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第十三話 森の申し子

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 春の陽気が森を包んでいた。


寒波の傷跡はまだ残っている。


だが、それでも世界は少しずつ前へ進んでいた。


森の家の畑ではリアとルウが薬草の収穫をしている。


工房ではトトが木材を運び回っていた。


いつも通りの日常。


ただ一つ違うことがある。


今日は朝からカイル、マル、シーナの三人が南部都市へ出掛けていた。


神殿から招待を受けたのだ。


将来の話。


今後の協力体制。


そして南部都市の復興について。


様々な話し合いが行われるらしい。


「遅いですね」


リアが森の入口を見る。


「遅いです」


ルウも同意した。


「迷子になったんじゃないですか?」


工房から顔を出したトトが言う。


「お前じゃあるまいし」


レンが即座に返した。


「失礼な」


「事実だ」


「反論できません」


トトは素直だった。


その時だった。


「あっ!」


ルウが声を上げる。


森の入口に三人の姿が見えた。


リアが勢いよく立ち上がる。


「どうでした!?」


まだ家の門にも着いていない。


「早いな」


カイルが苦笑した。


「で、どうだったんですか!?」


リアは3人に聞いた。


カイル達は顔を見合わせる。


そして。


「なんかすごく歓迎された」


カイルが言った。


一瞬、リア達は意味を考えた。


「歓迎?」


「うん。歓迎」


今度はシーナが補足する。


「正直、私達の方が驚きました」



 夕食。


当然のように祝いになった。


トトが勝手に肉を追加した結果である。


「出費が増えた」


レンが言う。


「祝い事です」


トトが胸を張る。


「まぁな。」


だから何も言わない。


食卓が賑やかになる。


「それで?」


リアが聞く。


「歓迎って何ですか?」


シーナが説明を始めた。


「神殿側から今後の協力をお願いされました」


「お願い?」


「はい」


「受け入れるというより、一緒にやりたいという話ですね」


リア達が目を丸くする。


カイルも苦笑した。


「俺も驚いた」


「当然神殿の大人たちが仕切って」


「施設も運営してしていってくれると思ってたから」


「そのつもりで参加したんだけど」


「今後も運営を頼まれました。」


「資金は神殿が出してくれるらしいです。」


「神殿の神官たち中から、偉そうな大人が出てくると思って構えてたら」


「アリシア様が声かけてきてとても親切だった」


リアが納得する。


どうやらアリシアがどれ程の要人か


子供たちはピンと来ていないらしい


「アリシアさん、神殿で2番目に偉い人ですよ」


リアが小声でつぶやく。


いやその認識があるのに


あれだけ友達付き合いできるのもすごいと思うぞ。


レンは思ったが言わない


「まずお礼を言われた」


マルが言った。


「お礼?」


「南部都市の復興に協力してくれてありがとうって」


「孤児支援」


「治安改善」


「仕事作り」


「薬草供給」


シーナが数える。


「神殿だけでは難しかったそうです」


「だから無茶苦茶感謝されました!」


神殿としても。


今後も一緒にやっていきたい。


そう言われたらしい。


「凄いです!」


リアが目を輝かせる。


「そうかな」


カイルは照れ臭そうだった。



「それだけじゃありません」


シーナは続けた。


「アリシア様がかなり根回しをしてくれてました」


「根回し?」


ルウが聞く。


「簡単に言えば守ってくれていたんです」


食堂が静かになる。


「私達は子供です」


「本来なら軽く見られてもおかしくありません」


「ですが誰一人そんな態度を取りませんでした」


理由は簡単。


アリシアがいたからだ。


「私が推薦した人材です」


神殿でもそう公言していたらしい。


「皆子供の私たちに丁寧に接してくれました。」


カイルがようやく納得したように言う。


「はい」


シーナも頷いた。


「少なくとも神殿で不当な扱いを受けることはないと思います」


リアが嬉しそうに笑った。


アリシアらしい。


そう思った。



「あと町が凄いことになってました。」


カイルが言う。


今度はマルが話し始める。


「商人が増えてた」


「そんなに?」


「かなり」


宿も足りない。


荷馬車も増えた。


露店も増えた。


神殿関係者も増えている。


「何で急に?」


トトが聞く。


「聖地候補に検討されているようです。」


シーナが答えた。


その言葉に全員が静かになる。


「まだ噂の域ですが」


「神殿内部では検討されてるらしい。」


「聖地・・」


そんな設定ゲームになかったとレンは考え込んだ。


「妖精王像に祈る住民を見て神官たちが騒いでいるとか」


「妖精王像?」


マルが少し気まずそうに答える。


「作業してる休憩場に」


「仕事合間に俺が趣味で彫った像なんだ。」


南部都市中央広場。


寒波後に建てられた巨大な妖精王像。


今や町の象徴になりつつあった。


「神官達も見に来ていました」


「評判らしいです」


「らしいじゃない」


シーナが即座に訂正した。


「凄く評判です」


「ただなんというか・・」


「ん?」


マルが口を挟む。


「あれは妖精王像じゃないんだ。」


今度はシーナが補足する。


「レンさんのネストにそっくりなんです。」


「………」


『私です』


ノアが胸を張ったように見えた。


皆が苦笑した。



「もう一つあります」


シーナが続ける。


「気候の変化です。」


レンの目が少し細くなった。


「この周辺だけ異常に穏やかです」


「そうなんですか?」


リアが首を傾げる。


「近隣地域と比べても明らかです」


「寒暖差も少ない」


「農作物の生育も良い」


「病気も減っているそうです」


レンは黙って聞いている。


おそらく原因は分かっている。


だが説明はしない。


「そういえば」


ルウが言った。


「動物が増えました」


「ああ」


リアも頷く。


「うさぎとか」


「小鳥とか」


「リスとか」


「最近よく見ます」


カイルも笑った。


「町でも同じらしい」


「広場に小鳥が集まるんだと」


「逃げないそうです」


魔獣がいる世界では珍しい光景だった。


「神殿の一部では」


シーナが少し困った顔をする。


「楽園化現象と呼ぶ人もいます」


「大袈裟ですね」


リアが言った。


「私もそう思います」


シーナも頷く。


「ですが本気で信じている人もいます」



「あと変な噂も聞いた」


カイルが言った。


「噂?」


「神官達の間だ」


少し言いづらそうだった。


「俺達のことを」


「森の申し子って呼ぶ奴がいるらしい」


「何ですかそれ」


リアが聞く。


「俺も知らない」


カイルが答える。


「俺もだ」


マルも首を振る。


シーナはため息を吐いた。


「寒波を生き延びて」


「南部都市を立て直して」


「妖精王が来た森と関わりが深いからでしょう」


世間でここ妖精王の森といわれはじめているらしい。


「格好いい」


トトが言った。


「誇らしいけどちょっと恥ずかしいです」


シーナは照れ気味。


(今までは魔の森扱いなんだがなぁここ)


レンは口にしない。



「それで」


トトがマルを見る。


「マル兄は?」


「何が?」


「町で他にもシーナと何か始めたんでしょ?」


カイルから二人が何かを始めたと聞いていが


内容は聞いていなかった。


マルが視線を逸らす。


シーナも少し咳払いをした。


「実は」


「うん」


「屋台を始めました」


沈黙。


「え?」


リア。


ルウ。


「ほう。なんの屋台だ?」


レン。


「二ヶ月前」


シーナが補足する。


「私の提案で仕事紹介所を作りました。」


「仕事紹介?」


「生きていく為にはまず働かないとだめです。」


「冒険者組合のような危険度の高い依頼じゃなく」


「街の復興専門の仕事紹介所を立ち上げました。」


「これから働きたい人も増えます」


「神殿の支援も受けれる言質も取れたので」


「今後は拡大もできます。」


シーナはそう言う。


だが。


それだけではなかった。


「元スラムの人や一部孤児達も働けたら」


「街も元気になるでしょ?」


シーナは笑顔で言った。


「初めはマルが荷運びをしてお金を稼いできた所から」


「思いつきました。」


「私は力や器用さはないので」


「私が仕事を見つけたら」


「その仕事を人に紹介する事で」


「その人も助からないかなぁって。」


なんてこった。


逞しいを通り越して優秀かよ。


ひきこもり体質のレンには2人がまぶしく見える。


こいつらまだ10かそこらだよ


リアが目を丸くした。


「凄いです!」


「そうでしょうか」


シーナは首を傾げる。


「皆で食べられるようにしたかっただけです」


その言葉にレンが小さく頷いた。


「悪くない」


珍しい評価だった。


シーナが嬉しそうに笑う。


「名前もあります」


「名前?」


「マルシーナ斡旋所です」


沈黙。


「そのままですね」


リアが言った。


「分かりやすいでしょう」


シーナは真顔だった。


全員が笑った。


まだ小さな屋台。


まだ小さな取り組み。


だがそれは確かに。


未来へ続く最初の一歩だった。


そしてリアは思う。


カイルも。


マルも。


シーナも。


もうずっと前から。


自分の知らないところで歩き始めていたのだと。


少し寂しくて。


でも誇らしい。


そんな春の夜だった。


読んでいただきありがとうございます。

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