第十話 亀と呼ばれた職業
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
アリシアの来訪から一日。
森の家では珍しく勉強会が開かれていた。
先生はレン。
生徒はルウ。
ついでにリア。
なぜかアリシアも馴染んで参加している。
「質問があります」
ルウが手を挙げた。
「どうした」
「魔法って何ですか?」
その場が静かになった。
リアが首を傾げる。
アリシアも不思議そうな顔をする。
「今さら?」
「今さらです」
ルウは真面目だった。
「薬を作るなら勉強した方が良いと思いました」
レンは少し考える。
確かに間違ってはいない。
◇
「じゃあまず前提からだ」
レンは紙に丸を書いた。
「この世界に魔法は一種類しかない」
「一種類?」
リアが驚く。
レンは頷いた。
「人工魔結晶を使った道具による発動だけだ」
ルウがメモを取る。
「火を出す魔法」
「氷を出す魔法」
「風を出す魔法」
「結界」
「全部同じ」
「違うのは道具だけだ」
アリシアは納得したように頷いた。
神殿でも同じ認識だった。
「じゃあ魔導士は?」
「攻撃用を使う奴」
「結界師は?」
「防御用を使う奴」
「簡単ですね」
「簡単だ」
レンは答えた。
「問題はその道具だ」
紙に二本線を引く。
「入手方法は基本二つ」
「家系の継承」
「古代遺跡の発掘」
ルウが目を丸くした。
「作れないんですか?」
「今の技術じゃ無理だな」
「だから魔法使いが少ない」
アリシアが補足する。
これは神殿でも常識だった。
魔法使いは希少。
魔法道具そのものが希少だからだ。
「じゃあ見つければ誰でも使えます?」
ルウが聞いた。
「使えない」
レンは即答した。
「なんでですか?」
「能力が足りない」
紙に二つの円を書く。
「力」
「知力」
そして線で結んだ。
「この世界の人間は基本どちらかを選ぶ」
「両方じゃ駄目なんですか?」
今度はトトが聞く。
レンは苦笑した。
「駄目なことはないが器用貧乏になる」
そして続ける。
「例えば剣士が魔法道具を拾ったとする」
「はい」
「知力が低い」
「はい」
「威力が出ない」
「ああ……」
「逆も同じだ」
今度は魔導士。
「力が低い」
「武器を持っても重かったりして使えないだろ?」
リアが納得した顔になる。
「だから皆どちらかに特化するんですね」
「そういうことだ」
ルウは真剣にメモを取っていた。
「つまり中途半端が一番弱い?」
「だいたいそうだ。」
「極めるって厳しそうですね。」
「厳しいぞ。実際。」
レンは笑った。
その瞬間。
少しだけ昔を思い出した。
ゲーム時代のステータス振り分け
フィジカル系かマジック系かの2択。
フィジカル系は速度、火力特化か、耐久、防御特化。
マジック系は 攻撃魔法特化か、結界防御特化。
の4択。
この世界の冒険者にも
そのジョブ選択がそのまま根付いている。
中途半端は存在しない。
「じゃあ結界師は?」
リアが聞く。
レンの顔が微妙になる。
「不遇職だな。」
「そんなに?神殿では優遇されますよ。」
アリシアが驚く。
「確かにな。しかし冒険者だと違う。」
「成長過程での攻撃手段がない」
「え」
「大成するまでが地獄だ。」
ルウが顔を上げた。
「魔物倒せないんですか?」
「倒せない」
「経験積めないんですか?」
「積めない」
「どうするんですか?」
「なのでパーティに入れてもらう。」
沈黙。
「大変ですね」
「大変だ。特に俺みたいなタイプにはな。」
レンは遠い目をした。
「しかも足も遅い」
「遅いんですか?」
「遅いし、精神の続くまで結界しか貼れない。」
「防御は?」
「硬い」
「なので、他に敵を攻撃してもらう。」
「火力がない」
「なるほど」
ルウが納得した。
レンはさらに続ける。
「しかもパーティでは狙われる役を担うことが多いので」
「逃げられない」
「倒せない」
「だから亀」
「亀」
リアが笑った。
「そのままですね」
「そのままだ」
レンも認めた。
「ソロで始めたら?」
ルウが聞く。
「地獄だ」
即答だった。
リアとアリシアが吹き出した。
レンは本気だった。
「友達いない奴ほど終わる」
「酷い職業ですね」
「酷い職業だ」
そして少しだけ笑う。
「だから冒険者だと誰もやらない。実際あまりいないと思う。」
「レンさんはやったんですか?」
リアが聞いた。
レンは黙る。
全員が察した。
「やったんですね」
「やったというより、今も結界師だ。」
諦めたように答える。
「何故結界師を?」
全員の疑問だった。
レンは少し考えた。
そして。
「たまたまだな。」
その場が静まり返った。
「それだけですか?」
「それだけだ。たまたまだ。」
トトが工房の入口から顔を出す。
「やっぱり変です」
「うるさい」
レンは即答した。
だが。
本人は知らない。
その変態的な選択の積み重ねが。
後に王国最強と呼ばれる三人ですら到達していない領域へ、
自分を押し上げることになるのだから。
【機体図鑑 No.003】
ティラント(Tyrant)
■基本データ
分類 魔核機
ランク SS
フレーム タイプ・ガーディアン
全高 約 5.0m
カラー 黒鉄×古銅色
役割・能力 自動修復再生機能・重装甲防御
操縦者 バルド
★機体概要
古代の重騎士や巨人思わせる外装を持つ重装甲型魔核機。
極厚の装甲と大出力魔核による圧倒的な耐久性能を誇り、
味方の盾となって戦線を維持することを目的として設計されている。
機動力こそ高くないものの、
正面からの打ち合いでは他の機体を寄せ付けない防御力を持つ。
命中率を補って余りある一撃必殺の凶器は
「大地の咆哮」と恐れられる威力。
転移プレイヤーの一人、英雄バルドの愛機。
読んでいただきありがとうございます。
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