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プロローグ 第4話

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 森へ続く街道を、レンとリアは歩いていた。


 気まずかった。


 非常に気まずかった。


 お互い共通点がない。しかも見るからに年の差がある。


 何より。


 相手を信用していない。


 それが大きかった。


 先に口を開いたのはリアだった。


「森に住んでるんですか?」


「住んでる」


「一人で?」


「一人で」


「危なくないですか?」


「人間よりは安全だ」


 リアが首を傾げた。


 レンは説明しなかった。


 説明したところで理解されない。


 五年前。


 この異世界へ来てから。


 騙された。


 殴られた。


 売られた。


 奴隷にもなった。


 その全部が人間だった。


 魔獣じゃない。


 だから森の方が気楽だった。


 襲ってくるなら最初から襲ってくる。


 その方が分かりやすい。



「変わってますね」


「よく言われる」


 レンは即答した。


 リアは少しだけ笑った。


 初めてだった。


 少しだけ空気が柔らかくなる。


 しかし。


 その空気も長くは続かなかった。


「おーい!」


 前方から声が聞こえる。


 三人組の冒険者だった。


 昨日ギルドで見た顔。


 今回の依頼の同行者達だ。


「やっと来たか!」


「待ってたぞ!」


 愛想の良い笑顔。


 リアも少し安心した様子だった。


 レンだけが警戒する。


 胡散臭い。


 笑顔が綺麗すぎる。声色がわざとらしい。


「お前らも依頼か?」


「そうだ」


 レンは短く答えた。


「なら助かる!」


 男達は陽気だった。


 だが。


 レンの嫌な予感はどんどん強くなる。


 理由は単純。


 報酬が高すぎる。


 内容が曖昧すぎる。


 同行者が多すぎる。


 全部がおかしい。


 それでも引き返せない。


 金が無いからだ。


 人生そんなものである。



 さらに半日ほど進む。


 やがて森の奥へ到着した。


「ここだ」


 男の一人が言った。


 周囲を見渡す。


 遺跡らしきものは無い。


 何も無い。


 木しかない。


 レンの眉が動く。


「遺跡は?」


「もう少し奥だ」


「そうか」


 嘘だな。


 レンは確信した。


 そして。


 リアも少し不安そうだった。


「本当にあるんですか?」


「あるある」


「すぐそこだ」


 男達は笑う。


 その時。


 遠くから地響きが聞こえた。


 ドォン。


 ドォン。


 重い音。


 リアが振り返る。


 森の向こう。


 巨大な影が見えた。


「機兵……?」


 思わず声が漏れる。


 人型。


 鋼鉄。


 五メートル近い巨体。


 機兵だった。


 町のギルドの外で見たものと酷似していた。


 装甲が厚い。


 武装もある。


 一般冒険者が持てる代物ではない。


 レンも少し驚いた。


(あれを持ってるのか)


 なるほど。


 だから街で有名なのか。


 だから誰も疑わないのか。


 機兵持ち冒険者。


 それだけで英雄扱いされる世界だ。


 男達が笑う。


「お前ら運がいい」


 リアが嫌な顔をする。


「どういう意味ですか?」


「高く売れる」


 沈黙。


 リアが固まる。


 理解するまで数秒掛かった。


「……え?」


「商品だよ」


 男達の顔から笑顔が消えた。


 代わりに浮かぶのは欲望。


 下卑た本性だった。


「若い女は高い」


「冒険者は人気ある」


「顔も悪くない」


 リアの顔色が変わる。


 剣を抜く。


 しかし遅い。


 後ろから何かが飛んできた。


 縄だ。


 魔道具。


 リアの足へ絡み付く。


「きゃっ!」


 転倒。


 男達が笑う。


 レンは見ていた。


 そして。


 深いため息を吐く。


「やっぱりか」


 男達が振り返る。


「なんだ?」


「いや」


 レンは頭を掻いた。


 本当に面倒そうな顔だった。


「だから嫌だったんだよ」


 男達が笑う。


「おっさんも商品だ」


「安心しろ」


「死なせねぇよ」


 機兵が近付いてくる。


 重い足音。


 森が揺れる。


 リアの顔が青ざめた。


 冒険者相手ならまだ戦えた。


 だが機兵は違う。


 新人冒険者が勝てる相手ではない。


 レンはそれを見ていた。


 そして。


 少しだけ空を見上げる。


 青空だった。


「帰ったら畑見ないとな」


 唐突な言葉だった。


「は?・・はっはは!!もうかえれねぇよ!」


 男達が怪訝そうな顔をする。


 レンは気にしない。


「あと家の修理か」


「何言ってる、現実逃避かぁ?」


「忙しいんだよなぁ・・」


 心底面倒そうに言った。


 そして。


 リアを見る。


 震えていた。


 まだ若い。


 スラム出身。


 身寄りも無い。


 きっと。


 昔の自分みたいなものだ。


 レンは小さく息を吐いた。


「しょうがない」


 そう呟く。


 男達は気付かなかった。


 機兵の操縦者も気付かなかった。


 リアもまだ知らない。


 目の前の冴えないおっさんが。


 この世界でも数えるほどしか存在しない。


 魔核機の所有者であることを。


 そして。


 次の瞬間。


 この状況が終わることを。

読んでいただきありがとうございます。


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