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第八話 聖女の休日

ロボオタのおっさんが、ゲームによく似た異世界で好き勝手やる話です。

機兵、遺跡、秘密基地。

好きなものを全部詰め込みました。

 神殿本部。


 執務机の引き出しを開いたアリシアは、小さく微笑んだ。


 中に入っていたのは薬草を押し花にした栞だった。


 手作りだ。


 以前、リアから貰ったものだった。


『また遊びに来てくださいね』


 別れ際の言葉を思い出す。


 寒波の後。


 孤児院の視察で出会った少女。


 立場も境遇も違う。


 それなのに不思議と話しやすかった。


 友達。


 そう呼べる相手は多くない。


 聖女として扱われることはあっても、一人の少女として接してくれる人間は少ないのだ。


「よし」


 アリシアは立ち上がった。


「今日は遊びに行きましょう」



 翌日。


 南の森入口。


 アリシアは神殿騎士二名と神官一名を伴っていた。


 私的な訪問だ。


 本来ならもっと大人数になる。


 だがアリシアが断固として拒否した。


 友人宅へ遊びに行くだけで大行列を作るのは違うと思ったのだ。


 しかし。


 護衛達の表情は非常に硬い。


「本当にこの先なのですか?」


 神殿騎士の一人が尋ねた。


「はい」


 アリシアは頷く。


「リアさんのお家です」


「そうですか……」


 騎士の顔は全く安心していない。


 むしろ悪化していた。


「何か問題がありますか?」


 アリシアが首を傾げる。


 神官が苦笑した。


「アリシア様」


「はい」


「ここは上級魔獣の生息域です」


「あ」


 言われて思い出した。


 そうだった。


 森の家という印象が強くて忘れていた。


 ここは普通の森ではない。


「リアさん達、よく住んでいますよね」


「そこが一番怖いんですよ」


 神官が真顔で言った。



 森へ入る。


 木々が頭上を覆う。


 人の気配はない。


 静かだった。


 静か過ぎた。



 その時。


「止まってください」


 騎士が声を上げた。


 全員が足を止める。


 森の奥。


 巨大な影が見えた。


 熊に似ている。


 だが大きさが違う。


 三メートル以上はある。


「いましたね……」


 アリシアが小さく呟く。


「いましたね……じゃありません」


 騎士が青い顔で言った。


「あれは上級魔獣です」


「そうなんですか」


「そうなんです」


 武器が抜かれる。


 緊張が走る。


 だが。


 魔獣は近付いて来なかった。


 何かに阻まれるように立ち止まる。


 唸る。


 しかし前へ出られない。


 やがて森の奥へ去っていった。


 沈黙。


「何故、見逃されたのでしょう・・」



「わかりません・・・」


 神官が困惑している。


 さらに進む。


 今度は空だった。


 飛竜型の魔獣が旋回している。


「うわぁ……」


 アリシアが思わず声を漏らした。


 飛竜もまた。


 一定距離から近付こうとしない。



 まるで。


 見えない壁が存在するように。


「これは・・結界です」


 神官が断言した。



「間違いありません」


「凄いですね・・魔物が寄ってこないなんて・・」


 アリシアは術式に詳しくない。


 神官と騎士が顔を見合わせた。


「凄いどころではありません」


「少なくとも私は見たことがありません」


「私もです」


 神殿本部所属の人間が揃ってそう言った。


 アリシアも少し不安になる。


(リアさん、本当にどこに住んでいるんですか……?)



 やがて。


 木々が途切れた。


 全員が足を止める。


「え?」


 最初に声を漏らしたのはアリシアだった。


 畑。


 薬草畑。


 家畜小屋。


 倉庫。


 工房。


 住居。


 水路。


 森の中とは思えない光景が広がっている。


「リアさん」


 アリシアは呆然と呟く。


「家があるとは聞いていましたけど……」


「これは家なんでしょうか……?」


 神殿騎士が頷いた。


「私も聞きたいです」


 神官も固まっている。


「開拓村ではありません」


「砦でもありません」


「ですが」


「敷地全体が集落の様な整い方で」


 視線があちこちへ向く。


 農地。


 備蓄。


 生産設備。


 防衛設備。


 薬草栽培。


 全てが揃っていた。


「これが……」


 神官が呟く。


「アリシア様が支援を決められた子たちの住む場所・・」


 寒波後。


 孤児院支援。


 物資支援。


 神殿協力。



 全てアリシアの決裁だった。


「正直」


 神官が続ける。


「過剰だと思っていました」


「ですが」


 騎士が言葉を継ぐ。


「今なら分かります」


「これだけの生活技術を持つ地に住む主達なら。」


「奇跡を起こした神の子と言われても不思議はない。」


「つながりは必要と思います。」


 辺りに広がる光景をみてアリシアの興味も大きくなる。


 アリシアは少し嬉しくなった。



 その時だった。


『来客を確認』


 どこからともなく声が響く。


 神殿騎士達が警戒して一斉に武器を抜いた。


「誰だ!」


『敵意を確認できません』


「しゃべった!?」


 神官まで驚いている。


 アリシアは苦笑した。


「ノアさんです」


「ノアさん?」


 余計に分からない。


『アリシア来訪を確認』


『歓迎します』


 その直後。



「アリシアさん!」


 家の方からリアが飛び出してきた。


 満面の笑みだった。


 その姿を見た瞬間。


 アリシアは心から安心した。


 よかった。


 本当にいた。


 ここまで来る途中で見たものがあまりにも現実離れしていたのだ。


「こんにちは」


「来てくれたんですね!」


「約束しましたから」


 リアが嬉しそうに笑う。


 その後ろから。


 一人の男が現れた。


 作業着姿。


 土の付いた手。


 どこにでもいそうな男。



 その後ろから現れた少女を見て、レンは少しだけ目を見開いた。


 栗色の髪。


 白い神官服。


 柔らかな笑顔。


 見覚えがあった。


 アリシアだった。


 ゲーム時代の推し。


 何度もイベントを追いかけた聖女。


 その本人が、


 当たり前のようにリアの隣で笑っている。


 レンは数秒だけ言葉を失った。


(……すげぇな、リア)



 神殿騎士達は固まった。


(この人が?)


 結界の主。


 森の家の管理者。


 妖精王事件の関係者。


 想像していた人物像と違い過ぎた。


「どうぞ」


 男はそう言って椅子を用意した。


 神殿騎士達は。


 目の前の男と。


 背後に広がる異常な拠点を。


 何度も見比べることになった。


 そして全員が同じことを考えていた。


(本当にこの人なのか?召使とか?)


 と。


【機体図鑑 No.002】


 セラフィム(Seraphim)


■基本データ

 分類      魔核機

 ランク     SS

 フレーム    タイプ・アークメイジ

 全高      約 5.0m

 カラー     蒼銀×紫紺

 役割・能力   遠距離制圧・広域殲滅

 操縦者     ミスト


★機体概要

 天使を思わせる外装と、多数の魔導浮遊ユニットを備えた

 高出力魔導戦特化型魔核機。


 圧倒的な魔力出力を活かした広範囲攻撃を得意とし、

 戦場全体を支配するほどの火力を誇る。


 多数の魔法陣と浮遊砲台を同時制御することで、

 敵集団を一方的に殲滅することが可能。


 転移プレイヤーの一人、大魔導士ミストの愛機。


読んでいただきありがとうございます。

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