プロローグ 第3話
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
翌朝。
レンは嫌な気分で目を覚ました。
理由は簡単だ。
金が無い。
本当に無い。
昨日の奴隷少年を助けた結果、財布は完全に空になった。
「善行なんてするもんじゃねぇな……」
朝から酷い台詞だった。
もちろん後悔している訳ではない。
ただ現実問題として腹は減る。
生きるには金が必要だった。
ベッドを見る。
少年はまだ眠っている。
熱は下がった。
峠は越えたらしい。
レンは少し安心した。
「帰ったら自己紹介くらいは聞くか」
呟いて家を出る。
結界を確認。
扉を固定。
窓を固定。
侵入対策も問題なし。
そして再び街へ向かった。
◇
冒険者ギルドは朝から賑わっていた。
依頼を探す冒険者。
受付へ並ぶ行列。
酒臭い男達。
いつもの光景である。
レンは依頼板を見る。
薬草採取。
荷運び。
害獣駆除。
報酬が安い。
ため息が出た。
「無いな……」
もっと稼げる仕事が欲しい。
そう思った時だった。
隅の方に貼られた依頼書が目に入る。
森の遺跡調査。
報酬。
銀貨五枚。
「高いな」
思わず呟く。
内容に対して報酬が高すぎる。
嫌な匂いしかしない。
だが。
銀貨五枚は魅力だった。
今のレンにとっては死活問題である。
「どう思う?」
受付嬢へ聞く。
受付嬢は露骨に顔をしかめた。
「おすすめはしません」
「だろうな」
「正直、私なら受けません」
「だよな」
二人の意見は一致した。
それでも。
レンは依頼書を見続ける。
金が必要だった。
本当に。
切実に。
「……受けるか」
「えぇ!??・・」
受付嬢が頭を抱えた。
そして依頼書を引き抜こうとした時。
先に誰かが取った。
レンの視線が動く。
栗色の髪。
革鎧。
昨日見た、ゲーム時代の推しにそっくりな少女だった。
「これ受けます」
受付嬢が固まる。
レンも固まる。
少女は真面目な顔だった。
受付嬢は言う。
「リアちゃん、本当に?」
「はい」
「危ないと思うよ?」
「大丈夫です」
全然大丈夫そうではなかった。
レンはそう思った。
だが口には出さない。
関係ない。
関わらない。
それが一番だ。
受付嬢は深い溜息を吐いた。
「同行者が必要になるけど」
「探します」
「今から?」
「今からです」
そう言ってリアは振り返る。
そして。
偶然。
レンと目が合った。
数秒。
沈黙。
気まずい。
リアは視線を逸らした。
レンも逸らした。
知らないおっさんである。
警戒するのは当然だった。
しかし。
リアの視線が依頼書へ向く。
レンの手元。
同じ依頼。
少しだけ顔色が変わった。
「あの」
「嫌だ」
反射的に断った。
まだ何も言われていない。
リアが呆然とする。
「まだ何も言ってません」
「絶対面倒な話だろ」
「面倒な話です」
「だろうな」
レンは即答した。
リアは少し悔しそうだった。少し涙目だ。
だが諦めなかった。
「同行者を探してるんです」
「他を当たれ」
「みんな断るんです」
「俺も断る」
「報酬は半分でいいです」
「嫌だ」
「三分の一で」
「嫌だ」
レンは頑なだった。
関わる気がない。
嫌な予感しかしない。
こういう予感は大体当たる。
五年間で学習済みだった。
リアは少し俯く。
その時だった。
近くの冒険者達の笑い声が聞こえた。
「まだ見つからねぇのか?」
「諦めろよ」
「一人で行けるだろ?」
馬鹿にした声だった。
リアは何も言わない。
慣れているのだろう。
レンは少しだけ眉をひそめた。
そして。
もう一度依頼書を見る。
報酬。
銀貨五枚。
魅力的だ。
危険な匂いはする。
だが。
帰れば食べ物も無い。
財布も無い。
畑の収穫もまだ先。
「……はぁ」
長い溜息。
リアが顔を上げる。
レンは嫌そうな顔をしていた。
心底嫌そうな顔である。
「一回だけだぞ」
「え?」
「依頼」
リアが固まる。
「受けるんだろ」
「……はい」
「だったら行くぞ」
リアは数秒黙った後。
ようやく小さく頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「よろしくはしたくない」
「それは私もです」
「おい」
初対面である。
しかし。
妙に遠慮が無かった。
そんな二人を。
ギルドの奥から誰かが見ていた。
男だった。
昨日の詐欺グループの一人。
仲間へ小さく笑う。
「増えたな」
「問題あるか?」
「無い」
男は笑った。
「どっちも売ればいい」
下卑た笑いが広がる。
レンもリアも。
まだ気付いていない。
この依頼そのものが罠であることを。
そして。
自分達が既に獲物として数えられていることを。
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