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プロローグ 第2話

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。


機兵、遺跡、秘密基地。


好きなものを全部詰め込みました。

 街を出る頃には夕方になっていた。


 レンは背中に荷物を背負い、腕の中に痩せた少年を抱えていた。


 少年は意識がない。


 熱も高い。


 正直、生きているのが不思議なくらいだった。


「買っちまったなぁ……」


 誰に言うでもなく呟く。


 返事はない。


 当然だ。


 腕の中の少年は眠ったままだった。


 街道を外れ、森へ入る。


 普通の人間なら近付かない場所だ。


 魔獣が出る。


 盗賊もいる。


 夜になればさらに危険になる。


 だからこそレンはここを気に入っていた。


「人間より分かりやすいしな」


 魔獣は襲ってくる。


 敵なら敵だと分かる。


 だが人間は違う。


 笑顔で騙す。


 笑顔で売る。


 笑顔で裏切る。


 五年前に嫌というほど学んだ。


 だから森が好きだった。


 しばらく進む。


 やがて巨大な木々に囲まれた開けた場所へ辿り着く。


 そこには一軒の家があった。


 木造。


 二階建て。


 小さな畑付き。


 一見すると普通の家。


 だが。


 家の周囲を薄い光が覆っている。


 結界だった。


「ただいま」


 誰もいない家へ声を掛ける。


 当然返事はない。


「……返事してくれる人欲しいな」


 少し寂しかった。


 家へ入る。


 少年をベッドへ寝かせる。


 額に触れる。


「熱いな」


 棚から薬草を取り出す。


 森で採れた物だ。


 すり潰す。


 煎じる。


 飲ませる。


 少年は苦しそうに咳をした。


「死ぬなよ」


 レンは本気で言った。


 助けた翌日に死なれたら精神的に辛い。


 金も無い。


 薬も減る。


 最悪である。


 数時間後。


 夜になった。


 少年の熱は少し下がった。


 レンは安心して椅子へ座る。


 そして財布を開いた。


「……ゼロか」


 本当にゼロだった。


 銅貨一枚ない。


 明日からどうしよう。


 頭を抱える。


「依頼受けるしかねぇなぁ」


 危険な依頼は嫌いだった。


 だが選んでいられない。


 その時だった。


 コンコン。


 窓を叩く音がする。


「ん?」


 窓を見る。


 小鳥だった。


 レンが餌付けしている鳥だ。


 窓枠に止まり、首を傾げている。


「飯か?」


 小鳥が鳴いた。


 レンは笑う。


「お前の方が俺より金持ってそうだな」


 パン屑を渡す。


 小鳥は満足そうだった。


 少しだけ癒された。


 その頃。


 街では別の話が進んでいた。


 冒険者ギルド。


 受付嬢が困った顔をしている。


「本当に受けるの?」


 栗色の髪の少女へ尋ねた。


 リア。


 若い冒険者だった。


「受けます」


 即答。


 依頼書を握り締める。


 報酬は良い。


 初心者には高すぎるほどだ。


「でもその依頼……」


「大丈夫です」


 リアは笑った。


 そう言うしかなかった。


 金が必要だった。


 宿代。


 食費。


 装備代。


 生きるための金。


 受付嬢は何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。


 依頼書へ判を押す。


 リアは頭を下げた。


 その背中を見送る。


 そして。


 ギルドの隅。


 一人の男がそれを見ていた。


 革鎧。


 冒険者風の格好。


 どこにでもいる男。


 しかし目だけが笑っていない。


「引っ掛かったか」


 男は小さく呟く。


 近くの仲間が笑った。


「若い女は楽でいいな」


「売れるしな」


「今回のは上玉だ」


 下卑た笑い。


 依頼は偽物だった。


 森の遺跡調査。


 そんなものは存在しない。


 目的は一つ。


 誘拐。


 そして奴隷商への売却。


 男達の背後。


 ギルド広場には機兵が並んでいた。


 街の英雄。


 有名冒険者。


 尊敬される男。


 その機兵の所有者こそが。


 この詐欺集団の首領だった。


「準備しろ」


 男が言う。


「明日には商品になる」


 誰も止めない。


 誰も気付かない。


 それがこの街の日常だった。


 一方その頃。


 森の家。


 レンはベッドへ倒れ込んだ。


「明日こそ仕事だ……」


 呟く。


 そして。


 数分後には眠っていた。


 もちろん知らない。


 今日ギルドで見かけた少女が。


 明日には奴隷として売られる予定になっていることを。

読んでいただきありがとうございます。


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