プロローグ 第4話
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
森へ続く街道を、レンとリアは歩いていた。
気まずかった。
非常に気まずかった。
お互い共通点がない。しかも見るからに年の差がある。
何より。
相手を信用していない。
それが大きかった。
先に口を開いたのはリアだった。
「森に住んでるんですか?」
「住んでる」
「一人で?」
「一人で」
「危なくないですか?」
「人間よりは安全だ」
リアが首を傾げた。
レンは説明しなかった。
説明したところで理解されない。
◇
五年前。
この異世界へ来てから。
騙された。
殴られた。
売られた。
奴隷にもなった。
その全部が人間だった。
魔獣じゃない。
だから森の方が気楽だった。
襲ってくるなら最初から襲ってくる。
その方が分かりやすい。
◇
「変わってますね」
「よく言われる」
レンは即答した。
リアは少しだけ笑った。
初めてだった。
少しだけ空気が柔らかくなる。
しかし。
その空気も長くは続かなかった。
「おーい!」
前方から声が聞こえる。
三人組の冒険者だった。
昨日ギルドで見た顔。
今回の依頼の同行者達だ。
「やっと来たか!」
「待ってたぞ!」
愛想の良い笑顔。
リアも少し安心した様子だった。
レンだけが警戒する。
胡散臭い。
笑顔が綺麗すぎる。声色がわざとらしい。
「お前らも依頼か?」
「そうだ」
レンは短く答えた。
「なら助かる!」
男達は陽気だった。
だが。
レンの嫌な予感はどんどん強くなる。
理由は単純。
報酬が高すぎる。
内容が曖昧すぎる。
同行者が多すぎる。
全部がおかしい。
それでも引き返せない。
金が無いからだ。
人生そんなものである。
◇
さらに半日ほど進む。
やがて森の奥へ到着した。
「ここだ」
男の一人が言った。
周囲を見渡す。
遺跡らしきものは無い。
何も無い。
木しかない。
レンの眉が動く。
「遺跡は?」
「もう少し奥だ」
「そうか」
嘘だな。
レンは確信した。
そして。
リアも少し不安そうだった。
「本当にあるんですか?」
「あるある」
「すぐそこだ」
男達は笑う。
その時。
遠くから地響きが聞こえた。
ドォン。
ドォン。
重い音。
リアが振り返る。
森の向こう。
巨大な影が見えた。
「機兵……?」
思わず声が漏れる。
人型。
鋼鉄。
五メートル近い巨体。
機兵だった。
町のギルドの外で見たものと酷似していた。
装甲が厚い。
武装もある。
一般冒険者が持てる代物ではない。
レンも少し驚いた。
(あれを持ってるのか)
なるほど。
だから街で有名なのか。
だから誰も疑わないのか。
機兵持ち冒険者。
それだけで英雄扱いされる世界だ。
男達が笑う。
「お前ら運がいい」
リアが嫌な顔をする。
「どういう意味ですか?」
「高く売れる」
沈黙。
リアが固まる。
理解するまで数秒掛かった。
「……え?」
「商品だよ」
男達の顔から笑顔が消えた。
代わりに浮かぶのは欲望。
下卑た本性だった。
「若い女は高い」
「冒険者は人気ある」
「顔も悪くない」
リアの顔色が変わる。
剣を抜く。
しかし遅い。
後ろから何かが飛んできた。
縄だ。
魔道具。
リアの足へ絡み付く。
「きゃっ!」
転倒。
男達が笑う。
レンは見ていた。
そして。
深いため息を吐く。
「やっぱりか」
男達が振り返る。
「なんだ?」
「いや」
レンは頭を掻いた。
本当に面倒そうな顔だった。
「だから嫌だったんだよ」
男達が笑う。
「おっさんも商品だ」
「安心しろ」
「死なせねぇよ」
機兵が近付いてくる。
重い足音。
森が揺れる。
リアの顔が青ざめた。
冒険者相手ならまだ戦えた。
だが機兵は違う。
新人冒険者が勝てる相手ではない。
レンはそれを見ていた。
そして。
少しだけ空を見上げる。
青空だった。
「帰ったら畑見ないとな」
唐突な言葉だった。
「は?・・はっはは!!もうかえれねぇよ!」
男達が怪訝そうな顔をする。
レンは気にしない。
「あと家の修理か」
「何言ってる、現実逃避かぁ?」
「忙しいんだよなぁ・・」
心底面倒そうに言った。
そして。
リアを見る。
震えていた。
まだ若い。
スラム出身。
身寄りも無い。
きっと。
昔の自分みたいなものだ。
レンは小さく息を吐いた。
「しょうがない」
そう呟く。
男達は気付かなかった。
機兵の操縦者も気付かなかった。
リアもまだ知らない。
目の前の冴えないおっさんが。
この世界でも数えるほどしか存在しない。
魔核機の所有者であることを。
そして。
次の瞬間。
この状況が終わることを。
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