プロローグ 第2話
ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。
機兵、遺跡、秘密基地。
好きなものを全部詰め込みました。
街を出る頃には夕方になっていた。
レンは背中に荷物を背負い、腕の中に痩せた少年を抱えていた。
少年は意識がない。
熱も高い。
正直、生きているのが不思議なくらいだった。
「買っちまったなぁ……」
誰に言うでもなく呟く。
返事はない。
当然だ。
腕の中の少年は眠ったままだった。
◇
街道を外れ、森へ入る。
普通の人間なら近付かない場所だ。
魔獣が出る。
盗賊もいる。
夜になればさらに危険になる。
だからこそレンはここを気に入っていた。
「人間より分かりやすいしな」
魔獣は襲ってくる。
敵なら敵だと分かる。
だが人間は違う。
笑顔で騙す。
笑顔で売る。
笑顔で裏切る。
五年前に嫌というほど学んだ。
だから森が好きだった。
◇
しばらく進む。
やがて巨大な木々に囲まれた開けた場所へ辿り着く。
そこには一軒の家があった。
木造。
二階建て。
小さな畑付き。
一見すると普通の家。
だが。
家の周囲を薄い光が覆っている。
結界だった。
「ただいま」
誰もいない家へ声を掛ける。
当然返事はない。
「……返事してくれる人欲しいな」
少し寂しかった。
家へ入る。
少年をベッドへ寝かせる。
額に触れる。
「熱いな」
棚から薬草を取り出す。
森で採れた物だ。
すり潰す。
煎じる。
飲ませる。
少年は苦しそうに咳をした。
「死ぬなよ」
レンは本気で言った。
助けた翌日に死なれたら精神的に辛い。
金も無い。
薬も減る。
最悪である。
◇
数時間後。
夜になった。
少年の熱は少し下がった。
レンは安心して椅子へ座る。
そして財布を開いた。
「……ゼロか」
本当にゼロだった。
銅貨一枚ない。
明日からどうしよう。
頭を抱える。
「依頼受けるしかねぇなぁ」
危険な依頼は嫌いだった。
だが選んでいられない。
その時だった。
コンコン。
窓を叩く音がする。
「ん?」
窓を見る。
小鳥だった。
レンが餌付けしている鳥だ。
窓枠に止まり、首を傾げている。
「飯か?」
小鳥が鳴いた。
レンは笑う。
「お前の方が俺より金持ってそうだな」
パン屑を渡す。
小鳥は満足そうだった。
少しだけ癒された。
◇
その頃。
街では別の話が進んでいた。
冒険者ギルド。
受付嬢が困った顔をしている。
「本当に受けるの?」
栗色の髪の少女へ尋ねた。
リア。
若い冒険者だった。
「受けます」
即答。
依頼書を握り締める。
報酬は良い。
初心者には高すぎるほどだ。
「でもその依頼……」
「大丈夫です」
リアは笑った。
そう言うしかなかった。
金が必要だった。
宿代。
食費。
装備代。
生きるための金。
受付嬢は何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。
依頼書へ判を押す。
リアは頭を下げた。
その背中を見送る。
そして。
ギルドの隅。
一人の男がそれを見ていた。
革鎧。
冒険者風の格好。
どこにでもいる男。
しかし目だけが笑っていない。
「引っ掛かったか」
男は小さく呟く。
近くの仲間が笑った。
「若い女は楽でいいな」
「売れるしな」
「今回のは上玉だ」
下卑た笑い。
依頼は偽物だった。
森の遺跡調査。
そんなものは存在しない。
目的は一つ。
誘拐。
そして奴隷商への売却。
男達の背後。
ギルド広場には機兵が並んでいた。
街の英雄。
有名冒険者。
尊敬される男。
その機兵の所有者こそが。
この詐欺集団の首領だった。
「準備しろ」
男が言う。
「明日には商品になる」
誰も止めない。
誰も気付かない。
それがこの街の日常だった。
◇
一方その頃。
森の家。
レンはベッドへ倒れ込んだ。
「明日こそ仕事だ……」
呟く。
そして。
数分後には眠っていた。
もちろん知らない。
今日ギルドで見かけた少女が。
明日には奴隷として売られる予定になっていることを。
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