寒波の頃はもっと酷かった。


凍えた人々。


空腹に苦しむ子供達。


あの頃の光景は今でも忘れていない。


だが、今の町は違う。


荷馬車が行き交う。


商人が呼び込みをしている。


子供達が走り回る。


以前は閉じていた店まで開いていた。


笑い声が聞こえる。


それだけでまるで別の町のようだった。


「人が増えましたね」


マルが言う。


「ああ」


カイルも頷く。


神殿関係者。


商人。


巡礼者。


職人。


南部都市へ来る人間は日に日に増えていた。



 三人が中央広場へ向かう。


そこでマルは思わず立ち止まった。


「あ」


広場の中央。


そこには巨大な妖精王像が立っている。


自分で作った像だった。


だが、以前とは様子が違う。


花が供えられている。


像の周囲には小鳥が集まっていた。


近くの木にはリスがいる。


小さな子供達が像の周りで遊んでいる。


老人達は木陰で談笑していた。


穏やかな光景だった。


「何かお供え増えてません?」


マルが言う。


「増えたわね。」


シーナが像を見て言った。


像の周囲だけあきらかに空気が違う。


暖かい。穏やかだ。


春だからでは説明できない。


最近では神官達まで調査に来ているらしい。


気候の安定。


動物の増加。


植物の生育。


全てが異常なほど良い。


神殿が聖地候補として考え始めた理由の一つでもある。


「マル先生!」


突然声が飛んだ。


「え?」


振り返る。


見知らぬ子供だった。


「像作った人ですよね!」


「そうだけど」


「子供なのに父ちゃんが凄いって言ってた!」


「そうなの?」


「うん!」


満面の笑み。


そしてそのまま走り去っていった。


マルはしばらく固まっていた。


「先生って何だ」


「知りません」


シーナが答える。


本人達も分かっていない。



 その後も似たようなことが続いた。


「カイル君!」


市場のおばちゃんに呼び止められる。


「この前紹介してくれた子、頑張ってるよ!」


「そうですか」


「本当に助かったよ!」


深々と頭を下げられる。


カイルは困った。


最近はちょっとしたことでお礼を言われる。

 

でも嬉しそうに話す姿を見ると悪い気はしなかった。


少し先では。


「シーナ!」


今度は工事現場の職人だった。


「紹介ありがとう!」


「いえ」


「家族も助かったよ!」


職人は何度も頭を下げている。


シーナは冷静なよそ行きの笑顔をしていた。


しかし二人には照れ隠しの笑顔に見えていた。


耳が少し赤かった。



 やがて三人はいつもの屋台へ辿り着く。


マルシーナ斡旋所。


まだそこまで大きくない。


小さな仕事紹介所だ。


木製の屋台一つ。


看板一枚。


まだそれだけの受付所で


お手伝いの人たちが忙しそうに働いている。


「利用してくれる人増えましたね」


マルが言う。


列が出来ていた。


仕事を探す者。


人手を探す者。


資材運搬の依頼。


清掃作業。


神殿関係の工事や


炊き出しの職員募集。


以前とは比べ物にならない。


「順調です」


シーナが帳簿を確認する。


「利益も少しずつ出ています」


「良かったな」


カイルが言う。


「利益ももちろんうれしいけど…」


シーナは屋台の前を見る。


そこで。


元浮浪者だった男が笑っていた。


神殿工事の仕事を受けたらしい。


その隣には家族がいる。


子供が笑っている。


「皆がもっとおなか一杯になったらいいな。」


シーナは静かに言った。


「それが一番」


その言葉にカイルもマルも頷いた。


最初からそうだった。


儲けるためではない。


皆で生きるためだった。



 昼過ぎ。


神殿での打ち合わせを終えた帰り道。


三人は偶然神官達の会話を耳にした。


「森の申し子達か」


「ああ年端も行かぬ子供なのに」


「アリシア様のお気に入りだな」


「当然だろう」


「この街での功績を考えれば…」


三人は顔を見合わせる。


聞かなかったことにしよう。


そう思った…


でも耳に入って来る。


「実際、あの子達がいなければ南部都市はここまで復興していない」


「救世主みたいなものだ」


「言い過ぎだろ」


「いや本気でそう思ってる町民ばかりだぞ」


「実際我々だけだとこうも支持を得られなかったと思う。」


カイルは頭を抱えた。


マルも同じだった。


シーナは深いため息を吐いた。


「恥ずかしいですね」


「恥ずかしいな」


「恥ずかしいですね」


三人とも同意だった。



 夕方。


森への帰り道。


南部都市を振り返る。


春風が吹いていた。


あの日。


飢えていた自分達がいた町。


絶望しかなかった町。


その町に。


今は少しだけ未来が見えている。


神殿が来る。


仕事が増える。


人が増える。


子供達も生きていける。


まだ始まったばかりだ。


それでも。


確実に変わり始めていた。


「これから良い町になりそうだね」


カイルが言う。


「なりますよ絶対。」


シーナが答える。


「してみせる」


珍しく強い口調だった。


マルは笑う。


「じゃあ俺は像をまた作る」


「それしかないのか」


「それしかない」


三人は笑った。



森の結界が見えてきた。


帰る場所。


森の家はもうすぐ卒業する


自分達は自分の意志で南部の町に居場所を作りたい。


ずっとお世話になるわけにはいかない。


でもあと少しだけ甘えさせてほしい。


町の復興を見て改めて思う。



その時。


工房の方から盛大な爆発音が響いた。


ドォォン!


三人は立ち止まる。


顔を見合わせる。


「またか…」


「またですね…」


「まただね…」


不思議と安心した。


町は変わった。


自分達も変わった。


けれど森の家だけは変わらない。


工房の扉が開く。


真っ黒になったトトが飛び出してきた。


「成功しました!」


「失敗じゃなかったの?」


「今回は成功です!」


元気だった。


三人は思わず笑う。


やさしい風が三人をつつむ。


三章 前半終了です。

ここから、展開が変わっていく予定です。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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