第十一話 光る石
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
「じゃあレンさんはどうやって強くなったんですか?」
ルウの一言で食堂が静かになった。
勉強会の続きだった。
カイルとトトも知らないうちに参加していた。
リアが視線を逸らす。
少し事情を知っているトトが笑いを堪えている。
カイルは苦笑した。
「何かあるんですか?」
アリシアが不思議そうに尋ねる。
「あります」
トトが即答した。
「ない」
レンも即答する。
「あります」
「ない」
「あります」
「ない」
しばらく続いた。
最終的にリアまでトト側についた。
「聞きたいです」
ルウが言う。
「私も気になります」
アリシアも頷いた。
レンは諦めたように息を吐く。
「大した話じゃない」
「余計に気になります。」
アリシアが言った。
「……」
レンは少しだけ昔を思い出す。
転移したばかりの頃だ。
まだ森の家もない。
工房もない。
「結界師を選んだ理由は」
「それを選ばなければ死んでいた」
「命が掛かった場面でたまたま力が発動してな。」
半分は本当。
半分は嘘だった。
レンはこの世界での記憶は
森で魔獣に襲われているところから始まった。
無我夢中で貼った結界に守られて
一夜をやりすごし生き残った。
ゲーム時代に結界師を趣味で選択した事は
皆に言っても理解できるものではない。
「冒険者にとっては、結界師は不遇職だ」
ルウが頷く。
「攻撃できない」
「育成できない」
「足が遅い」
「逃げられない」
「一人だと詰む」
全員頷いた。
言葉にしたら酷い職業である。
「だから最初はパーティに入った」
レンは続けた。
「騙されたな」
レンは苦笑する。
「何回もだ」
「荷物持ち」
「囮役」
「報酬未払い」
「置き去り」
アリシアの顔が曇る。
それだけでも十分酷い。
だがレンはさらに続けた。
「奴隷にもなった」
沈黙。
「え?」
アリシアが聞き返した。
「売られた」
「売られた?」
「ああ」
レンは頷く。
「一回目は普通に売られた」
食堂が静まり返る。
「二回目でようやく気付いた」
「二回目もあったんですか……」
アリシアが呆然と呟く。
「人を見る目がなかったんだろうな」
レンはどこか他人事のように言った。
だがその経験が今のレンを作っている。
「だから途中で諦めた」
「パーティですか?」
「人を当てにするのをだ」
その言葉に重みがあった。
だからレンは一人で生きる方法を探した。
「それでどうしたんですか?」
ルウが話を戻す。
レンは少し考えてから答えた。
「森で光る石を見つけた」
リアが嫌そうな顔をした。
「あの光る石ですか?」
「あの光る石だ」
「私が初めて会った頃、箱に入れてたやつですよね?」
「ああ」
アリシアとルウは事情が分からない。
「そんなに危険なんですか?」
アリシアが聞く。
「危険です」
リアが即答した。
「危険です」
トトも頷く。
「危険だったな」
カイルも続く。
「危険だ」
レンも認めた。
全員がレンを見る。
なぜそんな物を集めていたのか。
「最初は珍しい石だと思った」
レンは説明する。
「魔力を流すと光る」
「それだけだと思っていた」
「違ったんですか?」
「爆発した」
アリシアが顔を引きつらせた。
レンは構わず続ける。
「だが面白いことにも気付いた」
「面白いこと?」
「魔力を通した瞬間に結界で包むと、解除するまで爆発しない。」
ルウが首を傾げる。
レンは近くにあった木片を手に取った。
「普通、結界は身を守る術者の周囲に展開する」
「はい」
「術者の任意か、魔力が尽きたら解除する。」
「はい」
「この光る石でわかったのは」
「結界がただの防御膜ではないということだ。」
レンは指で机を軽く叩く。
「石の周囲に結界を刻む」
「魔力を流す」
「しばらく維持される」
ルウが目を見開いた。
「あ……」
「そうだ」
レンは頷く。
「俺の結界は時間を少し止めるらしい。」
「事象を止めるというべきか……」
「結界で爆発寸前の石を持ち運べる。」
誰も試さなかった。
結界師はただの防御職だからだ。
極めた結界師がいないので、結界研究も知見も無い。
効果や攻撃方法を考える発想そのものがない。
「それって、すごい発見なのでは?」
アリシアがさらっとすごい事を言うレンを唖然として見つめる。
「これならと思い」
「魔物に投げた」
沈黙。
「投げたんですか?」
「投げた瞬間、結界解除してな。」
「結果は?」
「あたりまえだが、爆発した。」
リアが額を押さえた。
「レンさんらしいですね」
「そうか?」
「そうです」
満場一致だった。
「必死に投げまくったおかげで、魔物は倒せた。」
それが重要だった。
結界師が単独で魔物を狩る手段。
すごく単純だがレンはそれを見つけてしまった。
「それで経験やお金を貯めたんですか?」
「ああ」
弱い魔物を倒す。
結界を強くする。
また倒す。
また強くなる。
地味だが確実だった。
「普通結界師はすぐ神殿に入って」
「世界樹を守る神殿騎士になり神殿の要所を守る職です。」
アリシアが普通の在り方をつい口にする。
「神殿の庇護を受けた騎士にはまず思いつかない。」
「結界貼ったらまず武器は持てないし。」
「守るのが仕事だしな。」
「光る石の存在なんて皆知らないだろうし。」
レンは肩をすくめた。
「思いついても怖くてやらないだろうな。」
それは全員納得だった。
「その後は?」
リアが聞く。
レンは少しだけ遠くを見る。
「古い機兵を手に入れた」
「機兵ですか」
ルウが興味を示した。
「安物だ」
「壊れかけだった」
「武器もまともに無かった」
それでもレンには価値があった。
一人で戦うための手足だったからだ。
「そこで光る石を積んだ」
全員が嫌な予感しかしなかった。
「何でですか?」
アリシアが聞く。
「石の反応を見ていてな」
レンは説明する。
「魔力を流すと爆発で推進力みたいなものが」
「得られるんじゃないかと思いついた。」
「だったら機兵に積めば速くなると思った」
「いやいやいや壊れますって普通!」
リアが突っ込む。
「結界で保護して、爆発させたらな。」
「ものすごい加速した。」
「……」
「操縦が追いつかなかったが。」
レンは苦笑した。
「最初は木だった」
「最初?」
「二回目は岩だ」
トトが吹き出した。
「三回目は崖だった」
リアまで笑い始める。
「改善してませんよね?」
「している」
レンは真顔だった。
「生きている」
「基準がおかしいです」
アリシアが呆れる。
「四回目でようやく狙った場所へ当てられるようになった」
そこでレンは少しだけ表情を変えた。
「そして思った」
「何をですか?」
ルウが聞く。
「結界を張ったまま突っ込めば強いんじゃないかと」
沈黙。
全員が理解した。
理解してしまった。
「やったんですか?」
リアが聞く。
「やった」
「自分ごと?」
「自分ごとだ」
「死にません?」
ルウが聞く。
「何度か死にかけた」
当然だった。
「でも大型魔獣は倒せた」
それが転機だった。
大型魔獣の素材。
機兵の改造。
結界の強化。
さらに強い魔物。
さらに強い素材。
その繰り返し。
気付けば今のレンになっていた。
しばらく沈黙が続く。
アリシアは目の前の男を見る。
畑仕事をしている普通の男。
少し無愛想な男。
だがその人生は普通から程遠かった。
「だから俺は特別強いわけじゃない」
レンが言う。
「世の中には俺より強い奴なんていくらでもいる」
「騎士団にもいるだろう」
「神殿にもいる」
「俺はそういう連中とは違う」
「じゃあ何なんですか?」
ルウが聞いた。
レンは少し考える。
そして静かに答えた。
「強くならなきゃ生き残れなかっただけだ」
食堂が静かになる。
その空気を破ったのはトトだった。
「違います」
「何だ」
「変態です」
リアが頷く。
「変態ですね」
カイルも頷く。
「変態ですね」
アリシアも少し悩み。
「…神殿に来るのが普通です。」
と結論を出した。
レンだけが納得していなかった。
レンの過去回を軽く書きました。
この世界は銃火器類がないので爆弾という発想がないのです
飛び道具は魔法か狩猟用の弓。
ある意味エコな世界(笑)
読んでいただきありがとうございます。
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