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プロローグ 第3話

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 翌朝。


 レンは嫌な気分で目を覚ました。


 理由は簡単だ。


 金が無い。


 本当に無い。


 昨日の奴隷少年を助けた結果、財布は完全に空になった。


「善行なんてするもんじゃねぇな……」


 朝から酷い台詞だった。


 もちろん後悔している訳ではない。


 ただ現実問題として腹は減る。


 生きるには金が必要だった。


 ベッドを見る。


 少年はまだ眠っている。


 熱は下がった。


 峠は越えたらしい。


 レンは少し安心した。


「帰ったら自己紹介くらいは聞くか」


 呟いて家を出る。


 結界を確認。


 扉を固定。


 窓を固定。


 侵入対策も問題なし。


 そして再び街へ向かった。



 冒険者ギルドは朝から賑わっていた。


 依頼を探す冒険者。


 受付へ並ぶ行列。


 酒臭い男達。


 いつもの光景である。


 レンは依頼板を見る。


 薬草採取。


 荷運び。


 害獣駆除。


 報酬が安い。


 ため息が出た。


「無いな……」


 もっと稼げる仕事が欲しい。


 そう思った時だった。


 隅の方に貼られた依頼書が目に入る。


 森の遺跡調査。


 報酬。


 銀貨五枚。


「高いな」


 思わず呟く。


 内容に対して報酬が高すぎる。


 嫌な匂いしかしない。


 だが。


 銀貨五枚は魅力だった。


 今のレンにとっては死活問題である。


「どう思う?」


 受付嬢へ聞く。


 受付嬢は露骨に顔をしかめた。


「おすすめはしません」


「だろうな」


「正直、私なら受けません」


「だよな」


 二人の意見は一致した。


 それでも。


 レンは依頼書を見続ける。


 金が必要だった。


 本当に。


 切実に。


「……受けるか」


「えぇ!??・・」


 受付嬢が頭を抱えた。


 そして依頼書を引き抜こうとした時。


 先に誰かが取った。


 レンの視線が動く。


 栗色の髪。


 革鎧。


 昨日見た、ゲーム時代の推しにそっくりな少女だった。


「これ受けます」


 受付嬢が固まる。


 レンも固まる。


 少女は真面目な顔だった。


 受付嬢は言う。


「リアちゃん、本当に?」


「はい」


「危ないと思うよ?」


「大丈夫です」


 全然大丈夫そうではなかった。


 レンはそう思った。


 だが口には出さない。


 関係ない。


 関わらない。


 それが一番だ。


 受付嬢は深い溜息を吐いた。


「同行者が必要になるけど」


「探します」


「今から?」


「今からです」


 そう言ってリアは振り返る。


 そして。


 偶然。


 レンと目が合った。


 数秒。


 沈黙。


 気まずい。


 リアは視線を逸らした。


 レンも逸らした。


 知らないおっさんである。


 警戒するのは当然だった。


 しかし。


 リアの視線が依頼書へ向く。


 レンの手元。


 同じ依頼。


 少しだけ顔色が変わった。


「あの」


「嫌だ」


 反射的に断った。


 まだ何も言われていない。


 リアが呆然とする。


「まだ何も言ってません」


「絶対面倒な話だろ」


「面倒な話です」


「だろうな」


 レンは即答した。


 リアは少し悔しそうだった。少し涙目だ。


 だが諦めなかった。


「同行者を探してるんです」


「他を当たれ」


「みんな断るんです」


「俺も断る」


「報酬は半分でいいです」


「嫌だ」


「三分の一で」


「嫌だ」


 レンは頑なだった。


 関わる気がない。


 嫌な予感しかしない。


 こういう予感は大体当たる。


 五年間で学習済みだった。


 リアは少し俯く。


 その時だった。


 近くの冒険者達の笑い声が聞こえた。


「まだ見つからねぇのか?」


「諦めろよ」


「一人で行けるだろ?」


 馬鹿にした声だった。


 リアは何も言わない。


 慣れているのだろう。


 レンは少しだけ眉をひそめた。


 そして。


 もう一度依頼書を見る。


 報酬。


 銀貨五枚。


 魅力的だ。


 危険な匂いはする。


 だが。


 帰れば食べ物も無い。


 財布も無い。


 畑の収穫もまだ先。


「……はぁ」


 長い溜息。


 リアが顔を上げる。


 レンは嫌そうな顔をしていた。


 心底嫌そうな顔である。


「一回だけだぞ」


「え?」


「依頼」


 リアが固まる。


「受けるんだろ」


「……はい」


「だったら行くぞ」


 リアは数秒黙った後。


 ようやく小さく頭を下げた。


「よろしくお願いします」


「よろしくはしたくない」


「それは私もです」


「おい」


 初対面である。


 しかし。


 妙に遠慮が無かった。


 そんな二人を。


 ギルドの奥から誰かが見ていた。


 男だった。


 昨日の詐欺グループの一人。


 仲間へ小さく笑う。


「増えたな」


「問題あるか?」


「無い」


 男は笑った。


「どっちも売ればいい」


 下卑た笑いが広がる。


 レンもリアも。


 まだ気付いていない。


 この依頼そのものが罠であることを。


 そして。


 自分達が既に獲物として数えられていることを。

読んでいただきありがとうございます。


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