第十二話 本物と偽物
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
その夜。
森の家の客室で、アリシアは一人窓の外を眺めていた。
春の夜風が静かに森を揺らしている。
王都では聞こえない音だった。
虫の声。
木々のざわめき。
遠くで鳴く獣の声。
不思議と心が落ち着く。
だが頭の中は静かではなかった。
今日聞いた話が何度も繰り返されている。
結界師。
光る石。
機兵。
大型魔獣。
森の家。
そして。
シルフィネ。
「もう疑いようもないですね。」
小さく呟く。
寒波の日を思い出した。
奇跡の虹色の結界。
街の人々を守った力。
神殿ですら再現できない規模。
誰も正体を知らない。
しかし、今なら分かる。
結界を自在に操る男。
結界を武器として使う男。
そしてこの家の結界を作った男。
その全てが物語っている。
「やっぱりレンさんだったんですね」
疑問は確信に変わっていた。
妖精王の奇跡が起きた日
森から現れた街を救済する子供たち
寒波の日に現れた救い。
まちがいなくあの男が
行使した力だろう。
だが。
アリシアはそれ以上考えるのをやめた。
理由は簡単だった。
もし知られて良いことなら。
最初から話しているはずだから。
「秘密にしている理由があるんでしょうね」
誰に言うでもなく呟く。
だから聞かない。
それが礼儀だと思った。
少なくとも。
リア達が安心して暮らしているなら。
それでいい。
アリシアはそう思った。
◇
翌朝。
薬草畑ではリアとルウが作業をしていた。
アリシアも手伝うことになっている。
「こっちです」
ルウが説明する。
「この葉は午前中に摘むんです」
「覚えます」
アリシアは真面目だった。
神殿の仕事も勉強も好きだ。
だが。
土を触る機会は少ない。
「難しいですね」
「慣れですよ」
リアが笑う。
しばらく作業が続いた。
すると。
薬草籠を抱えたリアが不意に尋ねた。
「神殿のお仕事って大変ですか?」
アリシアの手が少し止まる。
「そうですね」
少し考える。
「大変ですよ」
正直に答えた。
「やっぱりですか」
「毎日書類がありますし」
「偉い人との話もありますし」
「命令もしないといけません」
苦笑する。
「私はあまり得意じゃないんですけどね」
「そうなんですか?」
リアは意外そうだった。
「アリシアさん凄いのに」
「凄くないですよ」
アリシアは首を振る。
「私は本物じゃありませんから」
その言葉にリアは首を傾げた。
「本物?」
「ええ」
アリシアは少し笑う。
幼い頃から聖女教育を受けた。
聖女として振る舞うことを学んだ。
人々の希望であることを求められた。
けれど。
奇跡は起こせない。
本物の聖女ではない。
それがずっと胸に残っている。
「皆が思っているような存在じゃないんです」
リアはしばらく考えていた。
そして。
「でもアリシアさんはアリシアさんですよね?」
当然のように言った。
アリシアは固まる。
「え?」
「だって」
リアは不思議そうな顔をした。
「偽物とか本物とかよく分かりませんけど」
「アリシアさんはアリシアさんです」
「それじゃ駄目なんですか?」
何気ない言葉だった。
悪意もない。
打算もない。
ただ思ったことを言っただけ。
だからこそ。
深く刺さった。
アリシアは返事ができなかった。
長い間。
自分は何者なのかを考えていた。
聖女でなければ価値がないのではないか。
期待に応えられているのか。
失望されていないか。
そんなことばかり考えていた。
だが。
リアは違った。
肩書きではなく。
役職でもなく。
アリシアという人間を見ていた。
「……ありがとうございます」
気付けばそう言っていた。
リアは笑う。
「どういたしまして」
何も分かっていない顔だった。
それが少しおかしくて。
アリシアも笑ってしまった。
◇
昼過ぎ。
帰る時間が近付いていた。
神殿騎士達は荷物をまとめている。
リアは少し寂しそうだった。
「もう帰るんですね」
「仕事がありますから」
アリシアは苦笑する。
「残念です」
「私もです」
本心だった。
王都へ戻ればまた忙しい日々が始まる。
書類。
会議。
陳情。
政治。
責任。
だが。
ここへ来て良かったと思う。
リアにも会えた。
ルウやトトとも話せた。
そして。
レンという男のことも少しだけ知れた。
ふと視線を向ける。
少し離れた場所でレンが薪を割っていた。
いつも通りだった。
特別なことなど何もないように。
アリシアは小さく笑う。
レンがこちらを見る。
「どうした」
レンはアリシアを見る。
ゲーム時代の推し。
いずれ命を落とす少女。
助かればいいとは思う。
だがそれは自分が決めることじゃない。
レンは何も言わなかった。
「いえ」
アリシアは首を振った。
「何でもありません」
レンは少しだけ眉をひそめた。
だが何も聞かない。
それで良かった。
お互いに。
言わない方がいいこともある。
アリシアはそう思った。
「また来てくださいね!」
リアが手を振る。
アリシアも笑顔で応える。
「はい」
「必ず」
森を抜ける頃には。
少しだけ足取りが軽くなっていた。
【機体図鑑 No.004】
ネスト(Nest)
■基本データ
分類 魔核機
ランク SSS
フレーム タイプ・オベロン
全高 約 5.0m
カラー 黒銀
役割 万能支援・戦略級制圧
能力 自動修復機能・戦術支援AI「ノア」
自動操縦・広域結界展開・飛行能力
操縦者 レン
★機体概要
黒銀の鎧騎士を思わせる外装を持つ、
古代文明が残した最高峰の魔核機。
数ある遺失魔核機の中でも、
最も高いポテンシャルを秘める特別な機体であり、
本来の性能は未だ解明されていない。
レンが入手した「AIナビマスコット生成ツール・ノア」を
機体に組み込んだことで、
高度な自動操縦と戦闘支援能力を獲得。
結界師であるレンが搭乗することで真価を発揮し、
街一つを包み込むほどの広域結界展開能力を実現する。
飛行時には蝶の羽を思わせる光の翼が展開され、
空中機動と高出力魔力制御を両立する。
近接戦闘能力も非常に高いが、
レン本人の戦闘スタイルの影響により、
主に結界支援と超遠距離攻撃に用いられる。
主人公レンの愛機。
★主武装
・光の長弓
・多重結界展開
・迎撃結界
・魔力収束射撃
・超長距離狙撃モード
読んでいただきありがとうございます。
面白かったら評価、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。




